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真の“レーサー”であることを証明しつづけるフェルスタッペン/スペイン人ライターのF1コラム

2025年10月13日

 F1シーズンの合間に耐久レースに出場し勝利を飾り、F1以外でもその才能を証明したフェルスタッペン。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがフェルスタッペンのレース活動について語る。
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 先月、マックス・フェルスタッペンは、なぜ自分が特別なレーシングドライバーなのかを世界に証明した。豊かなドライビング技術以外にも、彼はライバルと容赦のないドッグファイトをし、どのチームメイトにとってもドライビングがほぼ不可能なクルマを扱う際に、正確な操作を行うということだ。このオランダ人ドライバーは、ドイツの伝説的なサーキットでのみ開催される耐久シリーズである、ニュルブルクリンク・ロングレース・セリエのシーズン最後から2番目のレース『NLS9』に出場した。彼はエミル・フレイ・レーシングが擁するフェラーリ296 GT3を、相棒のイギリス人ドライバーのクリス・ルラムとドライブしたレースデビュー戦で優勝を飾った。


 もちろん、耐久レースの専門家なら誰でも、24時間レース以降のNLSイベントはそれより前のイベントとはまったく異なるものであることを知っているだろう。そして、ニュルブルクリンクに出場できたであろう残りのトップクラスのドライバーは、FIA 世界耐久選手権富士6時間耐久レースに出場していた。つまり多くの点で、おそらくいつもより少し弱いフィールドを相手にフェルスタッペンはレースをしていたことになる。だがそれでも競争力のあるチームが数多く参戦し、2度の世界チャンピオンに挑戦状を叩きつけただろう。


 しかし、これがGT3マシンでの初めての本格的なレース経験であったにもかかわらず、プラクティスでもレース中でも、フェルスタッペンはコースにいたどのドライバーよりも明らかに速いことを証明した。もちろん、彼はすでにポルシェ718ケイマンGT4 RSクラブスポーツで以前のイベントに参加しているし、オープンテストデー中にフェラーリ296 GT3をテストしたこともあったが、それでもこれはこのクラスにおける彼の競技デビューであり、見事にテストに合格したことになる。


 さらに掘り下げると、これは何を意味することになるのだろうか? F1ドライバーが他のレースに参加することは非常に珍しいことだと私たちは知っている。だからこそ、フェルナンド・アロンソが10年近く前にインディ500に参戦し、その後トヨタからまずWECとル・マン24時間レース、そして後にダカール・ラリーに参戦したことは、大きな出来事だったのだ。しかし、当時もこのスペイン人ドライバーはF1で勝利を飾ることができていなかった。だから、現世界チャンピオンであり理論上は2025年のタイトル候補であるフェルスタッペンがこれを成し遂げたことは、おそらくさらに特別なことだろう。しかし、なぜだろう?


 フェルスタッペンの活動を理解する上で参考になるのが、WRCで2度世界チャンピオンに輝いたカッレ・ロバンペラだ。オランダのスター選手と同様に、トヨタのエースドライバーであるロバンペラも、幼いころからトップに立つことを目標に、自身も元ドライバーである父親から指導を受けてきた。フェルスタッペンとロバンペラはともに世界チャンピオンになったが、フィンランド人ドライバーは昨年特別なことをした。フルタイムのエリート競技の過酷な要求に疲れたロバンペラは、パートタイムでWRCシーズンに参加するという条件付きではあったが、1年間“休暇”を取ることを決めたのだ。2022年と2023年のチャンピオンは“わずか”7回のラリーに参加し、4勝を挙げて総合7位につけたが、さらに重要なのは、世界ラリー選手権以外でも楽しんだことだ。


 結果として、2024年にロバンペラはポルシェ・カレラカップ・ベネルクスに出場し、3回の優勝を飾ってサーキットでのスキルを発揮したほか、競争の激しいポルシェカレラカップ・イタリアにゲスト参戦した。彼はレッドブルリンクで2012年のレッドブルF1マシンをテストし、今年のドバイ24時間レースにも出場した。聞いたことのあるような話ではないだろうか? そのはずだ。なぜなら、これは最近フェルスタッペンが示しているある種の姿勢だからだ。このオランダ人ドライバーは、F1に長く留まるつもりはないとすでに述べているが、彼が真のレーサーであることは疑いの余地がない。彼はどんなクルマに乗っても、速くドライブして他のクルマと競争するのが大好きであり、機会があれば必ずそうするだろう。


 実際、昨年フェルスタッペンはレッドブル・レーシングのアドバイザーであるヘルムート・マルコと諍いを起こしている。マルコは、フェルスタッペンがF1レースの週末にシミュレーションレースイベントに参加することを禁じた。彼のドライバーの本業であるレースへの集中力が奪われることになると反対したのだ。マルコの言うことにも一理あるだろうが、仮想世界であろうと現実世界であろうと、フェルスタッペンがレースを愛していることは否定できない。実際のところ、ニュルブルクリンクを走る楽しさをフェルスタッペンに教え、最終的にそこでの実際のイベントに参加するきっかけを作ったのはマルコだ。


 実はドクター・マルコ自身も、フェルスタッペンが2026年にニュルブルクリンク24時間レースに出場したいのであれば、それは彼の自由であり、彼に決定権があるということをすでに完全に明確にしている。そして、9月に目にしたことからすると、彼がこの伝説のレースで優勝するためにオールスターのクルーを集めようとする可能性は非常に高い。現役F1ドライバーがこのレースで最後に優勝したのは1973年で、ニキ・ラウダがハンス・ペーター・ヨイステンとBMW 3.0 CSLを駆ったときのことだったが、これはそれぞれ8時間の2レースに分けられ、深夜に8時間の休憩をとるという珍しいイベントだった。1989年に優勝したイタリア人ドライバーのエマニュエル・ピロも事実上は数に入れられるが、彼は当時フルタイムのF1ドライバーではなかった。


 さて、今日の終わりに、小さいながらも非常に示唆に富む逸話がひとつある。フェルスタッペンは、2025年のNLSシーズンの第9戦にして最後から2番目のレースである『ADACバルバロッサプライズ』で優勝したことで、1972年の記録に並んだ。ジャッキー・イクス以来となる、別のシリーズで2レース連続優勝を果たした現役F1ドライバーとなったのだ。イクスは、ニュルブルクリンクで開催されたドイツGPで優勝する1週間前に、当時世界スポーツカー選手権の一部だったワトキンス・グレン6時間レースで優勝した。どちらの場合も、イクスはフェラーリで勝利を挙げており、フェルスタッペンの将来はフェラーリにあるかもしれないという声もある。しかし、その話はまた別の日に……。



(Alex Garcia/Translation: AKARAG)


レース

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6位ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム72
7位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム68
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