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【気になる一言(1)】レーシングポイントF1の違反裁定に納得いかず「これは技術的な問題だと思う」
2020年8月8日
第5戦70周年記念GP金曜日のFIA会見の第1部に登場したのは、トト・ウォルフ(メルセデス代表)、シリル・アビテブール(ルノー/マネージングディレクター)、フレデリック・バスール(アルファロメオ代表)の3人。このなかで多くの質問が寄せられたのが、ウォルフとアビテブールだった。
理由は、記者会見が行われたこの日、フリー走行開始直前にFIAがレーシングポイントのマシンの合法性に関するルノーの抗議を認め、レーシングポイントに対して40万ユーロ(約5000万円)の罰金と、15ポイントのコンストラクターズ選手権ポイント減点処分を科したからだ。
アビテブールは抗議していたルノーのマネージングディレクターで、ウォルフ率いるメルセデスは抗議を受けてFIAから2019年のブレーキダクトに関するデータを提出していた。
まず、会見で最初に記者からの質問を受けたのは、ウォルフだった。それは「今回の裁定では、あなたたちのチームが今年1月6日にCADデータを少なくとも10回(レーシングポイントと)共有していると判明したが、どのように関わっていたのか」という質問だった。
レギュレーションにはリステッド・パーツ(リストに掲載されているパーツ)と呼ばれるものがあり、このリストに挙げられているものは、それぞれのコンストラクターが独自に設計・製造しなければならない。そのリストに昨年まではブレーキダクトは含まれておらず、ギヤボックスなどと同様にワークスチームからカスタマーチームに供給することができていた。
しかし、今年からブレーキダクトはリステッド・パーツに含まれた。にもかかわらず、メルセデスとレーシングポイントの間で、ブレーキダクトに関するデータの共有が今年の1月6日に行われていたということで、FIAは今回のレーシングポイントのケースはレギュレーション違反だと判断したというわけだ。
この質問にウォルフは次のように答えた。
「我々メルセデスは自分たちの立場に関して、100%満足している。FIAの裁定を何度も読み返したが、これは非常に複雑で、ある意味、我々にとってこれは新しい解釈とも言える」
「我々は2019年に(レーシングポイントに)特定のデータを提供した。もちろん、これは完全にルールの範囲内だった。今年の1月6日の(ブレーキダクトに関するデータ共有)は、大きな影響を与えるものではない。なぜなら、ほとんどのデータはそれよりもかなり早い段階で供給を済ませていたからね。したがって、レーシングポイントと我々は、我々が行ったことはレギュレーションの範囲内であると考えている」
その後、ウォルフは「これは哲学の問題だ」と語り、今回の騒動に関して、独演会とも思える長いコメントを語り出した。
「あるチームのマシンが、ほかのあるチームのマシンとそっくりになることは、双方にメリットがある。彼らにとっては我々のテクノロジーでフロントランナーになることができ、我々にとっては通常であれば、収益化できないテクノロジーの一部を収益化することができる。まさにウィン・ウィンの関係だ」
「もちろん、この哲学に賛同できないと考えている人たちもいるし、彼らの意見を私は尊重する。しかし、それはレギュレーションでは禁止されていない。今回の状況は、特別なケースだった。それはリステッド・パーツでなかったものが、あのときからリステッド・パーツになったために発生した問題だ。だから、我々はまったく心配していないし、レーシングポイントにも違反があったとは思っていない」
これを横で聞いていたアビテブールにも意見が求められた。アビテブールは、「裁定には満足している」と言いつつも、100%納得しているようではなかった。
なぜなら今回の裁定に関しては、リステッド・パーツの変更がテクニカル・レギュレーションではなくスポーティング・レギュレーションに掲載されているため、スポーティング・レギュレーション違反となり、技術的にはレーシングポイントのブレーキダクトはレギュレーションに合致していると判断された格好となったからだ。
もしテクニカル・レギュレーション違反であれば、該当するレースで獲得したポイントは失う。最近では2018年のイタリアGPで、ハースのロマン・グロージャンが6位でフィニッシュしながら、レース後にルノーからの抗議を受け、失格となった。
したがって、テクニカル・レギュレーション違反だった場合、レーシングポイントは少なくとも抗議を受けた第2戦シュタイアーマルクGPからイギリスGPまでの3戦分のポイントをすべて剥奪され、かつこの70周年記念GPからレギュレーションに合致した仕様に変更しなければならかった。
しかし、スポーティング・レギュレーション違反となったために、今後のレースでもレーシングポイントは同じブレーキダクトを使用したとしても戒告のみで罰則は科されない。
アビテブールは言う。
「複雑な問題であることは認めるが、これは技術的な問題だと思う。そして、彼らが得た技術的なアドバンテージをシーズンを通して享受することは議論の余地があると思う」
「なぜなら、ブレーキダクトの開発には空力開発の20%の時間が費やされ、空力開発はATR(空力テスト削減)によって、かけられる時間が短くなっているんだから。ただ、裁定を来年まで待つことなく、迅速に下した関係者の努力に対しては敬意を払っている」
果たして、この論争は裁定が出たことで幕引きとなるのか。それとも、新たな論争へと発展するのだろうか。
(Masahiro Owari)
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