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F1史に刻まれた期待外れマシン列伝(2)ケータハム、メルセデス、アストンマーティン──エゴイズムが生み出した失敗作

2026年4月22日

 2026年にF1は、バトルを増やし、環境負荷を低減することなどを主目的に、レギュレーションを一新、新世代マシンを導入した。3戦を消化した段階での評価には、エネルギーマネジメントの重要性が高まったことで、予選でも全力でプッシュできない、バトルが人工的、速度差が大きくなり危険が生じるなどの批判的な声も多々あり、第4戦からの規則修正も決まった。


 今年のレギュレーションはまだ初期段階であり、確定的な評価は下せない。だが、F1の歴史のなかでは、後年に振り返っても否定的な見方をされるレギュレーションやマシンがいくつかある。今回の特集では、そういうレギュレーションとマシンに焦点を当て、ベテランF1ジャーナリストの柴田久仁夫氏と尾張正博氏に、1999年以前、2000年以降に分けて、ワーストレギュレーションおよびワーストマシンを3つずつ選んでもらった。


 今回は尾張氏による2000年以降の『ワーストF1マシン3選』を紹介する。

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 すべての形には意味がある。したがって、デザイナーが設計したF1マシンは成績に関係なく、どれも個性的で美しい。しかし、そこにデザイナーを無視したチーム内闘争が発生したり、デザイナーのエゴイズムが見え隠れすると、美しいはずのF1マシンはたちまち別の表情を見せる。

■ケータハムCT05(2014年):小林可夢偉が直面した極限状況

小林可夢偉(ケータハムCT05・ルノー)
2014年F1ロシアGP 小林可夢偉(ケータハムCT05・ルノー)

 2014年のケータハムCT05は、そんな1台だった。


 この年のF1はエンジンに代わってパワーユニット(PU)が導入されただけでなく、車体に関しても大幅なレギュレーション変更が行われた。その中でノーズ先端の高さに関する規則変更に対するため、F1マシンの多くが先の細いノーズ形状を採用してきた。ケータハムのCT05も、その中のひとつだった。


 だが、冒頭に書いたように、すべての形には意味があり、先の細いノーズ形状も好き嫌いはあれど、醜いという評価は妥当ではないと感じている。なぜなら、F1マシンは見た目が美しいことが重要ではなく、速く走るためにデザインされるべきだからだ。事実、ケータハム以外にもマクラーレン、フォース・インディア、ザウバー、トロロッソ、ウイリアムズが、同様のデザインをノーズに施してレギュレーションをクリア。ウイリアムズは、コンストラクターズ選手権3位に躍進した。

小林可夢偉(ケータハムCT05・ルノー)
2014年F1ロシアGP 小林可夢偉(ケータハムCT05・ルノー)

 その中で筆者がCT05に醜さを感じたのは外見ではなく、チーム内の混乱によって、マシンの開発が疎かになったからだった。この年、チームが創設された2010年以来オーナーを務めていたトニー・フェルナンデスが、チームをスイスと中東の投資家コンソーシアムに売却。元HRTのチーム代表だったコリン・コレスがアドバイザー役としてチームに加わり、事実上実権を握っていた。


 コレスはケータハム入りすると従業員を次々と解雇。日本GP直前には、イギリスの高等法院によって、チームの財産の一部を差し押さえられるなど、まともに戦える状態ではなかった。ロシアGPでは小林可夢偉が乗るマシンのスペアパーツが差し押さえられて持ち出せなかったため、サーキットの現場で故障したパーツを修理していたほどだった。それを知った可夢偉はSNSでこう綴っていた。


「恐ろしい! サスペンションの損傷が昨夜見つかったけど、スペアがないのでカーボンで巻き巻きの修理をした! 毎回チェックするけどこれで走ってくださいと言われても恐ろしすぎる! もう帰りたい。。。まだこれから練習と予選とレースあるんだぜ。。。真剣に悩み中。。。レーサーとして走ったほうがいいのか? 安全に辞退したほうがいいのか。。。因みにあと15分で走ります」


 ロシアGPの後、チームは破産。ロシアGPで可夢偉が見た、修理されたマシンには、F1マシンという輝きはなかった。

ケータハムF1チームの集合写真
2014年F1イタリアGP ケータハムF1チームの集合写真

■メルセデスW13(2022年):ゼロ・ポッドに固執し、無冠時代に

2022年F1第1戦バーレーンGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2022年F1第1戦バーレーンGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 2022年のメルセデスW13は、デザイナーたちのエゴによって、時代遅れともいえる代物となってしまった。


