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【F1カナダGP無線レビュー】頑として順位を譲らないペレスの意地「自由にレースをさせてくれよ」

2017年6月14日

 今季7戦中6戦でダブル入賞を果たしランキング4位をいくフォース・インディアに、突如“内紛”が勃発した。


 エースとしてチームを牽引してきたプライドのあるセルジオ・ペレスと、メルセデスAMGの秘蔵っ子である新人エステバン・オコン。その2人がチームオーダーを巡って意見を対立させたのだ。 


オコン(以下、OCO)「多分僕は(ダニエル・)リカルドを抜けると思う」


 レースが終盤に差し掛かろうとする51周目、オコンが無線で訴えた。
 オコンの前では3位リカルドを抜けないペレスが膠着状態に陥っていた。最高速で優るフォース・インディアだが、トラクションに優れストレートの立ち上がりで逃げるレッドブルを捕まえるのは容易ではなかったのだ。


フォース・インディア(以下、FIN)「エステバンはプッシュしていて彼はリカルドを抜けると言っている。君はできるだけのことをやってくれ」


 レースエンジニアのティム・ライトがペレスに無線で伝える。フォース・インディアは2人の順位を入れ換え、オコンにアタックさせることを検討し始めていた。ペレスにそのことを伝えるが、ペレスは頑として譲らず自分にアタックさせてくれと議論は進まない。


ペレス(以下、PER)「こんなの時間の無駄だよ。自由にレースをさせてくれよ」


FIN「後ろにフェラーリ勢が来る前にアタックしたい。OCOを前に行かせてFERが来る前に抜けなければ順位を戻すよ。それが我々のプランだ」


PER「もうすぐ前にトラフィックが来る。チャンスが欲しいんだ。今は集中させてくれ」


FIN「3周あげるよ。その間にリカルドを抜けなかったら順位を入れ換えよう。フェラーリ勢が近付いて来ているんだ」


 この状況だけを見れば若手の突き上げを喰らうペレスがワガママを言っているだけのように見えるが、実際は違った。


FIN「チェコ、プッシュ、プッシュ。タイヤの全てを使い尽くせ」


 序盤から上位を走っていたペレスは17周目にキミ・ライコネンのアンダーカットをカバーするために早めにピットインし、チームはオコンには逆にステイアウトの戦略を与えたからだ。なかなかピットインしないオコンの状況を、ペレスも懸念していた。


PER「オコンは何をやろうとしているんだ?」


FIN「彼はフリーエアーで走っている。でもペースは同じようなもので君はまだピットウインドウ内だよ」

F1カナダGP セルジオ・ペレス vs エステバン・オコン
F1カナダGP セルジオ・ペレス vs エステバン・オコン

 実際、32周目にピットインしたオコンはライコネンの後ろでコースに戻り、順位の変動はなかった。しかしチームの戦略通り、彼はペレスよりも15周もフレッシュなタイヤでレース終盤に猛攻を仕掛けるチャンスを得たのだ。つまり、表彰台争いだ。


 フォース・インディアは最終的にはチームオーダーの発令を見送り、ペレスにリカルド追撃を続けさせた。しかし、オコンにも追い抜きを禁じたわけではない。


FIN「チェコをプッシュし続けて行け。もうすぐ問題を抱えるぞ」


 65周目のバックストレートでオコンはペレスのスリップストリームを捉え、DRSを使ってオーバーテイクを仕掛ける。ペレスがインを守り、オコンは最終シケインのアプローチが苦しくなった。


 そのせいで後方から追い付いてきたセバスチャン・ベッテルにストレートで並ばれ、次のターン1で前方のペレスにも阻まれて行き場をなくしベッテルに5位を奪われた。結局ペレスもベッテルを抑えることはできず、表彰台を掛けた争いは5位・6位という結果に終わった。

2017年F1第7戦カナダGP セルジオ・ペレスとエステバン・オコン(フォース・インディア)がバトル
2017年F1第7戦カナダGP セルジオ・ペレスとエステバン・オコン(フォース・インディア)がバトル


FIN「チェコ、良い仕事だったよ」


PER「最後は全然タイヤが残っていなかったよ」


 一方、オコンは納得がいっていない様子だった。


OCO「これはおかしいよ、全くフェアじゃない。こんなことはすべきじゃないよ」


 しかし、レース後の1時間以上にわたるデブリーフィングを終えて、オコンはチームの判断に納得の表情を見せた。


「表彰台も可能かもしれないと思ったから、少しフラストレーションも感じたよ。でもレースはこういうものだからしかたない。フェラーリやレッドブルと戦えるマシンだったというのは素晴らしい気分だったし、チャンスはこれが最後じゃないと確信しているよ」


 今年はエンジニアとのコミュニケーション不足からマシンが思うように仕上がらず速さを引き出し切れないまま苦労してきたが、ようやく光明が見え始め、ここに来てめきめきと速さを増してきた。ユーロF3、GP3と初年度でタイトルを獲得してきた驚異の新人がその才能を開花させるのはそう遠くはなさそうだ。



(Mineoki Yoneya)


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