いたずらっ子で喧嘩もするけど憎めない存在。角田裕毅がF1界随一の“愛されキャラ”になった理由と魅力
2025年の9月に公開されたF1公式SNSのテーマは『あなたの中でいつもふざけているF1ドライバーは誰?』だった。
最初の数人、例えばガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)はチームメイトの「ニコ・ヒュルケンベルグ」と答え、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は「シャルル・ルクレール(フェラーリ)」と回答。さらにオリバー・ベアマン(ハース)は「ランド・ノリス(マクラーレン)だった。
しかし、残る16人の答えは同一人物だった。そのドライバーが角田裕毅(レッドブル)だ。
F1では地元テレビ局やF1公式テレビ局がドライバーにゲームをしてもらう企画をときどきパドックで行っている。F1ドライバーの多くは自らのブランドイメージを保つために、F1ドライバーとしての殻を破らないケースが多いなか、角田はその殻を破って、F1ドライバーとは異なるキャラクターを見せてくれる。そのことをF1ドライバーたちは知っている。
2023年の日本GP直前に東京で開催されたファンイベントでこんなことがあった。ともに登壇したライバルのドライバーらに対して、司会者から日本語を伝授してほしいと言われた角田がライバルたちに教えた日本語がこうだった。
「僕たちは、みんなユウキより遅い」
そういったキャラクターが、ライバルたちにとっても、角田を弟のように感じている理由なのかもしれない。その代表格がアルファタウリ時代にチームメイトだったこともあるピエール・ガスリーだ。

かつてガスリーに「チームメイト時代にあなたたちは接触も起こしたことがあるのに、なぜ角田と仲がいいのか?」とガスリーに尋ねたことがある。そのときのガスリーの答えはこうだった。
「だって、弟のような存在だから」
2021年に角田のコーチ役を務めていたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、いまでも角田と交友を深めているほど。
要するに、いたずらっ子で、ときにはケンカもするけれど、憎めない存在──それが角田が愛される理由かもしれない。

F1ドライバーだけではない。角田はときにチーム代表やチーム首脳陣のハートも鷲掴みにする魅力を発揮する。
角田が所属していたチームにはF1界でも恐れられているふたりの大御所がいた。ひとりはアルファタウリ元チーム代表のフランツ・トストで、もうひとりは2025年12月で退任したレッドブルのヘルムート・マルコ(元モータースポーツコンサルタント)だ。
角田はふたりから叱られることも少なくなかったが、良い走り、良いレースをしたときは他のドライバー以上に褒められていたように思う。彼らにとっては孫のような存在なのだろう。ハラハラ・ドキドキして手を焼くことが多ければ多いほど、うまくいったときの喜びが大きかったのかもしれない。

角田は海外のメディアからも愛されていた。そのひとりがスイス人ジャーナリストのヴァネッサ・ゲオルグーラスだ。角田の魅力をゲオルグーラスはこう語る。
「最近のF1ドライバーは優等生が多くてコメントがつまらないんだけど、ユウキは本音を話してくれる。ときどき場をわきまえないこともあるけれど、それがいい。だから彼の囲み取材はいつも楽しい」
2021年のF1ベルギーGPのFIA木曜会見で、こんなことを角田は暴露して周囲を笑わせた。それはリモートで繋がった子どもファンからの『初めてクルマを運転したのは何歳のとき?』という質問だった。角田はこう正直に答えた。
「8歳のときだったかな。日本では少し違法だけどね」
この言葉を隣に座って聞いていたフェルナンド・アロンソは苦笑し、「それって、日本とか関係なく違法じゃん」とツッコんだほどだった。

そして、角田の最大の支持者が海外のファンだ。その理由は角田の“無線芸人”ぶりだ。イギリス人ジャーナリストのスコット・ミッチェル・マルムは「私の妻はユウキのファン」だと語り、その理由のひとつに無線を挙げた。ミッチェルによれば、角田の英語はイギリス人が聞いてもまったく問題はないほど高いレベルだという。
そこで思い起こされるのが、現在、男子バスケットボール日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバスだ。ホーバスも日本語は堪能で、選手に対する指導は通訳を入れずに日本語で行っている。そのホーバスの名台詞といえば「何してるんですか!?」という試合に飛び出すゲキだ。
アメリカ人のヘッドコーチが流暢な日本語で感情をあらわにするというギャップが、日本人にとっては見ていてどこか憎めないのかもしれない。角田もそれと同様なのではないかと筆者は勝手に想像する。
2024年のエミリア・ロマーニャGPではこんなことがあった。このグランプリはアイルトン・セナの没後30年という特別な年で、セナの母国ブラジルからセナの姪であるビアンカ・セナとパウラ・セナが訪れていた。レース前のグリッド上で彼女たちが真っ先に訪れたのが「私たち姉妹にとっての大ファン」という角田だった。
その愛されキャラがシートを失った日のレッドブル公式のSNSには『KEEP YUKI!!』のメッセージが殺到した。日本人が思う以上に、2026年の“角田ロス”は大きいかもしれない。