 この年のF1は新しいレギュレーションにより、グラウンドエフェクトカーが導入された。チームによってさまざまなアプローチが取られ、メルセデスは空気抵抗軽減を狙って、サイドポッドの体積を大きく減らした“ゼロ・ポッド”と呼ばれるデザインを採用した。

2022年F1第9戦カナダGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2022年F1第9戦カナダGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 しかし、ゼロ・ポッドを機能させるためには車高を下げなけれはならず、これがポーパシングという車体が激しく上下する現象を起こし、メルセデスはパフォーマンスを思うように上げられなかった。

2022年F1第8戦アゼルバイジャンGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2022年F1第8戦アゼルバイジャンGP レース後、身体へのダメージを訴えるルイス・ハミルトン(メルセデス)

 ライバルチームが2022年に2冠に輝いたレッドブルの空力コンセプトへシフトしていく中、2022年にゼロ・ポッドを導入した際にテクニカルディレクターを務めていたマイク・エリオットは2023年もこのコンセプトに固執したW14を開発。そのため、2014年から2020年までダブルチャンピオンに輝いていたチームの立ち直りは大きく遅れ、2022年から2025年まで無冠に終わった。

2023年F1第1戦バーレーンGP メルセデスF1のテクニカルディレクター、マイク・エリオット
2023年F1第1戦バーレーンGP メルセデスF1のテクニカルディレクター、マイク・エリオット

 エリオットは2023年シーズン途中にジェイムズ・アリソンと交代する形でテクニカルディレクター職を解かれ、その年の10月に退社した。

■アストンマーティンAMR26(2026年):メディアを誘導し、責任逃れを図った代表

ランス・ストロール(アストンマーティン)
2026年F1第1戦オーストラリアGP ランス・ストロール(アストンマーティン)

 2026年のアストンマーティンの新車AMR26は、失敗するはずがないコンビが組んで作られたマシンにも関わらず、開幕から苦戦を強いられている。


 稀代の天才デザイナー、エイドリアン・ニューウェイと2021年からドライバーズ選手権4連覇に大きく貢献したホンダがタッグを組んだとき、生み出されるマシンは成功が約束されているとだれも信じていた。しかし、現実は3戦を終えて、予選で一度もQ1を突破できていない。


 その原因は車体デザインのコンセプトにあると感じている。これまでのF1はコーナーリング速度の高さがタイムに直結していた。そのためには、コーナーでダウンフォースを稼ぎ、ストレートで空気抵抗を軽減する効率の良い空力が重要だった。

 ところが、2026年のF1はパワーユニットの出力がICE(エンジン)と電気でそれまでの80:20から50:50となり、さらに直線区間で空気抵抗を低減するために『ストレートモード』を常時使用できるため、いわゆる“効率の良い空力”は必ずしも重要ではなかった。空力を追求するよりも、いかにコーナーで電気を充電して、ストレート区間でエネルギーを放出するかという車体とパワーユニットのパッケージングが重要となっていたのだ。


 そのような状況にも関わらず、ニューウェイがデザインしたAMR26は2025年までと同じように空力に特化したデザインとなっていた。それはライバルチームが車体が前傾するハイレーキからフラットレーキにコンセプトを変えたにも関わらず、アストンマーティンがいまだにハイレーキにこだわっていることにも表れていた。


 ただし、筆者がAMR26に失敗作という烙印を押すのはパフォーマンスだけが理由ではない。その理由をあたかもホンダに起因しているかのように、ニューウェイがメディアを誘導しようとしたことだ。

 しかし、いまでは車体にも課題があることはチーム関係者も認めている。現在のF1は車体とパワーユニットのパッケージングが重要だ。それを成功させるためには、それぞれのエンジニアがいままで以上に密になることが求められる。その関係を築くことができていない様子がAMR26を見ていると強く感じる。


 ただし、ケータハムやメルセデスのW13と、アストンマーティンのAMR26が決定的に違うのは、ニューウェイにはまだ挽回するチャンスは残されているということだ。このレギュレーションは始まったばかり。マクラーレンが4年後にコンストラクターズ選手権を制し、5年後にダブルタイトルを獲得したように、アストンマーティン・ホンダが栄冠を勝ち取る日が来ることを願っている。



(text : 尾張正博)


レース

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6位オラクル・レッドブル・レーシング16
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8位アウディ・レボリュートF1チーム2
9位アトラシアン・ウイリアムズF1チーム2
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