2025年F1第18戦シンガポールGP 角田裕毅(レッドブル)

【】1周目の走りに期待してソフトを選択も「行き場を失った」12位まで追い上げたロングランは大幅改善【角田裕毅F1第18戦分析】

10月6日

 2025年F1第18戦シンガポールGPの土曜日の予選を15番手で終えた角田裕毅(レッドブル)。予選の最終結果が出たのは、深夜0時を過ぎて、日曜日の午前1時10分だった。

 遅れた理由はふたつあった。ひとつ目は、Q1でマシントラブルによりピエール・ガスリー(アルピーヌ)がコース脇にマシンを停車したため、ターン11で黄旗が振られていたのだが、その直後に黄旗区間で減速していなかったという嫌疑をかけられたドライバーがいたからだ。そのドライバーのひとりが角田だった。

 予選後、角田のレースエンジニアを務めるリチャード・ウッドにその件を尋ねると、ウッドはこう言い切った。

「データによって黄旗区間で減速していたことを我々は確認している。問題ない」

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第18戦シンガポールGP予選 角田裕毅(レッドブル)

 同じ嫌疑で予選後にスチュワード(審議委員)に呼び出されたのは角田のほかにもふたりいた。キック・ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレートだ。スチュワードは、ドライバー本人およびチームの代表者(レッドブルの場合、チームマネージャー)から説明を聞き、マーシャリングシステム、タイミングモニター、テレメトリー、車載映像などの証拠と照らし合わせた上で、該当するドライバーたちが全員、黄旗区間で明確に減速していたことが確認されたとして、不問とした。

 この決定が下されたのは午前0時16分。しかし、ふたつ目の問題がまだ解決していなかった。それはウイリアムズの2台のマシンに予選後、DRS違反の疑いが判明したことだった。国際自動車連盟(FIA)のF1テクニカルデリゲートからの報告書によれば、ウイリアムズの2台のリヤウイングの上部可動エレメントの位置を確認したところ、リヤウイングの両サイドが最大制限値85mmを超えていたという。

 これにより、ウイリアムズの2台は予選失格となった。アレクサンダー・アルボンとカルロス・サインツは予選をそれぞれ12番手と13番手で終えていたため、この決定を受けて、FIAは予選の正式結果を修正。14番手以下のドライバーをふたつずつ繰り上げ、15番手で終えていた角田は日曜日のレースを13番手からスタートすることとなった。

 抜きどころが少ない市街地コースで、スタートポジションがふたつ繰り上がったことで、入賞するチャンスが広がった角田。エンジニアと相談したうえで、角田は「1周目のパフォーマンスを期待」して、ソフトタイヤでスタートする戦略を採った。

 期待していたとおり、ソフトタイヤを履いた角田の蹴り出しはよかった。ところが、直後の1コーナーで12番手からスタートしたリアム・ローソン(レーシングブルズ)とサイド・バイ・サイドになってしまう。ローソンとのバトルは3コーナーまで続き、3コーナーでイン側にいたローソンが立ち上がりで前に出て、決着がつく。

【角田裕毅F1第18戦分析】
スタート直後、サイド・バイ・サイドで並んだ角田とローソン

 そしてそのローソンの後ろにいたフランコ・コラピント(アルピーヌ)が5コーナーに向けて角田に並びかけていく。5コーナーの出口でコラピントに前に出られてしまった角田は、7コーナーまでの直線区間でコラピントのスリップストリームを利用しようと後ろにつく。しかし、オーバーテイクするまでには至らず、7コーナーをコラピントと同じラインで通過する。

 するとそのイン側にランス・ストロール(アストンマーティン)が飛び込んできて、またひとつポジションを失う。さらに7コーナーの立ち上がりでストロールの後ろからやってきたボルトレートに8コーナーでアウトからオーバーテイクを許し、16番手まで後退した。

 2周目の7コーナーで、17番手からスタートしていたエステバン・オコン(ハース)にも抜かれた角田は、17番手へとポジションを落としてしまった。

【角田裕毅F1第18戦分析】
角田はコラピント、ストロール、ボルトレート、オコンら4台に抜かれ、17番手まで順位を落とした

「自分でも驚くぐらい、すべてのコーナーで行き場所を失ってしまいました」

 そう振り返る角田。マシンに何かトラブルがあったわけではない。しかも、スタート時に履いたタイヤは、「1周目のパフォーマンスを期待して履いたソフト」だった。

 何が起きたのかは、「これから確認します」と力なく語った後、こう続けた。

「人生で一番悪いと言ってもいいほど、信じられないくらい悪いスタート直後の1周目でした」

【角田裕毅F1第18戦分析】
レース後、メディアの取材に応じる角田

 それでも、その後のレースペースは悪くなく、失ったポジションをひとつずつ上げていった角田。レース終盤にはポイントを賭けてアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)を追い詰め、最後まで粘り強く走っていた。しかし、そのタイミングで上位集団が後方からやってきたため、角田は彼らに道を譲るために、ブルーフラッグが振られるたびにハジャーの追い上げをやめる。そのため、ハジャーに接近しては離されるという展開を繰り返した。

「シンガポールは何が起きるかわからないので、チェッカーフラッグが振られるまで全力で戦いました」と最後まであきらめずに走った角田だったが、健闘も虚しく12位でチェッカーフラッグを受けた。

「ロングランのペースはかなりよかったので、それだけに(スタート直後のポジションダウンが)残念です」と悔しがった角田は、次戦アメリカGPへ向けて、次のように語った。

「ロングランのペースはこの2戦で大きく改善されたので、今後は1ラップのペースを上げることに集中して、予選とレースをまとめ上げたいです」

 それを実現するために、シンガポールGPの後、ファクトリーへ行って「シミュレーター作業をする」と語った角田。その成果を2週間後のオースティンで見届けたい。



(Text : Masahiro Owari)