フェルスタッペンとの勝負に弱すぎるノリス。対ピアストリでは明るい兆し【独自選出:F1第6戦ベスト5ドライバー】
2025年5月8日
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第6戦マイアミGPの戦いを振り返った。
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■ミスを挽回、3連勝を挙げたピアストリ
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):スプリント予選2番手/スプリント2位/予選4番手/決勝1位
チャンピオンシップリーダーであるピアストリは、予選では通常ほどの高いパフォーマンスを見せられなかったが、レースでそれを十分に補った。
スプリントレースのスタートで新人のアンドレア・キミ・アントネッリに対して容赦のない走りを見せたピアストリは、タイヤのデグラデーションが大きかったにもかかわらず、ランド・ノリスとの差をコントロールしているように見えた。スリックタイヤに交換するためにピットインした時点では、勝利は当然彼のものになると思われた。
しかし、その次の周にセーフティカーが出たことが、ノリスに勝利をもたらした。もちろん、ピアストリにとって大きな不満が残る展開だった。
メインレースの予選は4番手に終わったことで、ピアストリはレース当日に自分自身をやや難しい状況に追い込んだ。しかしノリスがスタート直後にフェルスタッペンと絡んでつまずき、アントネッリは賢明にもはるかに速いマシンとの争いを避けてタイヤを温存することを選択したため、ピアストリはすぐに2位まで順位を上げた。
非常に攻撃的な走りをするフェルスタッペンの背後で辛抱強く走行した結果、ピアストリは、フェルスタッペンにミスをさせることに成功、トップに立った後は、後続を引き離して、3連勝目を達成した。

■ノリス、敗れるも光明見出す
ランド・ノリス(マクラーレン):スプリント予選3番手/スプリント1位/予選2番手/決勝2位
確かに、ノリスは両方のレースでピアストリのペースを上回ることはできなかったが、少なくとも予選では十分に前進し、ポールポジション争いの有力候補となることができた。
スプリント予選では3番手で、驚異の新人アントネッリに0.1秒差で敗れた。ノリスは、土曜日のポールポジション争いではフェルスタッペンにおよばなかったものの、ピアストリには勝利し、その日最大の目標を達成した。
しかしノリスは、フェルスタッペンとのホイール・トゥ・ホイールのバトルにおいては依然としてあまりに未熟であり、2度も勝負に敗れた。そのため、最終的にオーバーテイクが成功した時にはチームメイトとのギャップが拡大しすぎており、前日とは異なり、ピアストリの前に出るための幸運なセーフティカー出動もなかった。
それでもなお、日曜日のノリスのレースペースは非常に印象的であり、とりわけハードタイヤでの走りは際立っていた。したがって、たとえマイアミで敗北したとしても、ノリスは、近いうちにチームメイトの効率的な走りに対抗する術を見つけられるという十分な根拠を示したように思える。

■F1史上最年少の記録を作ったアントネッリ
アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス):スプリント予選1番手/スプリント7位/予選3番手/決勝6位
アントネッリのマイアミにおける予選パフォーマンスは傑出していた。スプリント予選で、F1史上最年少の“ポールシッター”になるなど、アントネッリは、高い評価を受けるジョージ・ラッセルよりも週末を通して速かった。グランプリ予選でもポールに近付き、ポールポジションタイムとの差は、わずか0.067秒だった。
スプリントのスタートでは、ピアストリの力強い動きに押されて順位を落とした。ピットストップの際にレッドブルがミスを犯して、ピットレーンでフェルスタッペンをアントネッリの前に送り出した。そのためアントネッリは自分のピットボックスに入ることを諦めて翌周入り直し、事実上、ドライブスルー・ペナルティを受けたに等しいダメージを被ることに。そのために表彰台争いから脱落したアントネッリは、レース後に複数のドライバーたちにペナルティが発生したことで、7位に繰り上げられた。本来ならもっと良い結果を出せたのは間違いない。
決勝では、ミディアムタイヤでも依然として良いペースを示した。フェルスタッペンとの差を縮めつつあり、アンダーカットを試みたが、遅いピットストップによってその効果は失われた。さらに、他のドライバーたちがバーチャル・セーフティカー下でピットインしたことにより、アントネッリは、チームメイトの後方に下がり、冷えたタイヤで走行中に、アレクサンダー・アルボンに前に出られてしまった。
アントネッリはグランプリを6位でフィニッシュ。しかしこの順位はアントネッリがマイアミで示した速さを正しく反映するものではない。今回のアントネッリは、彼が今後何をもたらすのかを示し、ライバルたちを警戒させたに違いない。

