2025.12.21

早くも2026年のパフォーマンスを有望視されるメルセデス。代表は噂を一蹴し「自信はない」と胸中を明かす


2025年F1アブダビテスト アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)
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 F1の劇的な技術規則の改定が2026年に迫るなか、メルセデスは予想外ではあるが馴染みのある立場に立たされている。つまり、優勝候補として目されているのだ。しかし、チーム代表を務めるトト・ウォルフに尋ねてみると、ブラックリーのチームは誇大宣伝を鵜呑みにしていないし、プレシーズンの予想について、寝る前に読み聞かせる物語のように夢中になっているわけでもない。

 F1のポッドキャスト『Beyond the Grid』に出演したウォルフは、シーズン序盤の噂は彼の自信を高める役にはまったく立っていないと明言した。それはまったく逆だという。

 プレシーズンの優勝候補と評されたことに対する反応を問われたウォルフは、「自信はまったくない」と語った。

「我々は、グラスは半分空っぽだと思い込む人間であり、決して半分満たされているとは思わない」

トト・ウォルフ代表(メルセデス)
2025年F1第24戦アブダビGP トト・ウォルフ代表(メルセデス)

■同じパワーユニットを使う『内部の敵』

 メルセデスは2014年に行われた大規模なレギュレーション刷新を極めて、スポーツを再定義する支配の時代を築いたことで有名だ。しかしウォルフは、そうした歴史が次に何が起こるかを保証することはないと主張する。

「それは内部の敵から始まる」

「マクラーレンは今年、メルセデスのパワーユニット(PU)を搭載したより優れたチームだった。だから、もしパワーユニットが優れているとすれば、我々にそう言う資格があるとは決して思わないものの、ウイリアムズ、マクラーレン、アルピーヌに勝たなければならない」

ランド・ノリス(マクラーレン)
2025年F1第24戦アブダビGP  3位でフィニッシュし、タイトルを獲得したランド・ノリス(マクラーレン)

 またウォルフは、他のチームがメルセデスにはない利点を活用できる可能性もあると主張した。

「実際のところ、彼らのうち数チームはコンストラクターズ選手権であまりよい順位につけなかったので、風洞での開発時間をより長く持てるだろう。なかには、我々がまだ気づいていないようなイノベーションを伴うものもあるだろう。だから、たとえメルセデスのパワーユニットが最強だったとしても、何も当然のことと考えることはできない」

「それに加えて、こうした噂話は常に危険だ。なぜなら、どこかのチーム、別のパワーユニットマニュファクチャラー、あるいは燃料サプライヤーの誰かが、『君たちを有利な立場に置きたいが、我々は追いついていく』と考えるからだ。だからこそ、我々は美容院で交わされるようなどんな噂話にも惑わされることはない」

ピエール・ガスリー(アルピーヌ)
2025年F1アブダビテスト ピエール・ガスリー(アルピーヌ)

■「誰も抜け穴を見つけていないとは言えない」

 メルセデスのエンジン責任者であるハイウェル・トーマスはウォルフの警告に同意し、2026年のルールブックは圧倒的なアドバンテージが生まれるのを回避するように作成されたが、どこのチームもゲームの流れを変えるような何かを発掘していないと断言することはできないと語った。

「常に可能だ。間違いなくいつでもあり得る」

「レギュレーションはそれを避けるように作られていて、それにより物事のやり方を特定の方法に制限するいくつかの制約がある」

 しかし、制約の有無にかかわらず、F1から創造性を排除することはできない。

「それがうまくいけば、誰かが先手を打つ可能性は低くなる。しかし、誰も抜け穴を見つけていない、発見されていない驚くべきことを誰も発見していないと、誰が言えるだろうか」

 トーマスは、特に大規模なルール改正が伴う新シーズン前の最後の数週間は常に不安でいっぱいだと認めた。

「12月に『パワーが足りない、信頼性が足りない、すべてのやり取りが十分ではない、それらをすべて修正するのに3カ月の時間がある』と考えなかったシーズンはなかった。おそらく今季(2025年)は、現在のPU(パワーユニット)でそう感じなかった初めてのシーズンだったと思う。しかし大抵の場合、最後の瞬間に何かのせいで窮地に陥ることがあるものだ」

ジョージ・ラッセル(メルセデス)
2025年F1第24戦アブダビGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)

 2026年、メルセデスは自社のファクトリーチームに加え、マクラーレン、ウイリアムズ、アルピーヌの3チームにパワーユニットを供給する予定だ。トーマスは、それは利点と欠点をもたらすと説明した。

「これまで示してきたように、複数のチームを持つことで、より多くのデータ、より多くの情報を得られ、より多くの距離を走行できると思う。多くのマシンがあり、エンジニアの数は4倍で、全員が集まって『これをもっとうまくできる、このやり方でもっとできる』と言う。それは非常に有益なことだ」

「しかしその裏返しとして、我々は多くのハードウェアを作らなければならず、いくつかの決定をもっと早く下さなければならない。それが裏の面だ」

 今のところ、メルセデスは期待を低く抑え、噂を遠ざけている。慎重さが正当化されるか、それとも単に戦略的謙虚さが明らかになるのかは、2026年が始まったときにわかるだろう。

カルロス・サインツ(ウイリアムズ)
2025年F1アブダビテスト カルロス・サインツ(ウイリアムズ)


(Text : autosport web / Translation:AKARAG)

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