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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第12回】スパウェザーでは“出せるときにタイムを出す”。レース運営には疑問も
2021年9月3日
2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。シーズン後半戦の初戦となったベルギーGPでは、ニキータ・マゼピンが新しいシャシーを投入した。だが週末は名物“スパウェザー”に翻弄され、決勝レースではスタートディレイや長時間にわたる中断を強いられた。最終的には3周で終了となり、日曜日のレース運営に対しては様々な意見があるようだが、そんな現場の事情を小松エンジニアがお届けします。
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2021年F1第12戦ベルギーGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝17位
#47 ミック・シューマッハー 予選18番手/決勝16位
シーズン後半戦の初戦となったベルギーGPで、ニキータに新しいシャシーを投入しました。これまで「ニキータのシャシーにはダメージがある」、「ミックのシャシーより重い」などと言われていましたが、まずニキータのシャシーにダメージはまったくありません。これはある一部の人々の根拠のない発言です。
ニキータの乗っていた1号車は、確かにモナコGP前まで彼が乗っていた2号車やミックの乗る4号車より少し重いです。細かな数字は言えませんが、何kgも重いわけではありません。ニキータはフランスGP以降1号車に乗っていましたが、それは彼らが2号車に問題があると思いこんでいるからです。もちろんチームの見解としてはデータ上、2号車にまったく問題はありませんし、むしろ2号車の方がほんの少しですが(1kg以内)4号車より軽いんです。とにかく、シャシーに問題があると言い続けている時点ではっきり言ってナンセンスなのですが、どうしてもと言うので新車(5号車)が作られたわけです。5号車はこれまでのクルマと性能の違いは何もありません。違いがあるとすればそれは頭のなかのプラシーボ効果でしょう。
さてスパでは予選から雨の影響を受け、予定時刻より遅れてのスタートとなりました。Q1の最初は、ウイリアムズ以外は全員フルウエットタイヤで走りました。あの程度の路面では、とりあえずはフルウェットでいくのが妥当だと思います。インターミディエイトタイヤで走るにはリスクが多すぎました。また天気予報を見ても、セッション開始時点の路面状況は一番悪い(濡れている)ということもわかっていたので、あそこでインターを履くリスクをとる必要性も感じませんでした。
またインターに履き替えてから連続して走ったというのは、あのように状況が刻々と変わるセッションではとにかくラップタイムを出せる時に出すことが大事だからです。黄旗の可能性もドライの時より増えますし、セッション終盤には雨の可能性も高くなってきていました。下手をすればサーキットのコンディションが一番いい時にチャージラップをやっていることになってしまう可能性があるです。
Q1の走り方を見ると、チャージラップを使ったチームと使わなかったチームが別れているのがよくわかります。メルセデス、アストンマーティン、アルピーヌとウチは連続走行。ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)やニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)もそうでした。チームの方針がよく見えておもしろいですよね。
ウエットコンディションでのタイヤマネージメントは水の量によります。雨が降り続けていて路面に水が多い状況であれば、連続で走行しても問題ありません。逆にたとえ雨が降り続いていても路面がそんなに濡れていない時は、連続走行しているとタイヤの温度が上がりすぎて性能が落ちます。ですから走り方は常に路面の状況とタイヤ温度を見て判断します。もしクールダウンラップを入れるにしても、どれくらいのラップタイムでクールダウンラップを走るのかも大きく影響します。
Q1のミックの場合は、インターで走った周回数が1周多すぎました。僕はあの状況で、連続走行は3周が限界かなと見ていました。しかしミックがインターに履き替えたタイミングでは4周する時間があったので、ミックをもう一度ピットインさせて、最後の2周では新しいインターでアタックをかけようと思い、これを選択肢のひとつとして走行中のミックに伝えました。ですが、彼にはその判断はできませんでした。振り返れば、選択肢を若いドライバーに与えるのではなく、単純にピットウォールからピットインの指示を出せばよかったと思います。
一方ニキータの方はフルウェットでまず2周走ったので、インターで走る時間は3周残されており最適な状況でした。しかしニキータは2周目にターン5のブレーキングでミスをして、その周を台無しにしてしまいました。さらにこのお陰で次の周でトラフィックにかかってしまいタイムを出せず予選は20番手という結果になってしまいました。最適な状況ではなかったけれど、そのなかで何とかタイムを出したミックと、最適な状況があったにもかかわらずそれを活かせなかったニキータの違いが予選結果となって現れました。
■天候回復の可能性がなかった日曜日。もっと早い段階でレースを再開してもよかったのでは?