■速さと賢さを兼ね備えたアルボン
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):スプリント予選8番手/スプリント11位/予選7番手/決勝5位
アルボンはマイアミで驚異的な速さとレース巧者ぶりを示した。また、マシンの外での親しみやすくリラックスした態度とは裏腹に、いったんヘルメットをかぶれば非常に競争心の強いドライバーであることも証明した。
スプリントではルイス・ハミルトンを追走した後、アルボンはハミルトンより1周後にピットインし、前を走っていたジョージ・ラッセルの前に出ることに成功、5位でフィニッシュした。ところがアルボンは、セーフティカー出動中の違反によるペナルティでポイント圏外に落ちた。
日曜日のレースでは、アルボンは、コースオフした後に復帰してきたノリスを避けたサインツに接触され、リスタートの際にはミスを犯し、チームメイトの後ろに下がった。しかし、(サインツが言うには)アルボンはチームオーダーを無視してサインツを追い越し、すぐにギャップを築き上げた。それにより、ウイリアムズのなかで、自分の方が速いということを証明したことになる。
アルボンは、一時的にではあるが、フェルスタッペンに近付く場面すらあった。最終的に、1台のメルセデスと2台のフェラーリを打ち負かして5位でフィニッシュ。サインツへの追い越しについては、「サインツの後ろにとどまれという指示は、すでに追い越しをかけている時に受けた」と主張した。速く、賢いドライバーだ。

■不調な週末でも最大限の結果を出すラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):スプリント予選5番手/スプリント4位/予選5番手/決勝3位
自分の調子が万全ではない週末にダメージを最小限に抑えることは、チャンピオン争いを続けるために必要なことだ。マイアミでのラッセルは、まさにそれをやってのけた。
両方の予選セッションで、センセーショナルなアントネッリの陰に隠れる形となったが、ラッセルは両レースで若きチームメイトの前でフィニッシュし、しっかりとポイントを獲得した。
スプリントではインターミディエイトタイヤで安定した走りを見せたが、路面が乾きつつあるなかで、チームの判断で1周余計に走ったことで後退した。チームは前を走っていたアントネッリを優先的にピットに入れたが、ピットレーンでのフェルスタッペンとの接触で、メルセデスのピットは大混乱に陥った。その結果、ラッセルは4番手から6番手に落ちたものの、フェルスタッペンとアルボンのペナルティにより、4位を取り戻した。
日曜決勝ファーストスティントでは、終始アントネッリの後ろを走ったラッセルだが、自分が有利な状況にあることを理解していた。彼は上位勢では唯一ハードタイヤでスタートしたのだ。その後のバーチャル・セーフティカーが彼に有利に働き、アントネッリとフェルスタッペンの前に出ることができた。
最終スティントでは、タイヤを労わりつつ一貫した走りを維持するという教科書的なドライビングをして、ラッセルは再び表彰台を獲得するに至った。


(Text : Luis Vasconcelos)
関連ニュース

1位 | オスカー・ピアストリ | 131 |
2位 | ランド・ノリス | 115 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 99 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 93 |
5位 | シャルル・ルクレール | 53 |
6位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 48 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 41 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 30 |
9位 | エステバン・オコン | 14 |
10位 | ランス・ストロール | 14 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 246 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 141 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 105 |
4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 94 |
5位 | ウイリアムズ・レーシング | 37 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 20 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 14 |
8位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 8 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 7 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 6 |

