平等性重視の関係構築を続けるマクラーレン。ドライバー優遇の批判は「雑音と事実を明確に区別」し対処【代表のコメント裏事情】
F1第20戦メキシコシティGPでランド・ノリスが完勝し、チームとして第15戦オランダGP以来、5戦ぶりに勝利して第21戦サンパウロGPに臨んできたマクラーレンのアンドレア・ステラ代表には、ふたつの懸念材料があった。
ひとつはノリスがメキシコシティGPで勝ったものの、オスカー・ピアストリが5位に終わったために、チャンピオンシップリーダーがピアストリからノリスに移ったことだ。しかも、ふたりの差はサンパウロGPが始まる前の段階で、わずか1点。チーム内に緊張感が漂っても不思議ではない状態となっていた。
ステラはこう話す。
「ドライバーズ選手権を争うふたりのナンバーワン・ドライバーを管理するのは、簡単なことではないが、ランド、オスカー、そしてチームはこれまで非常によくやっていると思う。私はふたりのドライバーとエンジニアを誇りに思っている。彼らの協力体制はF1史上類を見ないものだ。ランドとオスカーは常に互いを支え合っている。昨日我々はオスカーと、チームとの間で、またランドとの間でも生じている尊重と支援について話し合い、すべてをクリアした。もちろん、ここからさらにプレッシャーは大きくなるので、安心はしていないが、この関係を選手権終了まで維持できるよう、全力で取り組んでいく」

ステラがこう話すのは、メキシコシティGP後にSNSで「マクラーレンが特定のドライバーを優遇している」と批判が飛び交う状況になっていることが影響していると考えられる。第5戦サウジアラビアGPでチャンピオンシップのリーダーに立ったピアストリだが、第15戦オランダGPでの優勝後は低迷。メキシコシティGPでチャンピオンシップのリーダーから脱落したことで、一部のファンがマクラーレンの公平性に疑問を呈している。
ステラは、ファンがそういった主張をする気持ちを理解しつつも、そういった雑音には耳を傾けすぎないことが一番だと語る。
「私もサッカーの話を好むし、サッカーの話をするときは世界最高の監督になった気持ちになる。誰もがスポーツについて語るのは好きだ。F1は非常に人気のあるスポーツだから、なおさらだ。でも、我々内部で仕事をする者は雑音と事実を明確に区別するよう心がけている。重要なのは事実を抽出し、みんなが事実だけに集中し続けることだ。幸運にも、我々のチームでは大きな火種はほとんど発生していない。それは我々がランドとオスカーと契約した日から、公平性、平等性、スポーツマンシップといった概念に基づいた関係を築くことに多大な時間と労力を費やしてきたからだと信じている」

ステラにとって、最終戦に向けて気になっているもうひとつのことは、ドライバーズ選手権のタイトル争いが三つ巴の戦いになっていることだ。ステラは、最近繰り広げられた3人以上の複数ドライバーによる最終戦決着に、いずれも関わってきた。そのひとつが2007年だ。当時、フェラーリにいたステラはこう振り返る。
「あれは2007年のことだった。私はここ(ブラジル)でキミ(・ライコネン)と共にチャンピオンシップを勝ち取った。我々は最終戦にランキング3位で乗り込んできた。下馬評は低くかったが、逆転でタイトルを奪取することができた。結果が確定するまで4時間待たされたが、あれは本当に長く感じた」
もうひとつは、2010年のアブダビGP。ステラはチャンピオンシップリーダーで乗り込んだフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)のレースエンジニアを務めていた。タイトル争いはアロンソと選手権2位のマーク・ウエーバー、同3位のセバスチャン・ベッテル(ともにレッドブル)、そしてルイス・ハミルトン(マクラーレン)の4人で争われた。しかし、このレースでアロンソはまさかの7位に終わり、優勝したベッテルに逆転で王座を奪われ、ステラにとってほろ苦い思い出となっていた。
「2010年も、私にとっては忘れられないシーズンだ。今度は敗北して、大きく落胆した。そして、どちらの場合も、最終戦でランキング3位だったドライバーが、チャンピオンシップを勝ち取った。だから、決して諦めず、何事も当然と思わないこと。これが非常に重要だ」
今年のランキング3位は、またしてもレッドブルのマックス・フェルスタッペン。今年の三つ巴戦でステラは雪辱を果たし、過去のジンクスを打ち破ろうとしている。
