
【】【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】レッドブル系列とアルピーヌに関して、パドックでささやかれる去就のうわさ
9月16日
F1での5年目に突入した角田裕毅は、2025年第3戦からレッドブル・レーシングのドライバーとして新たなチャレンジをスタートした。元ドライバーでその後コメンテーターとしても活躍したハービー・ジョンストン氏が、角田の戦いについて考察する。今回はオランダGPとイタリアGPの週末を中心に振り返る。
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以前述べたことがあると思うが、私は陽気な人間で、常に「グラスに水が半分も入っている」と考えるタイプだ。明日は今日より必ず良くなると常に信じ、どこへ旅に出るときも、楽しむチャンスを逃さないように、必ず日焼け止めと水着を持参する。要するに、私は簡単には気落ちしたり、ネガティブな考えにとらわれたりはしない人間なのだ。
しかし、そんな私が、イタリアGPの途中でふと考えてしまった。角田裕毅は、新しいレッドブルの経営陣に自分が2026年のシートに値する存在であることを納得させなければならないが、そのための時間がなくなりつつあるのではないか、と。たとえそのシートがジュニアチームのものであったとしてもだ。

私はザントフォールトへの旅をスキップした後(あのサーキットのすぐ隣にはビーチがあるが、北海は荒れており、水温はノーフォークよりも低い!)、モンツァでの週末の大半を、我らが角田が2026年にグランプリドライバーとして生き残れる可能性はどの程度なのかを考えることに費やした。
もちろん、裕毅にとって最良のシナリオは、レッドブル・レーシングに残留し、マックス・フェルスタッペンと対等な立場で2026年を迎えることだ。
来年はマシンが完全に新しくなるため、角田はマックスと同じ出発点からスタートできる。あとは結果で自らの価値を証明するのみだ。

しかし、このシナリオが実現する可能性は非常に低いと聞いている。というのも、ヘルムート・マルコとオーストリア側の首脳陣は、アイザック・ハジャーのパフォーマンスに感銘を受けており、2026年には彼をフェルスタッペンの隣に据えたいと考えているからだ。そうすれば、ハジャーは新しいレギュレーションの下でゼロからスタートし、ボスたちは、ワールドチャンピオンとの比較を公正に行うことができる。
ハジャー自身もこの昇格を望んでいると表明したようなので、彼が12月までに何か愚かなことをしない限り、それが現実になるだろう。

角田にとって第2のシナリオは、レーシングブルズに戻り、来年F1昇格が濃厚と見られるアービッド・リンドブラッドと組むことだ。
リンドブラッドは、このところ、マクラーレンのアレクサンダー・ダンと同じ症候群に苦しんでいるように見える。彼らは、来年のF1シートと名前が結び付けられた途端に、FIA F2で多くのインシデントに関わり始めた。
それでも今のレッドブルは再び「マルコは望んだものを得る」という状態に戻ったため、リンドブラッドが昇格する可能性は高い。その場合、マルコは新人の指標役として、角田かリアム・ローソンのどちらかを選ぶことになるだろう。

ローソンとシートを争うことになった場合、今は角田の方が有利かもしれない。レッドブル内部の関係者から聞いたところによれば、ローソンはもはや上層部から高い評価を受けていないという。ハジャーにおよばないだけでなく、特にレース中の行為が問題視されているからだ。たとえばそのひとつは、イタリアGPでの角田との接触だ。
そして第3の選択肢はアルピーヌへの移籍である。パドックでのうわさによると、ピエール・ガスリーのチームメイトを検討しているフラビオ・ブリアトーレは、自身の年齢に匹敵するほど多くの名前が連なる候補者リストを作っているということで、そのなかには角田の名前も含まれているようだ。ガスリーは、かつてのチームメイトで親友の角田を迎えることを望んでいるといわれる。
ただしアルピーヌのドライバー決定は、最終戦アブダビより後になる可能性があるため、角田と彼のマネジメントチームは“プランC”と考えているだろう。

さて、このコラムで期待されている、最近の角田のパフォーマンス評価について、簡単に行うことにするが、彼の将来を疑問視しているのは、まさに直近2戦で結果が出なかったからだった。
ザントフォールトでは期待を下回る結果だった。FP2ではフェルスタッペンに近づいたものの、予選Q3進出に失敗。決勝では9位まで挽回するにとどまった。一方でフェルスタッペンは2位を獲得している。
モンツァでは、少なくとも角田はQ3進出を果たしたが、別の空力仕様を使っていたチームメイトとは大差があり、さらに、決勝では1ポイントをかけて戦っていたところで、ローソンによる不要な接触に巻き込まれてしまった。
つまり、2戦とも決して希望を抱ける内容ではなかった。そのため今回のコラムでは、角田の走りを分析するよりも、彼が来年F1に残れる可能性についてパドックで語られていることに焦点を当てることにしたわけだ。
いつもの私ほどポジティブな見方にはならなかったが、今後に期待を抱きつつ、グラスを半分満たすことにしよう。

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筆者ハービー・ジョンストンについて
イギリス出身、陽気なハービーは、皆の人気者だ。いつでも冗談を欠かさず、完璧に道化を演じている。彼は自分自身のことも、世の中のことも、あまり深刻に考えない人間なのだ。
悪名高いイタズラ好きとして恐れられるハービーは、一緒にいる人々を笑顔にする。しかし、モーターレースの世界に長く関わってきた人物であり、長時間をかけて分析することなしに、状況を正しく判断する力を持っている。
ハービーはかつて、速さに定評があったドライバーで、その後、F1解説者としても活躍した。彼は新たな才能を見抜く鋭い目を持っている。F1には多数の若手育成プログラムがあるが、その担当者が気付くよりもはるかに前に、逸材を見出すこともあるぐらいだ。
穏やかな口調でありつつも、きっぱりと意見を述べるハービーは、誰かが自分の見解に反論したとしても気にしない。優しい心の持ち主で、決して大げさな発言や厳しい言葉、辛辣な評価を口にせず、対立の気配があれば、冗談やハグで解決することを好む。だが、自分が目にしたことをありのままに語るべきだという信念を持っており、自分の考えをしっかり示す男だ。
(Text : Herbie Johnston)