レッドブル首脳陣もメキースに納得「より競争力のある状態に戻るため」に第2段階の取り組みを開始【代表のコメント裏事情】
2025年F1第16戦イタリアGPでマックス・フェルスタッペンによって優勝を遂げたレッドブル。この勝利は7月からチーム代表としてレッドブルを指揮してきたローラン・メキース代表にとって、レッドブルでの初優勝でもあった。
昨年までのレッドブルであれば、優勝すること自体、驚くべきことでは決してない。しかし、今年はマクラーレンがふたつの選手権を独走。ヨーロッパラウンドが再開された6月下旬の第11戦オーストリアGPから8月下旬の第15戦オランダGPまでマクラーレンが5戦連続で勝利を挙げていた。
そのなかで7月からレッドブルの代表となったメキースが、就任4戦目で初勝利を飾ったのは、偶然ではない。メキースは夏休み前後の違いをこう語る。
「第1段階は観察のみだったが、第2段階ではチームと共に、さらなる解き放つべき要素のマップを構築しようと考えている」
メキースの変化をチーム首脳陣も次のように認める。ヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)とピエール・ワシェ(テクニカルディレクター)は、「オランダGPからドライバーのフィードバックを重視して、これまでとは違ったアプローチで戦い始めている」と、メキースの手腕を評価していた。
チェッカーフラッグを受けた後、「あなたにとってレッドブル初優勝だ。おめでとう」とメキースへ賛辞を贈ったフェルスタッペンもメキースが敷く新しい体制を支持している。
「これまで僕たちは、マシンのセットアップで右往左往するレースを数多く経験してきた。極端な変更を繰り返していたのは、状況を完全に把握できていなかった証拠だ。ローランはエンジニアリングのバックグラウンドを持つため、エンジニアに適切な質問を常識的な範囲で投げかけてくれる。それがこの2戦で非常に効果的に機能していると思う。そうやって試行錯誤を重ねていくうちに、ある時点で方向性が見えてくる瞬間があるんだ。ザントフォールトではフリー走行3回目の後にセットアップを大きく変更したし、モンツァでもフリー走行3回目の途中でリヤウイングを変更した。それによって、予選とレースで確実に前進し、ライバルたちと戦えるレベルに達した」
これまでのレッドブルは、金曜日のフリー走行の走行データを元にイギリス・ミルトンキーンズのファクトリーでシミュレーションを行い、その結果に基づいて土曜日以降のセットアップを決めることが多かった。実際、イタリアGPでもフリー走行3回目はダウンフォースを高めにした空力セッティングで2台とも走り始めていた。しかし、フェルスタッペンが走り始めてから「低ダウンフォースにすべきだ」と主張。レースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼら現場のエンジニアたちも同調し、メキースが変更を了承したという。
そのメキースは現在の状況と今後について、次のように語る。
「代表に就任して6週間が経過したいまは、スパのときより状況は改善している。日々、チームの働き方を少しずつ理解し、より多くの人と出会い、業務の流れや組織構造についての理解を構築し始めている。現在チームと取り組んでいるのは、より競争力のある状態に戻るために次に解き放つべき要素を共にマッピングすることだ。これがいまのフォーカスしていることだ」
カリスマ的な存在だったクリスチャン・ホーナーの穴を、メキースはホーナーとは異なる方法で埋め始めている。