“F1史上最速の市街地コース”のサウジアラビア。中東最高額と言われる開催権料は100億越えの噂/サーキット紹介第5回
1年間で20以上の開催国を訪れる2026年シーズンのFIA F1世界選手権。グランプリを開催するサーキットは、F1が選手権として初めて開催された1950年からカレンダーに名を連ね続ける伝統あるサーキットから、比較的新しい市街地コースまで、さまざまな歴史やキャラクターを持っている。そんなサーキットをひとつずつ紹介していくこの連載の5回目に扱うのは、ジェッダ・コーニッシュ・サーキットだ。
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・名称:ジェッダ・コーニッシュ・サーキット
・全長:6.174km
・コーナー数:27
・ラップレコード:1分30秒734(2021年)/ルイス・ハミルトン(メルセデス-AMG・ペトロナスF1チーム)
F1バーレーンGP同様、中東情勢の悪化によって、4月下旬に予定されていたレースが中止となったサウジアラビアGP。中東でのF1開催は、2004年のバーレーンGP、2009年のアブダビGP、そして2021年のカタールGPとともにサウジアラビアGPで4つ目となった。
サーキットがあるジェッダは、サウジアラビアの首都リヤドに次ぐ第2の都市。ただし、経済的にはサウジアラビア随一で、商業と物流の拠点となっている。またイスラム教最大の聖地であるメッカへ巡礼するための空と海の玄関口でもあり、イスラム暦の12番目の月以外にも多くの巡礼者が訪れる。
グランプリの舞台となるジェッダ・コーニッシュ・サーキットは、ジェッダの海岸沿いの遊歩道『コーニッシュ』に位置する市街地コース。コーニッシュとは、フランス語でニースからモナコ、マントンへと続く断崖沿いを走る海岸道路を意味する。この道路は地中海に面した美しさがある反面、断崖沿いであり、一歩間違えれば海に落ちかねないため、緊張感を持って運転しなければならない。
ジェッダ・コーニッシュ・サーキットもまた、全長6.175kmのなかに27個(左コーナー16個/右コーナー11個)ものコーナーが点在し、コースのほとんどがウォールに囲まれているという点で、南フランスのコーニッシュを思わせる。平均速度は時速250kmを上回り、『F1史上最速の市街地コース』と言われている。


2004年以降、F1が中東で多く開催されている理由は、開催権料の高さだ。ヨーロッパラウンドやヨーロッパ以外の伝統的なグランプリの多くの開催権料が20〜40億円と言われているなか、中東はその約2倍とも言える高額の開催権料を支払って、F1を次々と誘致してきた。その中東のグランプリのなかでも最も高いと言われているのが、このサウジアラビアGP。一説には年間100億円以上の開催権料を支払っているという。
しかし、この高すぎる開催権料と引き換えに、F1は別の問題を抱えることになる。2度目の開催となった2022年には、フリー走行中にサーキット近郊の石油関連施設がイエメンの親イラン武装組織フーシ派によってミサイル攻撃を受けたにも関わらず、F1は予定通りグランプリを継続した。
開催を継続するかどうかに関しては、F1と国際自動車連盟(FIA)、プロモーター、そして全ドライバーがミサイル攻撃を受けた日の深夜に4時間にもわたるミーティングを行った。多くのドライバーから開催継続を懸念する声が聞かれ、数人のドライバーは、レースを待たずにジェッダを離れる決意を固めていたとも言われている。それでも、グランプリが全ドライバーによって継続された裏には、土曜日の予選と日曜日の決勝レースの参加を拒否すれば、出国が困難になる可能性があるというプレッシャーがかけられたとも言われている。

今年は、2022年の状況をはるかに超えていたため中止となったが、中止によって本来得られるはずだった開催権料を手にできなくなるという経済的損失が発生した。
サウジアラビアGPは4月中の開催は断念したものの、いまだシーズン後半に開催することを望んでいると報じられている。果たして、F1はどうするのか。サウジアラビアGPとF1の未来は、中東の地政学的状況にかかっている。


