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失格、戦略ミスを経て、最終戦決着へ。極限の3週間を率いたステラ代表のアプローチ【F1チーム代表の現場事情:マクラーレン】
2025年12月16日
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、ラスベガスGP、カタールGP、アブダビGPでのマクラーレンF1チーム代表アンドレア・ステラに焦点を当てた。
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アンドレア・ステラにとって、シーズン最後の3回のレースウイークエンドは極めて大きなストレスを伴うものだった。マクラーレンは、今年、非常に印象的なシーズンを送りながら、ドライバーズタイトルを逃しかねない状況に追い込まれていたからである。
サンパウロGPはランド・ノリスにとって素晴らしい週末となり、スプリントと決勝の両方を制した。また、オスカー・ピアストリにも進歩の兆しが見られた。そのため、ラスベガス入りに際しては、楽観的な材料がそろっていた。
しかし、物事は思惑どおりには進まなかった。プラクティスと予選で雨に見舞われ、その厄介な天候により、各チームは自分たちの戦力を正確に把握するのに苦労した。マクラーレンはラスベガスで圧倒的な競争力を発揮できると確信していたわけではなかったが、予選最後のアタックでノリスがポールポジションを獲得したことで、彼が初の世界タイトルに王手をかける可能性が現実味を帯びた。
予選後、ステラはノリスの成長を強調し、シーズン前半の不安定さによってピアストリに後れを取っていた状況から、懸命な努力で改善を見いだしてきた点を称賛した。メキシコシティとブラジルでの2戦で、タイトル争いにおけるマックス・フェルスタッペンからのプレッシャーが和らいだように見え、ノリスが主導権を握り、マクラーレンはほぼ安堵できる立場にあった。
しかし完全にリラックスできる状況ではなかった。

ラスベガスGP決勝を、ノリスが2位、ピアストリが4位で終えた後、ステラは再びメディア対応を行う予定だったが、彼は直前になって姿を見せなかった。新たな対応時間も示されず、ステラの姿はどこにもなかった。そればかりか他の幹部メンバーも姿を現さず、何らかの問題が発生していることは明白だった。
そうして2台失格という事態が発表された。それはノリスのタイトル獲得の望みに大きな打撃を与えた。フェルスタッペンに対して42点、ピアストリに対して30点あったリードは、一気に両者に対して24点差へと縮まった。カタールで大きくポイントを失わなければ王者になれる予定だったが、突然、2人のライバルが1勝分以内のギャップに迫る状況となったのである。
ステラはチーム代表就任以来、初めて姿を隠した。チームは声明を発表したものの、ステラが直接説明に立つことはなく、カタールを前にプレッシャーが大きく高まっていることがうかがえた。

カタール木曜日のドライバーのメディア対応に先立って、ステラはマクラーレンが公開できるQ&A形式のコメントに応じることに同意した。自ら質疑応答に立つことなく、統制の取れた説明を行うためだ。
ピアストリの力強い週末は、ノリスのタイトル獲得のチャンスを奪いかねないものに見えたが、レース当日まではマクラーレンは良い対応をしていた。しかし決勝では、最初のセーフティカー導入時にミスが生じた。他の全ドライバーがピットインする中、マクラーレンはステイアウトを選択したのである。これは重大な判断ミスであり、今回はステラは身を隠すことはできないと悟った。
マクラーレンがミスを犯したカタールで、フェルスタッペンは再び勝利して最終戦を前に差をさらに縮めた。ステラはドライバーを除くチーム全員に責任を共有させた。しかしその後、ステラは巧みに物語を変えた。
ミスが致命的な影響をおよぼしていることや、プレッシャーがチームにのしかかっていることを認めるのではなく、両ドライバーとフェルスタッペンが関わる最終戦決着は、シーズン開幕時に誰もが望んでいたシナリオであり、それ以上に、それこそがF1を愛する者がこの世界で働きたいと願う状況なのだと強調したのだ。
このアプローチにより、チームの集中が高められたようで、マクラーレンはアブダビで完璧な週末を過ごすことに成功した。フェルスタッペンは速すぎたため、2位と3位がマクラーレンのふたりにとって最善の結果であり、彼らはその結果を確実に手にした。さらに、フェルスタッペンが後続を抑え込む展開を崩すことを考慮し、ピアストリに異なる戦略を試させ、彼がチャンピオンになるわずかな望みも残した。

マクラーレンにとってこの3週間はジェットコースターのように過酷で、極度の緊張を伴うものだったが、ステラは最も重要な局面でチームが見せた対応を誇りに思っていた。そして、ドライバーに平等な機会を与え、不要な非難を行わないというマクラーレンの方針が、両タイトル獲得という結果につながったことに満足感を示した。
決して容易な道のりではなかったが、最終的な結果を振り返れば、マクラーレンにとってほぼ完璧と言えるシーズンであり、その先頭に立ってチームを率いたステラは大きな称賛に値する。

(Text : Chris Medland)
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| 12/5(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
| フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
| 12/6(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
| 予選 | 結果 / レポート | |
| 12/7(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
| 1位 | ランド・ノリス | 423 |
| 2位 | マックス・フェルスタッペン | 421 |
| 3位 | オスカー・ピアストリ | 410 |
| 4位 | ジョージ・ラッセル | 319 |
| 5位 | シャルル・ルクレール | 242 |
| 6位 | ルイス・ハミルトン | 156 |
| 7位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 150 |
| 8位 | アレクサンダー・アルボン | 73 |
| 9位 | カルロス・サインツ | 64 |
| 10位 | フェルナンド・アロンソ | 56 |
| 1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 833 |
| 2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 469 |
| 3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 451 |
| 4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 398 |
| 5位 | アトラシアン・ウイリアムズ・レーシング | 137 |
| 6位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 92 |
| 7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 89 |
| 8位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 79 |
| 9位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 70 |
| 10位 | BWTアルピーヌF1チーム | 22 |
| 第20戦 | メキシコシティGP | 10/26 |
| 第21戦 | サンパウロGP | 11/9 |
| 第22戦 | ラスベガスGP | 11/22 |
| 第23戦 | カタールGP | 11/30 |
| 第24戦 | アブダビGP | 12/7 |


