【】流れと実力で成し遂げた19歳アントネッリの初優勝。ハミルトン復活の要因と次戦日本GPの焦点【中野信治のF1分析/第2戦】
3月21日
上海インターナショナル・サーキットで開催された2026年第2戦中国GPは、19歳のアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が初優勝を飾り、史上最年少ポール・トゥ・ウイン記録を更新しました。アントネッリの初優勝、フェラーリ移籍後初表彰台獲得となったルイス・ハミルトン復活の要因、そして次戦日本GPの見どころなど、元F1ドライバーでホンダの若手ドライバー育成を担当する中野信治氏が独自の視点で綴ります。
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予選・決勝の流れが味方した感じもありますが、アントネッリは19歳とは思ぬほど落ち着いた戦いぶりを見せてくれました。予選Q3序盤にポールポジション最有力候補のジョージ・ラッセル(メルセデス)がバッテリーとギヤのトラブルに見舞われ、ラッセルは100パーセントのポテンシャルを発揮できない1アタックでのポールポジション争いとなりましたが、それまでのアントネッリの走りを見るに、たとえラッセルにトラブルがなくとも、メルセデスのふたりは予選から五分五分の戦いだったでしょうね。
アントネッリは、予選前に行われたスプリントでスタート失敗、アイザック・ハジャー(レッドブル)との接触(アントネッリに10秒タイムペナルティ)というミステイクが続きましたが、予選・決勝では落ち着いた素晴らしい走りを見せました。個人的には、スプリントの失敗という経験が、予選・決勝での落ち着きに繋がるポジティブな方向に働いたのではないかと感じています。

また先述のとおり、決勝の流れがアントネッリに味方したことも初優勝に大きく影響しました。10周目にランス・ストロール(アストンマーティン)がストップしてセーフティカー(SC)が導入され、このSC中に首位アントネッリ、2番手ラッセルがダブルピット(2台同時ピットイン)でミディアムタイヤからハードタイヤに履き替えました。アントネッリは首位を守りましたが、ラッセルはハードタイヤスタートでSC中もコースにステイしたフランコ・コラピント(アルピーヌ)、エステバン・オコン(ハース)に続く4番手でコースに戻りました。
14周目のリスタート後、ラッセルは暖まらないハードタイヤに苦労しました。その上、コラピントとオコンのステイ組2台の攻防に行く手を阻まれ、その隙をついたハミルトン、シャルル・ルクレール(フェラーリ)にも先行を許し、一時は6番手までポジションを下げました。フェラーリ勢を攻略したラッセルが2番手に戻ったのは29周目。この時点でアントネッリとは7.9秒ものギャップが開いており、チェッカーまでにこのギャップを覆すことは叶いませんでした。

ラッセルはリスタート後にハードタイヤの熱入れに苦労したことに加え、フェラーリ勢攻略のためにアントネッリよりもタイヤを使わざるを得ませんでした。終盤のアントネッリとラッセルのタイヤマネジメントについては、タイヤのコンディションが大きく異なるため、どちらが優れていたかといった比較はできません。ただ、もしアントネッリとラッセルのタイヤが同じ状況だった場合でも、アントネッリはラッセルと十分に戦えるペースがあったのは確かです。
また、アントネッリの戦いを語る上で欠かせないのが“ボノ”の愛称で知られる担当エンジニア/メルセデスF1のレースエンジニアリング責任者を務めるピーター・ボニントンの存在です。F1はドライバーが高い能力を持っているだけではなく、その能力をチームがしっかりと引き出さなければシリーズタイトルには届きません。今回のアントネッリの初優勝は、彼の能力や成長を証明する走りであり、ボノがアントネッリの能力を着々と引き出していることの証明に感じました。

また、フェラーリ移籍後初となる3位表彰台を獲得したハミルトンは、決勝後に実に気持ちのいい笑顔を見せてくれましたね。長年F1を見続けている私もあの笑顔を見て、ホッとしたと言いますか、嬉しい気持ちになりました。昨年の苦戦ぶりから、ハミルトンがどれほど苦しんできたのか。私もひとりのレーシングドライバーとして、その苦しみが痛いようにわかります。
戦えるポジションに帰ってきたハミルトンは『次はフェラーリのチーム内でナンバー1になる』という強い意志を感じさせる走りで、ルクレールと激しいポジション争いを幾度と見せてくれました。ルクレールとのバトルを見て『なぜそんなことをするの? チームで協力してメルセデスを追わないと』と思った方は少なくないと思いますが、あのチーム内バトルは『自分はまだ戦える』という執念をフェラーリに証明するために、ハミルトンがあえてと見せたように思います。

技術規則の大幅変更で、グランドエフェクト(車体床下のトンネルを流れる空気によって車体の下に真空状態/ベンチュリー効果が生じ、その吸引効果で車体が地面に張り付く)の影響が削減され、同時にクルマのバランスも比較的普通のレーシングカーらしくなりました。昨年までのグランドエフェクトカーはウインドウが狭い(ドライビングに対する許容が狭い)クルマで、わずかでもドライビングスタイルがウインドウから外れると、実力差以上に大きなタイムロスに繋がるクルマでした。
昨年、ハミルトンが苦しんだのは彼が遅くなったわけではなく、ハミルトンのドライビングスタイルがグランドエフェクト依存のクルマに合っていなかっただけです。そのため、ハミルトン復活の要因は、技術規則変更の恩恵を受けたからだと考えています。戦えるクルマをふたたび手にしたハミルトンが、古巣メルセデスとどのような戦いを見せるのか。ルクレールとのチーム内バトルとともに、今季の見どころになりそうです。

■日本GPの戦局を左右する鈴鹿サーキットのコース特性
(Shinji Nakano まとめ:autosport web)
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