2015.10.13

【レースの焦点】時には非情、時には微笑みを


ファイナルラップで、バルテリ・ボッタスのインを狙ったキミ・ライコネンが最後のドラマを演出した
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(c)LAT


 今宮雅子氏が描く、ロシアGPの焦点。ほとんど走れずに迎えたことで、先の読めない展開となったグランプリ。どんなに完璧を積み重ねても起きてしまう非情なトラブル、最後の最後まで繰り広げられた表彰台をめぐる争い、そして恐ろしい事故からの帰還──ソチを彩ったヒーローたちに光を当てる。

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 フリー走行でデータを収集できたのは、実質FP3の35分だけ。誰もが未知の要素を抱えたまま臨んだ結果、活気のあるレースになった。一方で、19台がチェッカーフラッグを受けた(20台全車が完走扱いとなった)日本GPのあと、ソチでチェッカーを受けたのは13台。リタイア理由はそれぞれ異なるが、雨のイギリスGP以来の低い完走率も、おそらく走行不足を遠因としている。

 限られた周回数でも、うまくマシンを仕上げ「ほぼ完璧」な予選でポールポジションを獲得したニコ・ロズベルグは、スタート直後、スリップストリームを利用してスピードを得たルイス・ハミルトンにもひるむことなく1位のポジションを堅持。しかし最初のセーフティカーがピットに戻ったあとにスロットルダンパーのトラブルを抱え、あえなく7周でリタイアした。レースは時として、こんなに非情──この週末のために注いだ努力は何の収穫も、もたらしはしなかった。コンストラクターズタイトルを祝うチームのなかにいて、悔しさはいっそう痛切になったに違いない。

 予選の敗北以来、可能な限りの攻撃パターンを頭に描いてきたハミルトンにとっても、チームメイトのリタイアはあまりに呆気ない幕切れ。しかし7周目のターン2で前に出たときにはニコがミスをしたのだと思っていたし、レース後も「彼に何が起こったのか、正確には知らないんだ」と言った。それよりも、快適なマシンを操縦して自在にレースをコントロールする喜びに身をまかせた。唯一の小さな不安はレース終盤、リヤのダウンフォースが不安定になったこと。しかし縁石から遠ざかりペースを落として走行した最後の5周さえ「心から幸福を味わった」と言う。4戦を残してドライバーズ選手権2位のセバスチャン・ベッテルには66ポイントのリード。次のオースティンでベッテルを9ポイント、ロズベルグを2ポイント上回る成績を上げると、2年連続のタイトルが決定する。

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