【】マクラーレンが“まだ存在すらしない”マシンをオークションに出品。2026年型F1マシンは約18億円で落札
12月14日
ある熱心なマクラーレン愛好家が、最も熱狂的なコレクターでさえ倹約家に見えてしまうような行動を取った。まだ存在しないF1マシンに、約1150万ドル(約17億9000万円)という大金を支払ったのだ。対象のマシンは2026年型『MCL40A』で、チームが2026年の大規模な技術規則の刷新に向けて準備を進めている、まだコンセプト段階のマシンだ。
『RMサザビーズ』が最近アブダビで行ったオークションでは、こうした詳細なことは入札者の妨げにはならなかった。マクラーレンは、この種のオークションとしては初と思われる将来のF1マシンの事前販売を行ったが、実際には、幾重もの制約、注意事項、秘密保持契約(NDA)に適合した細則で包まれた、レースの歴史の一片への黄金のチケットを提供したことになる。
マクラーレンは、購入者がすぐに鍵を受け取ることはないと主張している。最先端の設計詳細をライバルの手に渡さないようにするため、このマシンは競争力のライフサイクルが成熟する2028年まで納品されない予定だ。それでも、コース上でのあらゆる活動は、FIAのTPC(Testing of Previous Cars/旧型車を使用するテスト)レギュレーションの下で厳しく監視される。つまり、もし許可されるとしても、走行はマクラーレンに対する限られたテストの割り当てのなかで行われ、チーム、エンジンサプライヤーのメルセデス、そしてFIAによって監督されることになる。つまり、オーナーは自慢できる権利と将来の逸品を手に入れることになるが、監督なしのプライベートテストは手に入らないのだ。マクラーレンは、そのような自由はメニューに載っていないと明言している。
しかしながらマクラーレンは、購入者が2年間待つ間に何もせずに放っておくつもりはない。オークションパッケージには、展示用にリースされる走行不能の2025年型ショーカー、MCL40A発表会へのVIP参加(購入者が初めて車両を直接見る機会)、ふたつのグランプリでのプレミアムホスピタリティー、およびピットガレージの見学が含まれている。
購入者は、ドライバーのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、マクラーレン・レーシングのCEOであるザク・ブラウンが案内するマクラーレン・テクノロジー・センターのガイド付きツアーや、ル・マン24時間レースおよびインディ500などの注目イベントへの招待も受けることになる。
さらに面白いことに、購入者は、最終的に納車される車体が、新たに世界チャンピオンに輝いたノリスが使用したものか、ピアストリが使用したものかを選択できる。これは収集価値のある劇場であり、マクラーレンはしっかりと脚本を握っている。

■将来のハイパーカー、インディカーも落札
この販売は、F1の2026年の技術刷新をめぐる感度の高まりを浮き彫りにしている。軽い車両、アクティブエアロ、新たなハイブリッドパワーユニットにより、知的財産と運用管理が極めて価値あるものになる。マクラーレンのオークションリストでは、チームが車両のあらゆる使用に関して運用管理権を保持していることを強調している。これは現代のF1顧客の規範を反映しているが、その驚くべき価格設定が際立っている。
この大ヒットセールは、RMサザビーズ・アブダビで行われた、マクラーレンに焦点を絞った週末イベントの一環だった。2027年型マクラーレン・ユナイテッドASハイパーカーが760万ドル(約11億8400万円)、2026年型アロー・マクラーレン・インディカーDW12が84万8750ドル(約1億3200万円)、そして公道仕様のマクラーレンF1が2530万ドル(約39億4100万円)で落札され、同モデルのオークション史上最高額となった。
総じて悪くない週末だった。そしてどこかで、非常に裕福なマクラーレン愛好家が、マクラーレンがついに本物の、完成した2026年型マシンを発表するまでの日数を数えている。それはまさに彼らがすでに購入したマシンなのだ。

(Text : autosport web / Translation:AKARAG)

