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【F速プレミアム】【王者フェルスタッペンの戦い/F1コラム】開幕戦のトラブルから巻き返し、2022年もタイトル争いの筆頭に

4月7日

 2022年シーズンのF1開幕戦バーレーンGPでレッドブルのマックス・フェルスタッペンはリタイアを喫したものの、続く第2戦サウジアラビアGPでは、フェラーリのシャルル・ルクレールとバトルを繰り広げレースを制した。このコラムでは、スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーがフェルスタッペンの週末を振り返った。

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 フォーミュラワンは浮き沈みの激しい世界だ。好調な時とそうでない時の落差は、おそらく他のどんなスポーツよりも大きい。さらに新世代のマシンへの移行により、結果の予想はかつてなかったほど難しくなっている。

 F1の新世界王者マックス・フェルスタッペンは、フェラーリのシャルル・ルクレールとのスリリングな一騎打ちの末にサウジアラビアGPを制した。その戦いは、彼らのバーレーンでのバトルの続編とも言うべきものだった。

 グランプリ通算21勝目(これでキミ・ライコネンと肩を並べたことになる)をあげたフェルスタッペンは、こう語っている。「最後の2〜3周は予選のアタックラップみたいだった。スゴいレースだったよ」

 フェルスタッペンとルクレールは、カート時代からバトルを繰り広げてきた。まだ幼さの残るマックスとシャルルが、互いに相手のドライビングエチケットがいかにヒドいかを指摘しあっている微笑ましい動画も、ネット上を探せばいくつも出てくる。しかし、バーレーンとサウジアラビアでのドッグファイトは、彼らが口を揃えて言うように「とてもタフだがクリーン」なものだった。

 フェルスタッペンの脳裏をカート時代の思い出がよぎることはなかったのだろうか。彼はニンマリと笑いながら答えた。「ああ、カートならサイドポッドを擦りつけたり、軽く押し合ったりすることもできた。だけど、F1となるとそうもいかない。そういうバトルは過去に充分やってきたしね」

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 マックスは開幕からの2戦で戦い方を学んだ。「今年の新しいクルマでは、これまでとは違う攻め方をしないといけない。ライバルの背後に長くとどまれるようにはなったけど、それは同時に相手も簡単に反撃できることを意味するんだ。サクヒールでもジェッダでも、何度かシャルルを抜こうと仕掛けたけど、すぐに彼の逆襲にあって抜き返されてしまった。つまり、以前よりも頭を使って、計画的にオーバーテイクを試みる必要がある。すぐに抜き返されないようなやり方でね。少し先まで考えないといけないということだよ」

 超高速のジェッダ・コーニッシュ・サーキットでの勝利により、バーレーンの開幕戦を無得点で終えたフェルスタッペンは、ドライバーズランキングで3番手に浮上した。選手権リーダーのルクレールとは20ポイント差だ。マックスのサクヒールでのレースは、3つのトラブルによって損なわれた。

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「まず始めに、ブレーキをいたわらなければならなくなった。シャルルを追っている間に、温度が上がりすぎたんだ。その後、今度はステアリングがどんどん重くなるように感じた。最初はハイドロリック系のトラブルを疑ったよ。だけど、実際には最後のピットストップで、クルマを地面に降ろした時にステアリングロッドが変形したためだった」

 そんな状態のクルマで彼がレースを完走できたかどうかは、誰にも知るすべがなかった。結局のところ、また別のトラブルでリタイアを強いられたからだ。燃料システム内に負圧が生じて、タンクには充分な量の燃料があったにもかかわらず、エンジンに燃料が供給されなくなってしまったのだ。僚友セルジオ・ペレスのクルマに起きたのも、まったく同じ現象だった。

 キャリア通算6勝を記録した元グランプリドライバーで、ミック・シューマッハーの叔父にあたるラルフ・シューマッハーは、開幕からの2戦を見て興奮を隠せない様子だった。「私にとって一番強く印象に残ったのは、この新世代のクルマではドライバー同士の接近したバトルが可能になったことだ。とても明るい材料と言えるね。もうひとつ強く印象付けられたのは、今年の選手権がフェラーリのシャルルとレッドブルのマックスのタイトル争いになりそうだということ。彼らの戦いはクルマの速さでもドライビングの才能でも優劣をつけがたい。今後のグランプリはどれも見応えのあるものになりそうだ」

(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)