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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第8回後編】難コンディションの予選でミックが課題をクリア「これを自信にしてほしい」
2022年6月30日
2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。第9戦は、3年ぶりの開催となるカナダGP。土曜日は大雨に見舞われたモントリオールだが、ミック・シューマッハーが課題としていた予選で活躍を見せた。雨の降る難しい状況下で、安定してタイムを更新し自己ベストとなる6番グリッドを獲得。決勝では残念ながらトラブルによりリタイアに終わったが、課題をひとつクリアしたことについて小松エンジニアは「自信を取り戻すのにいい週末になった」と語る。
コラム第8回は、前編・後編の2本立てでお届け。後編となる今回は、カナダGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。
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2022年F1第9戦カナダGP
#47 ミック・シューマッハー 予選6番手/決勝DNF
#20 ケビン・マグヌッセン 予選5番手/決勝17位
パンデミックがあったせいで、カナダGPは3年ぶりとなりました。前回のコラムでも書いた通り、アゼルバイジャンGPでのミックはまだモナコのクラッシュの影響を隠せず、意気消沈していたのですが、カナダで木曜日の朝に顔を見た時にいつものミックに戻っていたので、僕はほっとしましたし嬉しかったです。思わずミックに「いい顔してるね」と声をかけたくらいです。実際FP1の走り初めからコンスタントによく走ってくれて、予選もレースもよくやってくれました。自信を取り戻すのにいい週末になったかなと思います。
まずはその予選から振り返ります。あの雨の難しい状況で、チームの判断とドライバーのフィードバックが合致していて、Q1をフルウエットタイヤで走り続けたのは正しい選択でした。ミックはケビンに比べてリヤタイヤを傷めすぎたので、ケビンほどのタイムは出ませんでしたが、何が問題なのかはわかっていたのでQ2に向けてリセットしました。
Q1の最後に記録したタイムというのは、フルウエットからインターミディエイトタイヤに交換してもよさそうなタイムでした。それに加えてQ2セッション中に雨が激しくなるという情報もなかったので、Q2の最後は絶対にインターでの勝負になります。ここが僕のなかでは関門でした。なぜかというとウチは2台ともFP3でインターを履いた時の感触がよくなくて、フルウエットで出したタイムを上回ることができなかったのです。FP3で真っ先にインターを履いたフェルナンド(・アロンソ/アルピーヌ)は2周目に1分34秒台のタイムを記録し、最終的には1分33秒8までタイムを縮めました。それに比べてウチは1分36秒台のタイムしか出せず、原因ははっきりしていたので予選に向けてセットアップを変更しました。
その効果を見るためにもQ2は最初からインターでなるべく多く周回を重ねたかったので、インターで出て行きました。メルセデス、マクラーレン、アルファロメオやマックス・フェルスタッペン(レッドブル)などはフルウエットで出て行ったので、チームによって選択は別れましたが、結果的には路面はインターに適していましたし、クルマもよくなっていたので成功でした。
その後セルジオ・ペレス(レッドブル)のコースアウトでQ2は赤旗中断となりましたが、この時点でミックはトップ10にいたので、リスタート後は少し余裕を持ってコースに送り出しました。赤旗後は残り時間が9分となっていて、残り時間が8分11秒あれば計測を5回できるという計算だったので、あまり早めにコースに出ず、コンディションがよくなるセッション終盤を狙ったのです。それもあって、ミックはケビンを上回るタイムで見事にQ3進出を決めました。
Q3もセッション開始前に立てたプランで走行し、2回タイムを計測したところで新しいインターに履き替え、その後もミックは最後の最後まで自己ベストを更新し続けました。ケビンは最後に大きな失敗があってタイムを更新できませんでしたが、それでも1分22秒960と、4番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)とコンマ1秒差でした。今回はシャルル・ルクレール(フェラーリ)がペナルティを受けることが決まっていましたが、もし彼が通常通りに予選を走っていたとしても、ウチが6番手、7番手だったと思います。持てるポテンシャルをほぼすべて発揮できたということで会心の予選でした。あと特筆すべきは2番手のフェルナンド、さすがです!
