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【F1技術解説】サスペンション規定変更がもたらす大きな影響(2)マクラーレンが選んだプルロッド式のメリット

2022年2月22日

 2022年F1技術レギュレーションにおいてサスペンションに関する規定が大きく変更されたことで、プルロッド式フロントサスペンションが有利に働くという見方が出てきている。


 去年まではフロントカウルの高さは最大62.5cmまで許容され、フロントバルクヘッド(ノーズが取り付けられるモノコックの前端部)の高さは最大55cmまで下げることができた。2021年メルセデスマシンの写真で明らかなように、ノーズに向かって角度をつけて落ちていくデザインが可能だったということだ。しかし今季からは、フロントカウルからバルクヘッドに向かって直線的なカーブを描きながら、切れ目なく突っ込まなければならない(下のショーカーの写真参照)。

2021年型メルセデスW12と2022年型F1ショーカーの比較
2021年型メルセデスW12と2022年型F1ショーカーの比較


 その影響は、視覚的なものだけではない。従来はカウルの高さを利用して、サスペンションの部品を高い位置に取り付けることができた。しかし今後は傾斜を均一にする必要があるため、取り付け位置は当然低くならざるを得ない。


 その結果、プッシュロッドサスペンション(サスペンションアームがホイールの下部から始まり、車体上部に取り付けられているもの。正面からは八の字に見える)が最適な解決策でなくなる可能性がある。特に今回の規約では、アームが車軸より4cm以上低くなってはいけないと決められている。プッシュロッドサスペンションでは、サスアームとウィッシュボーンとの角度が相対的に小さくなり、従来よりも移動量が少なくなってしまう恐れがある。

2021年型マクラーレンンMCL35Mと2022年型F1ショーカー
2021年型マクラーレンンMCL35Mと2022年型F1ショーカー

 となるとジオメトリー的に有利なのは、プルロッドサスペンション(アームがモノコックの底面に取り付けられ、ホイールに向かって上に伸びるタイプ。正面から見ると逆八の字)ということになりそうだ。この構成では三角形の間の角度が大きくなり、サスストロークがより大きく取れる。さらに車体底部にロッカー、ショックアブソーバー、トーションバーを取り付けられることで、低重心化にも貢献できる。


 2012年から2013年にかけてフェラーリ、2013年にマクラーレンが採用したこのデザインは、本質的な利点(低重心、薄型アーム)もあるが、何よりも2022年のレギュレーションの厳しさに適しているように思える。そのためかマクラーレンは新車MCL36で、プルロッド方式を採用している。

マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』

 開発上の課題は、それだけではない。この比較写真で明らかなように、フロントサスのプッシュロッドはこれまで、ハブキャリア(ハブにゲタを履かせて高くするパーツ)に取り付けられていた。そのおかげでドライバーがステアリングを切った際、ノーズが十数mm下がり、結果的に地上高を一定に保つことができた。

2022年型F1(ショーカー)で示されるフロントサスペンションの新規定
2022年型F1(ショーカー)で示されるフロントサスペンションの新規定


 しかし今季からプッシュロッドは、ハブに取り付けなければならなくなった。さらに上下変化は2mmに制限された。そのためドライバーがわずか12度ステアリングを曲げただけでも、ノーズは上がり、フロントウイングのダウンフォース発生量は激減。強いアンダーステアが出てしまう。


 これまでF1のサスペンションは、空力性能発揮のための道具と化していた。FIAとFOMは今回の規約変更で、サスペンション本来の機能であるハンドリングのコントロールに戻したいと考えたのだ。今回の簡略化が開発および現場エンジニアたちの頭痛の種になるのは間違いないが、この措置によって車体開発のコストが削減されることも事実であろう。



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)


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