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こだわりの桜デザインで臨んだ鈴鹿。ベアマン連続入賞、平川加入への期待【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】

2025年4月11日

 2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。日本GPを迎えた小松代表は、鈴鹿に桜のスペシャルデザインをあしらったVF-25を持ち込んだ。サーキットでも一際目を引いたこのクルマは、見事予選Q3進出と入賞を果たした。


 さらにハースは日本GP終了後、平川亮をリザーブドライバーとして起用することを発表した。昨年のタイヤテストを経て小松代表は平川のパフォーマンスを非常に高く評価しており、まさにそれが契約の決め手になったという。


 日本GP前の表敬訪問、スペシャルカラーリングと新人ドライバーの貴重なポイント獲得、そして平川との契約という話題盛りだくさんの日本GPを小松代表が振り返ります。

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■2025年F1第3戦日本GP
No.31 エステバン・オコン 予選18番手/決勝18位
No.87 オリバー・ベアマン 予選10番手/決勝10位


 日本GPを前に、僕とエステバンは愛知県にあるトヨタの『元町工場』と『テクニカルセンター下山』を訪問しました。ご存知のようにハースとトヨタは大きな規模で長期的なパートナーシップを結んでいて、昨年10月の提携発表の際にご挨拶に下山に少し訪れただけだったので、他のトヨタのみなさまにお会いできる機会を探していたんです。今年は提携後の初めての日本GPで、いいタイミングだったので自然と訪問できる流れになりました。


 この日、まずは豊田市にある元町工場に行きました。トヨタの一番最初のおおもとになった工場で、今はGRヤリスなどを製造しているところです。製造工程も見せていただきとても面白かったです。それから下山に行って、社員の方々とのトークセッションをした後に、ニュルブルクリンクを参考に作られたテストコースをGRヤリスとGRスープラで走りました。最後にダートコースでGRヤリスに乗って人生初めてのドリフト走行も経験しました。

ハースF1小松礼雄代表、オコン、トヨタ/GR下山テクニカルセンター訪問
GRスープラA90ファイナルエディションが気になって仕方ないオコン。中嶋一貴TGR-E副会長にいろいろ質問中
ハースF1小松礼雄代表、オコン、トヨタ/GR下山テクニカルセンター訪問
ハースのウエアでサイン会に臨んだトヨタ社員。嬉しいことに、トヨタの中でもレース熱はかなり高くなっているようだ
ハースF1小松礼雄代表、オコン、トヨタ/GR下山テクニカルセンター訪問
人生初のドリフトで、走るたびにみるみる上達していった小松代表のドライビング。本人はもちろん大興奮。

 元町工場でも下山でも、みなさんにとても温かく迎えていただきました。みなさんがどれだけこの提携を喜んでくれているか、そしてどれだけ期待されているかが感じられました。このように迎えていただいて連戦の疲れも吹っ飛びましたし、こういった人たちと一緒にやれるというのは本当に幸せなことだなという思いでいっぱいです。すごい元気をもらいました。


 こうして迎えた日本GPでは、(トヨタ自動車の会長の豊田)章男さんも来ることになっていたのでピットウォールに席を用意していました。安全面などの理由で、本来ピットウォールにチームメンバー以外の人は座れないので、FOM(フォーミュラワン・マネージメント)に特別に許可を取って僕の隣に席を用意して、『A.TOYODA』と名前も入れたんです。しかし今回は残念ながら来られなくなってしまったので、いつかサーキットに来てくださることを願っています。

こだわりの桜デザインで臨んだ鈴鹿。ベアマン連続入賞、平川加入への期待【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】
ハースのピットウォールにはトヨタ自動車の豊田章男会長の席が用意されており、『A.TOYODA』と名前も入っていた

 それから日本GP後の4月7日には、平川亮選手と正式にリザーブドライバーとして契約したことを発表しました。平川選手とアルピーヌとの契約は日本GPで終了しており、7日付けで正式にハースのドライバーとなりました。


 平川選手と契約した理由は、シンプルに彼のパフォーマンスを評価したからです。速さについては昨年のアブダビでのタイヤテストでわかっています。コミュニケーション能力も高くて、クルマに乗って感じ取ったことをきちんと伝えることもできていました。テストでは、速さ、安定感、予選想定のアタック、ロングランのすべてでまったく問題なかったです。昨年のコラムでも書いた通り、唯一未知数なのは、本当にプレッシャーのかかる状況でパフォーマンスを発揮できるかということです。