自己ベストグリッドからレースをスタートしたミックは、決勝でもいいペースで走ってくれていました。しかし何の兆候もなく突然MGU-Kが壊れてリタイアとなりました。あのまま走りきることができれば8位入賞が見えていたので本当に残念です。
この数戦を振り返ると、スペインではルクレール、モナコではミックとケビン、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)、そして前戦アゼルバイジャンではルクレールやケビンにトラブル発生と、フェラーリPUの信頼性はちょっとひどいとしか言いようがない状況です。今後はウチもペナルティを避けられないので、状況をみてどこかで4機目のPUを投入することになります。
一方のケビンはスタート直後にルイス・ハミルトン(メルセデス)と接触、スペインGPとまったく同じようにいい予選結果を無駄にしてしまいました。今回はジョージ・ラッセル(メルセデス)やペレス、ルクレールなどがウチよりも後方からのスタートでしたが、彼らはウチが戦うべき相手ではありません。この3台に抜かれてもダブル入賞のチャンスはあるし、第1スティントで履くミディアムタイヤを壊さないように走ることが重要だとケビンにはレース前に伝えていました。ここでハミルトンを抜いても後で抜き返されますし、無理にポジションを守ろうとしたらタイヤをダメにするというのはわかりきっています。今、チームがどういう状況に置かれているのかを理解して、もっとやるべきレースをやって欲しいと思います。
結局ケビンは接触でフロントウイングにダメージを負い、オレンジボールフラッグによりピットインを強いられました。その後12番手まで追い上げましたが、そこからは何かが起きないとトップ10には入れません。レース終盤のセーフティカー出動の際にピットインをしなかったのは、ピットインすれば少なくとも14番手まで順位を落とすことになるとわかっていたからです。そこから10番手まで挽回するのはかなり厳しいので、一か八かでリスタートで何かあった場合にかけてステイアウトしました。
今回のように1周目のクラッシュなどで大きく順位を落とした場合、ほとんどない可能性にかけて無理してでもトップ10に戻ることを目指しますが(そのクルマの速さによります)、成功する確率は低いです。残念ながら今回も再スタートで何も起こらなかったのでポイント圏内に戻ることはできませんのでした。
マイアミ以来ここまでポイントを獲れないレースが続き、チーム内は「またか」という雰囲気でした。選手権のポイントもまだ15ポイントで、本当だったら30ポイントくらいは獲れていなければいけないんです。ケビンがスペインの時と同じミスをし、ダブル入賞のチャンスがふいになったのもマイアミに続いてこれが2度目です。こういう状況でチームのモチベーションを維持するためにも、レース後のデブリーフィングでは、“どこのレースに行ってもクルマは競争力があって、入賞を常に狙える”ということをみんなに伝えています。不運やPUの問題もありますし、どこかで状況が変わるとは思っていますが、5レース続けてとノーポイントというのは痛いです。
ただ、ミックはリタイアに終わりましたが、今回は本当によくやってくれました。こういう流れが続いてくれるといいですね。帰りの空港で会った時もいい表情をしていましたし、これを自信にして先に繋げてもらいたいです。
(Ayao Komatsu)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 237 |
2位 | ランド・ノリス | 156 |
3位 | シャルル・ルクレール | 150 |
4位 | カルロス・サインツ | 135 |
5位 | セルジオ・ペレス | 118 |
6位 | オスカー・ピアストリ | 112 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 111 |
8位 | ルイス・ハミルトン | 85 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 41 |
10位 | 角田裕毅 | 19 |
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1位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 355 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 291 |
3位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 268 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 196 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 58 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 30 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 19 |
8位 | BWTアルピーヌF1チーム | 9 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 2 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
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