憶測を呼んだピアストリの行動をマクラーレンが説明。無線“無視”と祝賀セレモニー欠席の理由
マクラーレンは、F1シンガポールGP後に伝えられたオスカー・ピアストリに関する一連の報道を否定した。それらの記事には、ピアストリはチームに激怒していたため、ボスからの無線を無視し、コンストラクターズタイトル獲得の祝賀会に参加しなかったかのように書かれていた。
チャンピオンシップリーダーであるピアストリは、決勝スタート直後、ターン3への進入時にチームメイトのランド・ノリスに押しのけられる形になり、接触されたため、強い不満を抱いていた。彼は決勝最初の4周にわたり、無線を通してチームに4回も抗議を行った。
しかしレーススチュワードはノリスにペナルティを科さず、マクラーレンも何の措置も取らないと聞かされた後、ピアストリはレースに集中することに決めた。そして、フィニッシュ直後に国際メディアの取材に臨む際には、この件について物議を醸すような発言を避けるよう心掛けた。
それにもかかわらず、いくつかのエピソードが、実際の事情とは異なる理由があるかのように報じられた。ひとつは、ピアストリがマシンをパルクフェルメに停めた後、マクラーレンCEOザク・ブラウンが無線を通して、チームのコンストラクターズ選手権2連覇を祝って彼に話しかけていた際に、言葉の途中で、ピアストリのマシン側から無線が切れたことだった。
その映像が流れたため、ピアストリが故意に無線を切ったとして、それを彼がチームに対して怒りを覚えている証拠のように扱った記事があった。しかし実際のところは、通常の手順として、マシンがシャットダウンされただけであり、ピアストリはブラウンが話し始めていたことすら知らなかった。
ピアストリが無線を一方的に切ったと世界中で拡散されたことを受け、マクラーレンは、経緯を明らかにするために動いた。彼らの説明によると、ピアストリがゆっくりとピットに戻る途中、レースエンジニアのトム・スタラードが、安全な形ですべてのシステムをシャットダウンするよう、念を押したという。「パルクフェルメに戻ったら、完全にマシンをシャットダウンするということを覚えておいてくれ。エンジンを切って、5秒待ってから、完全にオフにするんだ」と彼はピアストリに語りかけたという。
ピアストリはその指示に正確に従い、エンジンを停止してから5秒後に、無線システムを含むすべてのシステムをシャットダウンした。
ブラウンは、ドライバーがマシンを停めた直後に何をしているかを考えないまま、ピアストリに対して語りかけた。「オスカー、2連覇だ。良いレースだった、タフな戦いだった。ありがとう……」とそこまで話したところで、通信が途切れた。それは、ピアストリが故意に会話の途中で無線を切ったのではなく、FOMの放送フィードとマシンをつなぐ無線システムが自動的に停止されたためだった。そして、ピアストリはブラウンが話し始めたことすら知らなかったのだ。
次に騒がれた出来事は、表彰台で急きょ行われたコンストラクターズタイトル獲得セレモニーに、ピアストリが参加していなかったことだ。それはチームへの反抗の印であると見る者もいた。しかしそういう記事を書いた人間は、グランプリ後にドライバーがどういうスケジュールで動くかを理解していないのだろう。
今回F1は、レース直後にCEOブラウンとチーム代表アンドレア・ステラのインタビューを生放送で行うという新しい試みを導入した。彼らのインタビューは、トップ3でレースを終えたジョージ・ラッセル(メルセデス)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ノリスがインタビューを受けて表彰台に上がるよりも前に行われた。
トップ3の表彰式は通常どおり行われたが、その際にブラウンとステラが近くにいたため、FOMは、マクラーレンのスタッフたちを表彰台に上げてセレモニーを行うという話を急きょ決めた。そこでチームスタッフの約3分の1が招集され、表彰式を終えて取材を受けるためにメディアが待つ場所に向かう途中だったノリスも声をかけられて、表彰台に上ることになった。
ピアストリはそのころ、すでにメディアの取材を受けていた。計量後すぐに取材エリアに向かい、20以上のテレビ局とその後の紙媒体の取材に応じており、25分以上にわたって質問に答えていたのだ。そのため、即席で行われた表彰台でのセレモニーについては、彼は知らされてすらいなかった。
チームはその後、ピットレーンで伝統的なお祝いをし、集合写真を撮影した。そこには、すべての公式義務を終えたピアストリがいつもどおり出席していた。一方、そのお祝いが行われたのが非常に遅い時間になってしまったため、すでにブラウンは飛行機の出発に間に合うよう、サーキットを離れていた。幸い、「ブラウンはドライバーに腹を立てていたために集合写真の撮影に参加しなかった」という記事を書いた者はいないようだ。