 僕は昨年末の時点で彼をハースのリザーブドライバーにするべきだと考えていました。トヨタとの提携があるので、僕たちは平川選手にアクセスできるという利点はありましたが、彼がトヨタのドライバーであることが契約の理由ではありません。リザーブドライバー就任はあくまで彼のドライバーとしての能力を評価した結果です。2025年はFP1にルーキードライバーを4回乗せることが規則で義務づけられているので、発表したように僕たちはその4回すべてで平川選手を起用します。また今後はシミュレーターやTPC(Testing of Previous Cars:旧型車を使うテスト)でもチームに貢献してもらう予定です。

平川亮(アルピーヌ)
2025年F1第3戦日本GP 平川亮(アルピーヌ)
平川亮(ハース リザーブドライバー)
2025年F1第4戦バーレーンGP木曜日 平川亮(ハース リザーブドライバー)

■投入した新パーツが効果を発揮

 さて前回のコラムに書いたように、日本GPには新しいパーツを投入しました。投入前に様々な工程を省いたのでリスクもありましたけど、初日のFP2が終了した時点で効果があることが明確になりました。


 オリー(オリバー・ベアマンの愛称です)のフロアに新しいパーツを入れて、エステバンの方は開幕戦仕様で走らせて、段階的にセッティングを変えて2台を比較したところ、エステバンの方にはメルボルンの時と同じような症状が出たので、オリーのクルマでセッティング進めていきました。FP2終了時点で基本的に自分たちの空力のパフォーマンスを発揮できるようなセッティングができたと思います。エステバンのクルマでそれができなかったということは、新しいパーツが性能を発揮したということです。

エステバン・オコン(ハース)
2025年F1第3戦日本GP エステバン・オコン(ハース)

 タイムが出ていない段階でもオリーは「感触がいい」と言ってくれたのですが、じゃあどうしてタイムが出ないのかということになります。自分たちのやりたかったセッティングができたにしては、競争力がなかったんです。おそらくタイヤの使い方に原因があると考え、FP3で改良していき、赤旗中断があったので確証は持てなかったものの、一歩前進した感触はありました。


 オリーは予選Q1を12番手で通過し、Q2ではユーズドタイヤでの1回目のアタックでもすごくいいタイムだったので、僕もオリーもここでQ3に進めるという自信を持てましたね。Q2最後の新タイヤでのアタックではきっちりとタイヤの性能を発揮し、素晴らしいタイムを出してくれました。


 Q3ではスプーンの出口とシケインでミスをして0.25秒ほどのタイムロスになり、Q2のベストタイムを上回れず10番手に終わりましたが、ミスがなければ8番手あたりを狙えたのではないでしょうか。昨年のスーパーフォーミュラのテスト経験もきっと役に立ったはずです。

オリバー・ベアマン(ハース)
2025年F1第3戦日本GP オリバー・ベアマン(ハース)

 レースに向けての唯一の懸念は、ハードタイヤがどれくらい持つのか、でした。オリーは上位からスタートなので、セオリー通りミディアムタイヤ〜ハードタイヤの1ストップ戦略とほぼ決まった状態でスタート。最終的にピットインのタイミングを判断したのは後ろを走っていたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)とのギャップです。というのも、うちがピットストップを行う前にマクラーレンの2台が先にピットに入り、その後コース上で彼らに抜かれた際にアロンソとのギャップが3秒から1.8秒に縮まりました。こうなるとピットストップ後にアロンソに逆転される可能性があったので、このタイミングでのタイヤ交換を決めました。


 もちろんスタート前には雨のことも気にしていて、クルマのダウンフォースレベルも完全なドライ寄りの設定にはしませんでした。絶対に雨が降らないとわかっていれば、もう少し直線で速くなるようにしていたと思います。


 鈴鹿ではコース特性上厳しい戦いが想定されましたが、そのなかでも新しいパーツを持ち込めたこと、そしてその性能を確認できたこと、また予選、レースともにオリーの1台だけですがチームとして力を出し切れたことはとても大きいです。たった1ポイントですが、とても大きな1ポイントだと思っています。

