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スペイン人ライターのレース便り:WECデビュー戦におけるアロンソの勝利でチームの大きな課題が露呈
2018年5月19日
スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。WEC開幕戦のスパ6時間レースに勝利したフェルナンド・アロンソ、F1王者であるアロンソのデビュー戦は大きな注目を集めたが、今年のル・マン24時間に向けて一抹の不安も感じているようだ。
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私は幸運にもTOYOTA GAZOO Racingの内部からWECの数戦を経験してきている。2016年以来、スパ・フランコルシャンとル・マンのレースに足を運び、同様にモンツァとポール・リカールでのテストデーも取材している。
私はドイツのケルンにあるTMGトヨタ・モータースポーツGmbHのファクトリーも訪問しており、チームスタッフの何人かと話をすることができた。その経験から、自分はトヨタのチーム運営についてよく理解していると思っている。それでも、2018/19年の“スーパーシーズン”がトヨタにとって非常に特別であることは周知の事実だ。
アウディとポルシェがWECから撤退した今、トヨタ勢はル・マン24時間を含めたWEC全体における大本命である。そのことが、フェルナンド・アロンソという存在を引きつけることとなった。彼はLMP1マシンでの初レースで優勝を飾っている。
そしてそこが第一の問題にぶつかるところだ。スペインのプレスは主にアロンソの勝利について報道している。さまざまなウェブサイトや新聞、テレビ番組をざっと見渡すと、アロンソの勝利についての見出しがついている。もし耐久レースの事情をよく知らない人が見れば、ベルギーではアロンソが6時間のすべてをひとりで走行したと思うかもしれない。
しかし、現実はまったく違う。幸い、チームの取り組みの重要性を強調したいと思っているジャーナリストはたくさんいる。中嶋一貴とセバスチャン・ブエミは、一貴の予想外のスピンを除けば、いつものように素晴らしいパフォーマンスを見せた。運良く一貴は遅れを取り戻すことができた。実際にはアロンソは優勝した8号車トヨタTS050ハイブリッドのドライバーの中で一番遅かったのだ。
公平を期すために言うと、アロンソが一貴やブエミよりも遅いのは当然のことだ。このふたりは多くの経験を持ち、マシンとシリーズのすべてを知り尽くしているドライバーだ。
一方のアロンソは非常に優れた才を持つとはいえ、基本的にはスポーツカーレースの“ルーキー”である。トヨタのドライバーとして初めてのレースで、彼は大きなミスを犯すことなく、言われたことをした。そしてその結果、使命は達成された。
初勝利は果たされ、これからはル・マンでの“大勝負”について考え始めるべきタイミングだ。しかし、ワン・ツー・フィニッシュというトヨタにとっては素晴らしいリザルトに、なにか後味の悪さがあるのはなぜだろう? 外からは見えない物事は常にあるものだ。
まず、燃料流量計の申告の誤りは、TOYOTA GAZOO Racingのようなチームらしくないミスであり、その犠牲は大きかった。小林可夢偉らの7号車トヨタTS050ハイブリッドは他のすべてのマシンから1周遅れでスタートしなければならず、ドライバーたちは大きな不利益を被った。
レースの状況と、マイク・コンウェイおよび可夢偉の非常に印象的なレースペースにより、不運な7号車トヨタは最後のピットストップの後、時間内に戦いに戻ることができた。だが彼らにとって残念なことに、トヨタには最後のピットストップ後のバトルをドライバーに禁じたレース前の取り決めがあったようで、それでおしまいだった。ブエミ、一貴、アロンソには固定されたポジションと優勝が与えられ、一方のコンウェイ、可夢偉、ホセ?マリア・ロペスは2位となった。
レースにおいてトヨタTS050ハイブリッドには信じられないほどの競争力があり、他のどのノンハイブリッドのLMP1マシンもその勢いを止めることはできなかった。時折ノンハイブリッド勢が近づく場面もあったが、実際のところ彼らのレースペースは不足していた。
何か変わったことが起こらなければ、今シーズンにトヨタはWECのすべてのレースで優勝するはずだ。しかしひとつのチームがあまりに圧倒的な優位に立っていると、新たな問題が生まれる。
たとえば、セーフティカーの後で、アロンソは小林に対して非常に激しいディフェンスをしていた。あれはチームに許可されていたのだろうか? それともアロンソは少し“やりすぎて”いたのだろうか? それが何であれ、そして偶然かもしれないが、可夢偉は表彰台に立たなかった。
表向きには、チームは可夢偉がエンジニアたちと話をしていたため、表彰式の開始に2分遅れたのだと言っている。奇妙な話だ。レース後、私はトヨタのチーム内部で起きたことを正確に知りたかったが、完全に信用できる情報がほとんどないことは分かっていた。だから私ははっきりと明確な結論を出せていない。
しかしそれでも、レース中、そしてレース後の可夢偉の表彰台不参加など、週末の一連の出来事を見れば、チームの内部で何かが噴出していることは極めて明らかだろう。
6人のドライバーたちは、6月にはル・マンでトヨタから初勝利を飾るドライバーになる歴史的なチャンスが訪れることを知っている。そのチャンスを諦めようとする者などひとりもいない。
勝利を掴むのは7号車か、8号車か? ル・マンは独特なコースで、さまざまなことが起こり得る。そして、2012年にWECが再開して以来ずっと、スパ・フランコルシャンで優勝したマシンはル・マンでは優勝できていない。
トヨタはマシンとチームの管理に長けている。次のステップはドライバーを管理することだろう。それは、これまでで最大の課題になるかもしれない。それにしても、アロンソがレースに出るチームでは、なぜいつも何かしら物議が醸されるのだろう?
(Alex Garcia/Translation: AKARAG)
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1位 | ランド・ノリス | 77 |
2位 | オスカー・ピアストリ | 74 |
3位 | マックス・フェルスタッペン | 69 |
4位 | ジョージ・ラッセル | 63 |
5位 | シャルル・ルクレール | 32 |
6位 | アンドレア・キミ・アントネッリ | 30 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 25 |
8位 | アレクサンダー・アルボン | 18 |
9位 | エステバン・オコン | 14 |
10位 | ランス・ストロール | 10 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 151 |
2位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 93 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 71 |
4位 | スクーデリア・フェラーリHP | 57 |
5位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 20 |
6位 | ウイリアムズ・レーシング | 19 |
7位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 10 |
8位 | ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム | 7 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 6 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 6 |

