ミスを悔やむアントネッリに降りかかったSNS上の誹謗中傷。レッドブルは首脳陣の誤りを認める【ルーキー・フォーカス】
前戦ラスベガスGPに続いて、F1第23戦カタールGPでもアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が素晴らしい走りを披露した。
しかしカタールGPでは、あるインシデントによって、アントネッリはさらに注目されることとなった。それはレース終盤の56周目のターン10で、アントネッリがコントロールを失ってコースから外れたときだった。その隙に5番手を走行していたランド・ノリス(マクラーレン)がアントネッリを抜いて4番手に上がったため、ノリスとドライバーズチャンピオンシップを戦っているレッドブル陣営が、アントネッリに対して故意にやったのではないかという旨の発言をした。
まずマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼが、無線で「アントネッリに何が起きたかわからないが、単純に道を開けて、ノリスを通したように見える」と発言した。さらにヘルムート・マルコ(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)も、レース後にテレビ局に対して、「彼(アントネッリ)は2度ほどランドを前に出した」と、事実を誤認したうえに思い込みで軽はずみな発言を行ってしまった。
もちろん、アントネッリが故意にコースオフするはずはなかった。なぜなら、アントネッリはこのとき前を走る3番手のカルロス・サインツ(ウイリアムズ)を追って、表彰台を狙っていたからだ。しかし、サインツに近づきすぎて、その後方に発生していたダーティエアのなかで走行していたため、タイヤがオーバーヒートして、コーナーでバランスを崩してしまったというのが、真相だった。

一連のレッドブル関係者の発言が火種になって、アントネッリのSNS上のアカウントには不当な書き込みが集中する騒ぎとなった。そのため、レッドブルはレース翌日の12月1日に公式Xに次のような声明を掲載し、火消しにあたった。
「カタールGP終了前と終了直後になされた、メルセデスのドライバー、キミ・アントネッリがランド・ノリスに意図的にオーバーテイクを許したと示唆する我々チームメンバーのコメントは明らかに間違いでした。リプレイ映像を見る限り、アントネッリが一時的にクルマのコントロールを失い、ノリスに抜く余地を与えたことを示しています。我々はこれがオンライン上でのキミへの誹謗中傷に繋がったことを心から遺憾に思います」
ノリスに先行を許したものの、5位でフィニッシュしたアントネッリはドライバーズポイントを150点とし、選手権6位のルイス・ハミルトン(フェラーリ)と2点差となった。その素晴らしい走りに根拠のない疑念を浴びせたレッドブルの罪は決して軽くない。
この騒動がアントネッリの走りに影響を与えないことを祈るばかりだ。
