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RB16技術ピックアップ:レッドブルの操舵系レイアウト変更の狙い。メルセデスと開発競争の予感
2020年3月11日
技術ウォッチャーの世良耕太氏が、F1プレシーズンテストで走行したレッドブル・ホンダの2020年型マシン『RB16』で気になった技術的ポイントを解説。今回は2019年型マシンから変化していた操舵系にフォーカスする。
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2020年シーズンのF1開幕前に行われた計2回のプレシーズンテストでは、DAS(デュアル・アクシス・ステアリング)が話題だが、2019年型と2020年型で操舵系が変化しているのはメルセデスだけではない。実は、レッドブルも変わっている。2019年のRB15と20年のRB16を比べてみよう。
RB15はロワーウィッシュボーンの前にタイロッド(トラックロッド)があった。タイロッドはステアリングホイールの動きをホイールに伝える部品である。ステアリングの動きはステアリングシャフト(角度を変えるために2分割になっており、途中にジョイントがある)を経てステアリングギヤボックスに伝わり、ここで回転運動が直線運動に変換され、タイロッドを経て、ブレーキやホイールが装着されたアップライトに伝わる。
タイロッドが車軸よりも前方にあるレイアウトを“前引き”、車軸よりも後方にあるレイアウトを“後ろ引き”と呼ぶ。F1の場合は前引きにするのが一般的だ。
ステアリングギヤボックスはモノコックのフロントバルクヘッドに4点留めするのが一般的で、運良く確認できればの話だが、ステアリングシャフトの先端にあたるピニオンギヤがラックバー(ステアリングギヤボックスに内蔵されている、歯が切られた棒)の下側にあれば前引きと判断できる。ラックバーの上にピニオンがあれば後ろ引きだ。
RB15はセオリーどおり、バルクヘッドにステアリングギヤボックスが固定され、左右両端からタイロッドが伸び、ロワーウィッシュボーンのフロント側レッグとほぼ平行になってアップライトにつながっていた。ピニオンギヤはラックの下側にあり、前引きでタイヤの向きを変えていた。
しかしRB16を見ると、どうも様子が違う。バルクヘッドにステアリングギヤボックスは見あたらない(U字断面をしているのは相変わらずだ。モノコック下部がラウンドした形状は、フロントウイングが跳ね上げた空気とのなじみがいい)。
ステアリングギヤボックスはどうやら後方に移動したようだ。別アングルの写真を見ると、ロワーウィッシュボーンのリヤレッグ近くにタイロッドが配置されているのが確認できる。この結果、ステアリングシャフトの角度がきつくなるのは、力学的にはありがたくない。
アップライト側の様子が確認できないのでなんとも言えないが、ひょっとすると後ろ引きになっているかもしれない。角度が付きすぎると回転変動による振動の原因となるため、ステアリングギヤボックス〜アップライトはできるだけ直線的に結びたい。このあたりがどうなっているのかも、気になるところだ。
ところでなぜ、このような変更を行なったのだろうか。ステアリングギヤボックスを重心点近くに移動させることが狙いか(車両運動性能上の理由)。タイロッドを空力デバイスのひとつとして活用するのに後ろ側にあってほしいので、ステアリングギヤボックスごと移動させたのか(空力上の理由)。
いずれにしても、操舵系のレイアウトを変更して、何らかのゲインを得ようとしているのは間違いない。
ひょっとして、メルセデスと似たようなことをやっている可能性もあるかもしれない。
(Kota Sera)
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