■自ら進めた大胆でダイナミックなハースの“姿勢”も表した桜デザイン

 日本GPに向けて桜をあしらったスペシャルカラーリングを用意したのも、トヨタとの提携が背景にあります。先に書いたように僕たちは大型提携をしているので、ハースはアメリカのチームではありますが、鈴鹿で何かをするには十分な理由です。


 もともとスペシャルカラーリングをやろうと言い出したのは僕で、1月に話し合いを始めて、どれくらいの規模で何をするのか、予算はどうするのかなどを決めて、ハースのクリエイティブディレクターの人と一緒にデザインを決めていきました。桜のデザインにしようと決めた後、最初にクリエイティブディレクターが出してきたアイデアは、なんと赤い桜のデザインだったんです。VF-25のカラー(黒、白、赤)に合わせたものだったようですが、桜は本来もっとピンクか白なので、昨年の鈴鹿で撮影された桜の写真を見せて僕のイメージを伝えました。クルマのボディワークにデザインするのであまり細かくしすぎるときれいに見えないので、ある程度大胆にはっきりとしたラインで描き、枝も太くするなど、遠くから見てもわかるようにしました。


 あとは日本のサブカルチャーも盛り込みたかったんです。最近はひらがなもカタカナもポピュラーなものになっていますし、サイドポッドの左側にカタカナで『ハース』と入れました。それからクルマのカーナンバーも筆のフォントにしました(漢数字にしようかとも思ったのですが、レギュレーションに沿いませんし、日本人以外は読めないのでやめました……)。

 サイドポッドの『HAAS』というチーム名をピンク色にしたのはクリエイティブディレクターのアイデアです。他のチームだとチーム名の色を変えることはあまりしませんが、これも思い切ってやってよかったです。デザインを決めるプロセスも楽しかったですし、僕としては会心の出来です。クリエイティブディレクターからも「ここまでインパクトのあることをやったのは初めてだったから、やらせてくれてありがとう」と言われたくらいです。


 チーム内でもとても好評でしたし、こういうスペシャルカラーリングにあまり関心のないチームオーナーのジーン・ハースも評判がよかったことを喜んでいました。僕はこのような機会を積極的に使って、ハースF1チームとはどんなチームなのかをどんどん出していきたいと思っています。うちのチームは他のチームといろいろな面で違ったやり方をしていて、たったひとりのプライベートオーナーが持っている唯一のチームです。ですから、ある意味、大企業的なことに縛られないチームなんです。恐れることなく大胆に動けます。そんな大胆さ、力強さ、ダイナミックさというハースの姿勢をいろんな機会に表現したいんです。開幕前の発表会『F1 75』のプレゼンテーションでも媒体はまったく違いますが、同じメッセージを出したつもりです。このようなことを続けていき、チームの色や、もっと言ってしまえば哲学を伝えたい。そうしたことで独自のファン層の開拓や、また同じ考え方を持った方々とパートナーとなれる可能性も出てくると思います。これからも何か記念や節目があればやるつもりです。



(Ayao Komatsu)


レース

4/18(金) フリー走行1回目 結果 / レポート
フリー走行2回目 26:00〜27:00
4/19(土) フリー走行3回目 22:30〜23:30
予選 26:00〜
4/20(日) 決勝 26:00〜


ドライバーズランキング

※バーレーンGP終了時点
1位ランド・ノリス77
2位オスカー・ピアストリ74
3位マックス・フェルスタッペン69
4位ジョージ・ラッセル63
5位シャルル・ルクレール32
6位アンドレア・キミ・アントネッリ30
7位ルイス・ハミルトン25
8位アレクサンダー・アルボン18
9位エステバン・オコン14
10位ランス・ストロール10

チームランキング

※バーレーンGP終了時点
1位マクラーレン・フォーミュラ1チーム151
2位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム93
3位オラクル・レッドブル・レーシング71
4位スクーデリア・フェラーリHP57
5位マネーグラム・ハースF1チーム20
6位ウイリアムズ・レーシング19
7位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム10
8位ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム7
9位BWTアルピーヌF1チーム6
10位ステークF1チーム・キック・ザウバー6

レースカレンダー

2025年F1カレンダー
第5戦サウジアラビアGP 4/20
第6戦マイアミGP 5/4
第7戦エミリア・ロマーニャGP 5/18
第8戦モナコGP 5/25
第9戦スペインGP 6/1
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