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不運の連続にも腐らず母国GPを全力で走ったクビアト。グリッド降格のない鈴鹿でダブル入賞を狙う/トロロッソ・ホンダF1コラム
2019年10月6日
F1第16戦ロシアGPはダニール・クビアトにとって大切な母国グランプリだったが、一筋縄ではいかないことはレース週末を迎える前から分かっていた。今後の残り6戦に向けて、スペック4のパワーユニット(PU/エンジン)をもう1基投入することが決まっていたからだ。つまり、最後尾からのレースになることだ。
シンガポールから直接モスクワへ飛び、1日だけのオフを満喫して水曜日にソチへ入って来たクビアトは、それでもリラックスした表情をしていた。
シンガポールGPはフリー走行3回目でオイル漏れのトラブルに見舞われ、充分な走行ができないまま臨んだため予選は16番手でQ1落ちとなってしまった。その時点でパワーユニットを交換してペナルティを消化しておくことも議論されたが、結局チームとホンダとクビアトは追い抜きが容易なソチでの投入を決めた。
「あの予選結果に終わった瞬間は、私も腰が浮きかけました。ただもう一回腰を落ち着けて色んな状況をじっくりチームとも考えて、ちょっと待てよと。周りもペナルティがたくさんあるし、どこまでグリッドがあがるのか。シンガポールは抜くのが難しいし、遅いクルマに引っかかると数周の間にあっと言う間に前との差が広がってしまいますからね。そういったこともあって思い留まり、結果的にガスリーが8位を獲ることができたので良かったと思います」(ホンダ田辺豊治テクニカルディレクター)
しかしピットインのタイミングが悪くシンガポールGPを15位に終わったクビアトにとっては別の選択肢もあったかも知れない。
そしてロシアGPでも再びトラブルに見舞われ続けることになってしまった。FP1で早々に燃料ポンプのトラブルでエンジンが止まり、土曜のFP3ではICE(エンジン)に問題が起きてストップ。チームは予選までに修復することを諦め、パワーユニットを載せ換えてぶっつけ本番で決勝に臨むこととなった。
クビアト車ばかりにトラブルが続く事態となったが、それぞれは全く異なるものであり、特にオイル漏れ以外は現場スタッフの力でどうなるものでもないため、偶然としか言いようがないのが実状だった。
母国でのこうした境遇にフラストレーションが溜まっているはずのクビアトだったが、以前のように取り乱したり不機嫌さを露骨に表わしたりはしなかった。それどころか、ジョークを言って場を和ませるようなところさえあった。これが今年シートを獲得しF1に舞い戻ってきたクビアトの成長であり強さだ。
「明日のレースは最後尾も最後尾……モスクワくらいの距離からのスタートだけど(笑)、戦略をどうにかして全力でやれるだけのことをやるしかないね。F1ではこういうときもある。もちろんトラブルで走れないのは残念だけど、この3戦で急にトラブルが出ていることにはチーム自身もフラストレーションを感じているし、それを是正するために全員が全力で努力しているからね」
クビアトがリラックスした態度でいられたのは、STR14が中団グループのトップを争えるくらい高い戦闘力を持っているということがピエール・ガスリーの走りで証明されていたからでもある。
ガスリーも5グリッド降格ペナルティを科されており、最後のアタックが不発でQ2敗退に終わりはしたが、ずっと中団トップの6番手に付けていてQ3まで0.06秒差と僅差の結果だった。シンガポールGPでもQ3まで0.07秒差のところにいた。
母国グランプリ用に用意したロシア国旗の色をあしらったスペシャルヘルメットが「今季2度目のカラースキーム変更」とみなされて却下されるという不運まであったが、それでもクビアトは腐ることなく最後尾から果敢にレースに挑んでいった。
その言葉通り周りとは異なるハードタイヤを履いてスタートし、レース終盤にソフトタイヤでプッシュする戦略。
ただしレース中盤にセーフティカーが入ってしまったため、ほとんどの前走車が同じタイミングでソフトタイヤに履き替えることとなり、ハードスタートのメリットはほとんど生まれなかった。それどころか、セーフティカー中にピットインしたタイヤの内圧設定に問題があり、もういちどタイヤ交換を強いられることに。セーフティカー中にすぐに対応できたためポジションを失うことはなかったが、チームとしては非常に危険なミスを犯してしまったことになる。
そして、レース再開後に前に立ち塞がったのはルノーやレーシングポイントで、最高速が伸びるマシンたち。トロロッソの2台はこれを抜きあぐねてしまい、結局ポイント圏内には手が届かなかった。
「セーフティカー導入中にピットインしてオプションタイヤに交換したが、タイヤに問題を発見してもう一度ピットに呼んで再度交換することにした。セーフティカー中でフリーストップが可能だったからね。問題はその後にストロールとヒュルケンベルグを抜く速さがなかったことだ」(フランツ・トスト代表)
