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躍進を支えた明確な空力コンセプト。マクラーレンMCL35はトレンドに独自のアイデア追加/全チーム戦力分析(4)

2020年3月4日

 スペインのバルセロナ-カタロニア・サーキットで行われた2回のテストを終えて、各チームの新型マシンに様々な特徴が見えてきた。今回は2020年F1開幕戦オーストラリアGPに向け各チームの実力を数値化して分析。連載第4回はマクラーレンF1チームだ。


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■マクラーレンのチーム戦力:100点満点中83点
■テストでの最速タイム:1分16秒820 8番手/全10チーム中(カルロス・サインツJr./C4タイヤ/テスト第2回目・最終日午後)
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 2019年にコンストラクターズ選手権で4位を獲得したマクラーレン。コンストラクターズ選手権でマクラーレンが4位以上になるのは、2012年の3位以来という躍進だった。


 この躍進を支えたのが、明確な空力コンセプトだった。フロントウイングのレギュレーションが変更された昨年、マクラーレンはアウトアウトウォッシュによる空力効果を得るために、フロントウイングに『へ』の字型のユニークなアイデアを採用。さらに迷うことなく、シーズンを追うごとにそれを進化させていった。


 2018年にコンストラクターズ選手権で4位と5位だったルノーとハース、そしてレーシングポイントが、そこまで攻めきれずに空力で苦しんだのとは対照的だった。


 2013年以降のマクラーレンがコンストラクターズ選手権で5位以下に低迷したのには、さまざまな理由があるが、技術的な理由のひとつに、常に新しいアイディアにトライするというアグレッシブさがことごとく裏目に出たことが挙げられる。


 2013年にはフェラーリが2012年に採用したプルロッド方式をフロントサスペンションに導入。しかし、翌年には再びプッシュロッド方式に戻していることからもわかるように、それは失敗に終わる。


 2014年にはリヤサスペンションのリヤバックレグ(後方の上下のアーム)の形状を、翼断面ではなく、上下に膨らんでいるユニークなデザインを採用。しかし、低速時のダウンフォースは増加したものの、高速時のドラッグが増え、メルセデス製パワーユニット(PU)を搭載しながら最高速が伸びないというデメリットを生んでしまった。


 2015年からの3年間はホンダ製のパワーユニットの性能にも足を引っ張られたことも確かだが、そもそも『サイズ・ゼロ』と呼ばれるコンセプト自体に限界があったことは否めなかった。


 2017年にコンストラクターズ選手権9位に低迷したマクラーレンは、ここでいきなりトップを狙うのではなく、確実にダウンフォースを獲得しに行くという開発に方向を転換。細いノーズもこの2018年に初めて採用したアイディアだった。これは車体中心線の左右250mmずつのエリアの風の流れを積極的に利用する手法である。ノーズを細くすることでフロントタイヤ内側のエリアが広がり、フロントタイヤ周辺で発生する乱流からノーズ側面を流れる空気を遠ざけるメリットがあると思われる。


 フロントサスペンションのアッパーアームには昨年から導入したハイマウント化を採用。アームの位置を上げることでノーズ側面の障害物をできるかぎり除去するためだ。

全チーム戦力分析:マクラーレン編
フロントサスペンションのアッパーアームには昨年から導入したハイマウント化を採用


 フロントウイングでアウトウォッシュを行い、ノーズを細くすることで車体中央の空気の流れを加速させ、フロアでのダウンフォースを獲得するという手法は、現在のトレンドとも言えるコンセプトだ。その中にも、フロントウイング翼端板の外側後方には独特のくぼみを設けたり、フロントのブレーキドラム下側にフィンを複数装着するなど、マクラーレンらしい独自のアイディアも見られる。

全チーム戦力分析:マクラーレン編
『MCL35』のフロントウイング翼端板

全チーム戦力分析:マクラーレン編
フロントのブレーキドラム下側にフィンを装着


 このMCL35にポテンシャルがあることは、1回目のテスト初日に、カルロス・サインツがいきなりレースシミュレーションを行ったことでもわかる。その後も1回目のテスト2日目にランド・ノリスもレースシミュレーションを行い、2回目のテストの最終日に再びサインツがレースシミュレーションを行ってテストを締めた。


 多くのチームが最も軟らかいコンパウンドのC5での一発のタイムを出すパフォーマンスランを行ったなか、マクラーレンはレッドブル・ホンダと同様、パフォーマンスランで使用したコンパウンドはC4タイヤまでにして、むやみにタイムを出しに行くのではなく、スペインGPを想定したコンパウンドでのアタックに集中していた。


 好調な車体開発にあって、マクラーレンにとって唯一の弱点は今シーズンで契約が切れるルノーのパワーユニット。プレシーズンテストでは最高速が伸びなかったからだ。昨年はサインツが6基のICEを使用。ルノー製PUの性能だけでなく、信頼性も気になるところだ。



(Masahiro Owari)


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