【】記者を追い出したフェルスタッペンと、世界トップの社交の場で配慮を見せたレッドブル【チーム・フォーカス/F1第3戦】
4月9日
2025年までF1日本GPで4連勝していたオラクル・レッドブル・レーシング。しかし、今年の鈴鹿では、その4連勝を成し遂げたマックス・フェルスタッペンの言動に振り回される週末となった。
事件は、日本GPの木曜日にレッドブルのホスピタリティハウスで起きた。レッドブルが設定したメディアセッションに姿を現したフェルスタッペンは、イギリスの『ガーディアン』紙のジャイルズ・リチャーズ記者がいることを確認すると、フェルスタッペンは、リチャーズ記者がホスピタリティハウスを出るまで取材をスタートしない姿勢を貫いた。
リチャーズ記者が「アブダビでの質問が原因か?」と尋ねると、フェルスタッペンは「そうだ」と言い、リチャーズ記者が「アブダビでのスペインGPに関する質問が原因か?」と確認すると、フェルスタッペンは「そうだ」と言って退去するよう命じたため、リチャーズ記者はその場を後にした。
2025年の最終戦アブダビGPはフェルスタッペンが優勝したが、チャンピオンシップリーダーのランド・ノリス(マクラーレン・マスターカード・フォーミュラ1チーム)が3位に入ったため、ノリスがチャンピオンに輝き、フェルスタッペンは2点差でタイトルを逃した。そのため、優勝したフェルスタッペンはレース後の国際自動車連盟(FIA)による記者会見に出席した。その会見の終盤、リチャーズ記者がスペインGPでのペナルティに関する質問をした。そのときのふたりのやりとりはこうだった。
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リチャーズ記者:「マックス、ランドにわずか2ポイント差で敗れました。スペインGPでのジョージ・ラッセル(メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム)とのインシデントについて、いまどう考えていますか? 振り返って後悔はありませんか?」
フェルスタッペン:「今シーズンで起きた他のことは全部忘れてるんだね。君はバルセロナのことしか言わない。そう来ると思っていたよ。いま、君はバカみたいにニヤニヤしてるけど。どうだろうな。ああ、結局はレースの一部だ。経験から学ぶんだ。チャンピオンシップは24戦のうちの1戦に過ぎない。後半戦では早めのクリスマスプレゼントもたくさんもらっている。そうしたことにも、少しは触れるといいかもしれないな」

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こう言うと、フェルスタッペンは立ち上がり、会見は強制的に終了。重苦しい雰囲気だけが会見場に残った。
リチャード記者はその会見でフェルスタッペンがとった態度にも驚いたが、そのことを3カ月以上経っても忘れず、怒りを持ち続けていたことに驚いたという。「スペインGPで、フェルスタッペンはラッセルと接触し、10秒のペナルティを受け、9ポイントを失った。わずか2ポイント差で逃したのだから、あの出来事についてどう感じているかはどうしても聞かなければならない質問だった。おそらく、私が尋ねなくても誰かが質問していただろう。でも、フェルスタッペンは不機嫌になった」と、後日カーディアン紙に綴っている。
グランプリ期間中のサーキットでは、ドライバーはコース上だけでなく、コース外でもその振る舞いをFIAは厳しくチェックしている。フェルスタッペンの態度について、FIAに尋ねると「FIAの公式会見ではそのような態度をとることは許されないが、各チームが開く記者会見で起きたことに関してはFIAの管轄外で、チームが責任を負うことになっている」という回答が返ってきた。
ガーディアン紙はイギリスでも名門紙で、リチャーズ記者はメディア仲間からも尊敬されているベテランということもあり、イギリスに拠点を置くレッドブルも動く。メディアセンターにレッドブルの広報が訪れ、リチャーズ記者と非公式の会談を行った。その詳細は明らかになっていないが、特にレッドブルからリチャーズ記者に対して謝罪はなかったものの、チームとしてはリチャーズ記者にはフェルスタッペンの会見に出席する権利があることを確認したという。

リチャーズ記者も「時には、ドライバーに気まずい質問をしなければならないこともある。それがこの仕事に従事している者の宿命であり、責任だ。ただ私はいまでもフェルスタッペンを尊敬しているし、今後よりよい関係を築けることを願っている」(ガーディアン紙より)と、フェルスタッペンの取材に意欲を見せている。
F1はマシンを使うスポーツであると同時に、世界各国からトップ企業が集う社交場でもある。世界の頂点の社交場では、時として波風が立つこともある。トップチームであれば、そのときトップチームに相応しい対応が求められる。レッドブルの広報は悪戯にフェルスタッペンのプライドを傷つけることなく、メディアへもしっかりと気配りを見せ、今回の1件をうまく収めた。昨年まで4連勝してきたチームの底力を感じた1戦だった。
(Text : Masahiro Owari)