その原因となったのは、マシンもパワーユニットもタイヤも、混走状態の中で走ることでオーバーヒートの症状が出てしまい、本来の力を抑えて走らなければならなくなってしまったことにある。
特に症状が厳しかったガスリーは次のように語る。
「レースを通してオーバーヒートの問題だらけで、トップ10を争うだけの速さがなかったよ。今週末の僕らの本来の速さに比べると、その力を発揮しきることが出来なかったんだ。今日は今週末の中で一番の暑さだったし、FP2ではロングランがかなり強力だったのに今日はそこまでのペースがなかった。こういう暑いコンディションの中では僕らは苦戦してしまうみたいだ。どうしてこうなってしまったのか、鈴鹿に向けてしっかりとその理由を分析しないといけないね」
良いところのないまま12位でレースを終えた直後のクビアトはさすがに落胆の表情を見せ、口数も少なかった。
それでも自分自身としてはやれるだけのことはやったという点に胸を張った。
「昨日までのトラブルと最後尾スタートだったことを考えれば、ポイント獲得の目前まで行けたし今日はとても力強いレースが出来たと思う。最終ラップまで全力で戦っていたし、自分自身のレースの内容にはとても満足しているよ。スタートも良かったし、良いバトルもたくさん出来たし、やるべきリストのほとんどをこなすことはできたと思うよ。僕自身とチームのパフォーマンスには満足だよ。“報酬”を手にすることが出来なかったのだけが残念だね、今日の僕らにはそれに値したはずだったんだけどね」
次はいよいよ鈴鹿だ。昨年は予選で6位・7位に入る快走を見せた。今年は決勝でもその速さを維持できるようにすれば、レッドブルの2台と合わせてホンダ勢4台全てがトップ10圏内でフィニッシュできる可能性を秘めている。
この3戦はトラブルやペナルティの影響で思うようにレースができなかったクビアトだが、本来の地元ロシア、育ちの地元イタリアに次いで第3の地元レースとも言える鈴鹿でその鬱憤を晴らす走りを期待したい。その思いはもちろん日本でレースをしていたガスリーも同じだ。昨年想像を超える応援をもらった日本のファンのために、トロロッソ・ホンダの全員が鈴鹿で最高のレースをすべく準備を進めている。今年最後の大型アップグレードとともに、トロロッソ・ホンダは鈴鹿に乗り込む予定だ。
(Mineoki Yoneya)
関連ニュース
9/20(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
9/21(土) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
予選 | 結果 / レポート | |
9/22(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
1位 | マックス・フェルスタッペン | 331 |
2位 | ランド・ノリス | 279 |
3位 | シャルル・ルクレール | 245 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 237 |
5位 | カルロス・サインツ | 190 |
6位 | ルイス・ハミルトン | 174 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 155 |
8位 | セルジオ・ペレス | 144 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 62 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 24 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 516 |
2位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 475 |
3位 | スクーデリア・フェラーリ | 441 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 329 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 34 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 31 |
8位 | ウイリアムズ・レーシング | 16 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 13 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第18戦 | シンガポールGP | 9/22 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |