【】ホンダ田辺TD初日会見:「F1に居続けたい気持ちと、実際にできるどうかの乖離は大きい」2022年以降の活動は未定
12月12日
2020年F1第17戦アブダビGPの初日フリー走行は「両セッションともトラブルフリーで走り切れた」と、順調さをアピールしたホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクター。今季最後のFIA金曜会見に出席した際には、来季のパワーユニット(PU)開発の方向性、そして「ホンダ撤退後、田辺TD個人はどうするのか」という思いがけない質問も出た。それについての改めての言明には、本人の少し揺れている心境が垣間見えたように思えた。
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──最終戦最後のフリー走行は、順調に推移したのでは?
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):2回のセッションとも、トラブルフリーで走り切れました。ただパフォーマンス的には車体、パワーユニット(PU)ともに、まだまだやることは多いです。最適化を進めて、予選、レースに臨むつもりです。
──前回のバーレーン、そして今日も、他チームではMGU-Kと思われるトラブルがいくつか出ていました。シーズン終盤になってこの種のトラブルが繰り返されるのは、何か理由があるのでしょうか。
田辺TD:はっきりはわかりませんが、使い続けてきたパワーユニットが疲弊していることは十分想像がつきます。ホンダも3基をやりくりしているなかで、その疲弊具合をチェックしています。他メーカーも当然それをしているはずですが、(疲弊が)ピークに達しているということなんでしょうね。
──金曜会見では来季のパワーユニットについての質問がありましたが、現在のパワーユニットの開発継続と、新たな改良をミックスすると答えていました。来季に向けての課題としては、ERSのデプロイ、特にレース中の連続周回でメルセデスに比べて弱いと話していましたが、そのあたりの改良は、今季型パワーユニットを改善していくのでしょうか。
田辺TD:会見では「まったくの新型を投入するのか」という質問だったと思うのですが、まったくの新型かと言われれば、そうではない。かといって既存パワーユニットの改良で済ますのかと言われれば、それも正確ではありません。まったく新しいパーツもあれば、継続するものもあります。ここまで何年か背負い続けている弱点の克服に、既存パワーユニットのコンセプトでは頭打ちになっている部分を何とかする。パフォーマンスを上げれば、信頼性に問題も出てくる恐れがあります。来季は23戦あるわけで、信頼性のハードルはさらに上がる。パフォーマンスと信頼性のバランスをとりながらの開発が、来季はいっそうシビアになるでしょうね。
──金曜会見では、「(ホンダ撤退後の)2022年以降はどうしますか」という思いがけない質問が出て、驚いていましたよね。2050年のカーボンニュートラルに向けて研究を続けるという答えをするかと思ったのですが、「レッドブルから何かあれば、その時考えます」という答えでした。実際のところ、どうするつもりなのでしょう。
田辺TD:正直なところ、今は何も考えていないです。F1はそんなに簡単な世界じゃないですし、何も決まっていません。
──田辺さん自身は、この先もF1に残りたい気持ちはありますか?
田辺TD:いやあ……難しい質問ですね。私がこういう仕事をやっていられるのはホンダに入ったからです。さらにいうならテクニカルディレクターという肩書でやっていますけど、背後で膨大な数の人々が支えてくれているからこそ、大きなプロジェクトのなかでできているわけです。ヨーロッパやアメリカの異文化のなかで育ってきた技術者たちとは、ちょっと素性は違うのかなと。居続けたいという気持ちと、実際に居続けられるかどうかの乖離は、大きいと思います。居続けたいと言ったとして、はたして何ができるのか。そこは非常に難しいと思います。
(取材・まとめ 柴田久仁夫)
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