「できることは全部やる」PUコンポーネント交換で振動が改善。予選はライバルの後塵を拝すも7勝目を掴む:ホンダ/HRC密着
F1第23戦カタールGPの予選後、ホンダ・レーシング(HRC)はレッドブルと緊急のミーティングを行った。それは、予選でマクラーレン勢の後塵を拝し、3番手に終わったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)からのエンジンに関するフィードバックが原因だった。
HRCの折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)はこう話す。
「予選の後、マックスから『エンジンからの振動が大きい』というフィードバックがあったので、我々のほうでチェックしました。その結果、データには一切出ておらず、目視でも異常は発見されませんでした」
じつは、フェルスタッペンがエンジンの振動に悩まされていたのは予選だけではなかった。
「初日のフリー走行は振動に関するコンプレイン(不満)はなく、2日目のスプリントからです」(折原)

スプリント後はパルクフェルメ状態が解除されているので、エンジンを交換することもできた。しかし、「スプリント後にレッドブルとエンジンを交換するかどうかの話し合いは行われましたが、ホンダとしてはデータには出ていなかったので、『変える理由がない』として、そのままのエンジンで予選に臨みました」と折原GMは説明する。
その結果、予選でも振動は改善しておらず、結果もマクラーレン勢の後塵を拝する形となってしまった。そこで、HRCとレッドブルは再度話し合いを行い、「できることはすべてやろう」ということで、エンジンを交換する決断を下した。
「ドライバーが大きい振動を感じていることは事実。マックスも振動が大きいことで、いつもよりもドライビングに影響があると言っていたので、エンジンを変えることで少しでも状況が改善されるのであれば、交換するしかないと判断し、プールのなかに入っているエンジンから一番状態のいいものを交換しました」(折原)
データ上には問題は現れていなくとも、ドライバーがそこまでコンプレインを感じているとなると、信頼性の懸念がないと断言できない。予選後はパルクフェルメ状態であるため、ペナルティなしでエンジンを交換するには国際自動車連盟(FIA)の許可が必要となる。「信頼性の懸案がある」とFIAに申請したうえで、HRCはフェルスタッペンのパワーユニットの主要4コンポーネントを交換した。

これまで使用したことがあるパワーユニットに交換したフェルスタッペンは、マクラーレン勢の失策にも助けられて、見事優勝。載せ替えたエンジンも問題はなかった。
「交換して、多少なりとも改善していたと言うので、それが勝利に結びついたのであれば、交換してよかったと思っています」
なぜ、金曜日と土曜日に搭載していたエンジンは振動が大きかったのか。折原GMはこう解説する。
「振動元はエンジンです。ただ、それがドライバーにどのように伝わるのかは車体を含めた状況によります。したがって、ドライバーが振動を大きく感じる理由は、エンジン自体の振動が大きくなる場合もありますが、車体の剛性が影響している場合もあります」
異なるエンジンで2連勝したHRC。チャンピオンシップを賭けた最終戦アブダビGPでどちらのエンジンを使用するのか。レッドブルと最後のミーティングは熱くなりそうだ。