残念ながら決勝レースはセーフティカーランで、最終的には3周で終わってしまいました。そもそもスタートディレイになることは明白で、スタート前の時点で路面にかなり水がありましたから、フルウエットでも走るのは厳しいし視界も非常に悪くなることは明らかでした。僕はグリッド上で「スタートを何回か遅らせて、セーフティカーの後ろでフォーメンションラップを数周してからスタート中断になるだろう」と最初から両ドライバーとチームのみんなに伝えていました。それしか方法がないのは明らかだったからです。
問題はその後の中断の長さですよね。3時間です! しかしこの間中、レーダーを見ても状況が好転する兆しはまったくありませんでした。サーキットのすぐ上にあった雨雲はどこにも動いていなかったですし、それが動き出す気配が見えた時には北東から新しい雨雲が来ていましたから。
レースディレクターがどうしてもレースをやりたかったのは痛いほどわかります。しかし状況が好転する兆しがなかったことも確かです。3時間後にセーフティーカーの後ろでレースを始めるくらいなら、もっともっと早い段階でやるべきだと個人的には思います。実際に18時過ぎにコースに出ていった時の状況は、15時25分にフォーメーションラップを開始した時よりも悪かったですから。なんとかレースをやろうとした気持ちはよくわかるのであまり批判はしたくないのですが、あのレーダーを見て何を期待していたのか僕にはイマイチわかりかねます。どうにか状況が好転することを祈っていたのでしょうけど。。。
またフルウエットタイヤでのレースは、ほぼあり得ないとも思っていました。なぜかと言えば、フルウエットはあまりにも作動範囲が狭く、フルウエットを履かなければいけばいような水量ではレースはできない(視界も悪く危険すぎる)と思っていたからです。もしインターで走れる状況になってレースが行われた場合は、とにかく大きなミスをせずにコース上にとどまって走り続けることだけに集中するようにと両ドライバーには伝えていました。
残念ながら今年のウチのクルマでは速さで勝負することはできないので、他のドライバーがリスクをとった末にコースオフするような状況でない限りポジションを上げることが難しいからです。後ろ向きととらえられるかもしれませんが、厳しい現実を見つめた時に唯一の可能性はこれしかないんです。
長い中断中はレーダーを頻繁に確認していましたし、レースが仮に今再開されたらどう出るかなどを常に考えていて、レギュレーションの該当する部分を読み返したりもしていました。あとはメカニックにお茶を作ってあげたり(笑)。またウチのピットウォールのすぐ近くにセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)のクルマが止まっており、セバスチャンのメカニックのひとりは良い友人なので、彼のメカニッククルー全員にもお茶とケーキを持っていったらとても喜ばれました。
またセバスチャン自身もウチのスペアガレージのなかでミックとミニサッカーをしたりして遊んでいました。個人的な話ですが、セブはイギリスGPの際に僕の子供たちが通っている小学校に話をしに来てくれたんです。その時に学校の子供たちが本当に喜んでいたので、その時の話なんかもちょっとしました。
次戦はオランダGPです。36年ぶりの開催とはいえ新たにカレンダーに加わったということで、ザントフォールトをシミュレーターで走りはしましたが、ウチのシミュレーターはそこまで高いレベルではありません。これはまだまだ開発していかなければいけないエリアのひとつです。チームとしては通常のシミュレーションからサーキットの特性を学んで、妥当なイニシャルセットアップを出しています。レースでの追い抜きは難しいと思いますが、コースはかなりうねっていてドライバーのラインの取り方などもおもしろいと思いますし、タイヤにもとても厳しいので見どころ満載の週末になると思います。
(Ayao Komatsu)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 393 |
2位 | ランド・ノリス | 331 |
3位 | シャルル・ルクレール | 307 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 262 |
5位 | カルロス・サインツ | 244 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 192 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 190 |
8位 | セルジオ・ペレス | 151 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 62 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 31 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 593 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 557 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 544 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 382 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | BWTアルピーヌF1チーム | 49 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 46 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 44 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |