2チームで角田裕毅に寄り添い続けたメキース。去就発表前後の言葉に見えた配慮とエール【代表のコメント裏事情】
「お伝えできるのは、我々は計画通りに進め、火曜日にドライバーのラインアップを発表するということだ。(それによって)アブダビGPでの集中力を乱すことはないと確信している。火曜日に発表される内容を予測するような質問は(これ以上)やめてほしい」
これは、F1第23戦カタールGP後にレッドブルが行った定例会見で、2026年のドライバーラインアップについて尋ねられた際のローラン・メキース代表の回答だった。
そのときは、「火曜日にドライバーのラインアップを発表することによって、アブダビGPでの集中力を乱すことはないと確信している」という言葉が、角田がレッドブルに残留するのか否かのどちらを指しているのかわからなかった。そのことは12月1日付けの『レッドブルが2026年のラインアップをまもなく発表へ。角田、ローソン、リンドブラッドが残る2席を争う/F1 Topic』でも触れたように、「角田がレッドブルに残留するので、アブダビGPでの集中力を乱すことはないと確信している」という意味にもとれるし、「角田は最終戦をもって、このチームを去ることになるが、これまでレッドブル・ファミリーの一員として一緒にやってきたので、レッドブルのレギュラードライバーのシートを失ったとしても、アブダビGPでの集中力を乱すことはないと確信している」という意味にもとれた。
しかし、いま思えば“レッドブルに残留することが決まって、アブダビGPでの集中力が乱れる”はずはなく、この言葉には“シートを喪失して、心を痛めるだろう角田に対する配慮”が滲み出ていたわけである。さらに「アブダビGPでの集中力を乱すことはないと確信している」と結んでいたメキース。それは「来年のシートを提供できなくなったけれど、ユウキは我々レッドブル・ファミリーの一員として残ってもらうから、最後まで一緒に戦おう」というエールだったのかもしれない。
レーシングブルズで角田と共にレースを戦い、レッドブルで再会してから、角田を温かく見守ってきたメキース。これまで胸の内を明かすことはできなかったが、12月2日に発表したリリースには、角田への思いが溢れていた。それは、来年のシートを与えるアイザック・ハジャーに対するよりも、多くの言葉が角田に向けられていたことにも表れている。
その言葉が決して飾りではないことは、これまで何度もメキースが角田とふたりきりで会話しているシーンを見てきた筆者にはわかる。
昨年の第19戦アメリカGPで見た光景をいまでも覚えている。土曜日のスプリントでポイント圏外に終わった角田を呼び寄せ、ホスピタリティハウスの屋上でかなり長い間、立ち話をしていた。また今年のメキシコシティGPではフリー走行後にデータを見ながら、角田と会話していた。それはまるで角田のレースエンジニアかのようだった。


チームがタイヤの空気圧を設定ミスという信じられない失態を犯したラスベガスGPでも、メキースは角田に寄り添っていた。

もしかすると、レッドブルのシートを失うことが決定した角田に、リザーブ&テストドライバーとしての道を残したのは、メキースだったのかもしれない。そして、角田もまたメキースからの提案だったからこそ、受け入れたのかもしれない。
メキースはこう語る。
「2026年プロジェクトにおいて、ユウキが貴重なサポートを我々に提供してくれることを確信している」
メキースと角田の旅は、まだ続く。