2022年F1第15戦オランダGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

【】レッドブル&HRC密着:予選前の微調整で、マシンは“完成された”状態に。セクター2での遅れも取り戻したフェルスタッペン

9月4日

 1週間前のベルギーGPで圧倒的な速さで予選を制したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。しかし、今週末のオランダGPの舞台はまったく特性が異なるザントフォールト・サーキット。フェラーリに向いていると思われたこのコースで、フェルスタッペンは初日にトラブルに見舞われて、8番手に終わった。

「金曜日は本当に大変だった。1回目のフリー走行でほとんど走行できなかったから、2回目の1時間のセッションしかなかったのでマシンを大きく変えることはできなかったからだ」

 通常、初日のプログラムは1回目のフリー走行の後に、2回目のフリー走行に向けてセットアップを変更し、セッションに臨む。2回目のフリー走行が始まったら、最初の5〜6周の走行で変更したセットアップを評価して、微調整を加えた後に予選シミュレーションを行い、最後に2種類のタイヤでロングランをする。

 ところが、1回目のフリー走行をほとんど走っていないフェルスタッペンは、2回目に向けてセットアップ変更がほとんどできない状態で、予選シミュレーションと2種類のタイヤでのロングランを行わなければならなかった。8番手に沈んだのはそのためだった。

 したがって、2回目のフリー走行をもとに大きくセットアップ変更を行う2日目になれば、本来のスピードを取り戻すことは想像できた。フリー走行3回目では3番手に浮上。しかし、トップタイムをマークしたシャルル・ルクレール(フェラーリ)とは0.161秒差あった。このザントフォールトは全長が短いため、このコンマ1秒差はほかのサーキットに比べて、より大きい。しかし、フェルスタッペンは焦らなかった。

「フリー走行3回目の後、予選に向けてマシンの微調整を行ったんだ」と言うフェルスタッペンは、予選の最中にもマシンと対話し、どうすればマシンからポテンシャルを最大限発揮できるかを探求し続けた。

 ポイントとなったのは、Q3のアタック。1回目のアタックで、ルクレールが1分10秒456で暫定ポールポジションに就いたのに対して、フェルスタッペンは1分10秒515と0.059秒。一気にルクレールとの差を縮めてきた。ルクレールは暫定ポールポジションに立ってはいたが、プレシャーはルクレールのほうが大きかったに違いない。

 迎えた最後のアタック。ルクレールはセクター2の9コーナーと10コーナーで体勢を崩して失速。逆にオレンジ軍団の熱い声援を受けてコースインしたフェルスタッペンは、「セクター2でチャールズ(シャルル)に対して遅れていたので、あそこが重要なポイントになると思い、最後のアタックではリスクを恐れずに攻めていった」と、セクター2で区間ベストを叩き出して、セクター3へ。最後のセクターも自己ベストでまとめて、ルクレールを逆転してポールポジションを獲得した。

レッドブル&HRC密着
予選Q3の最後のアタックに向かうフェルスタッペン

 予選後、フェルスタッペンはフェラーリに有利だと思われていたザントフォールトでポールポジションを獲得した理由を次のように語った。

「このクルマは完成されている」

 しかし、その完成されたマシンを操っているのはフェルスタッペンであり、そのフェルスタッペンは完成されてもなお、成長を続けている。

 クリスチャン・ホーナー代表は言う。

「頂点に立ったドライバーというのは、プレッシャーのなかでも力を発揮することができるものだが、今日のマックスはまさにそれだった。彼はいまも経験を積んでいる。彼は成熟し、さらに成長し続けている」

 いまのフェルスタッペンをだれも止めることはできない。

レッドブル&HRC密着
ザントフォールト・サーキットには今年も大勢の“オレンジアーミー”が詰め掛けた



(Masahiro Owari)