【F1第16戦ベスト5ドライバー】勝利のためにリスクを取ったフェルスタッペン/まさかの不運に見舞われたノリス
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第16戦イタリアGPの戦いを振り返った。
───────────────────────────
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位
マックス・フェルスタッペンのモンツァでの鮮やかな走りは、グランプリで勝つチャンスが少しでも現れれば、彼は勝利のために突き進み、しっかりものにするドライバーだということを、改めて思い出させるものだった。
昨年のモンツァでの惨憺たる成績を受け、レッドブルはこのコース専用の空力仕様を設計・製作する決断を下し、そのギャンブルが実を結んだ。
しかし勝負を分けたのは、ファクトリーチームが異なるセットアップを主張する中で、フェルスタッペン自身がリスクの高い、RB21の運転を難しくするセットアップを選んだ、その判断だった。フェルスタッペンのポールポジションラップは見ていて喜びを感じるものだったし、レースも序盤にノリスに先行を許した場面を除けば完璧だった。
首位に立ってからは、フェルスタッペンはまるで時計仕掛けのように走り、ミスらしいミスは一切なく、グラベルにほんのわずかにはみ出すことも、フロントタイヤをロックさせることもなかった。これは間違いなく彼のキャリアにおける最高の走りのひとつだ。その喜びようは、イタリアGPでの優勝がフェルスタッペンにとってどれほど大きな意味を持つのかを物語っていた。
ランド・ノリス(マクラーレン):予選2番手/決勝2位
アンドレア・ステラ代表が予想したように、ザントフォールトでランド・ノリスが受けた残酷な打撃は、彼を大きな重圧から解放したのかもしれない。イタリアでノリスは、最初からチームメイトを上回っていた。
ザントフォールトとは異なり、オスカー・ピアストリはノリスに追いつくことができず、レースではノリスの背後にできるだけ食らいつき、セーフティカーによるリスタートを待つことしかできなかった。
35周目には、マクラーレンの2台のギャップは6.5秒に広がっており、それがペースの違いを表していた。ただ、チームがセーフティカー出動を期待してミディアムタイヤのスティントを延長し、フリーのピットストップを狙った時、ノリスがより多くタイヤを消耗していたことは明らかであった。
それでも残り10周の時点で、ノリスはピアストリの3.7秒前を走っており、何かが起こらない限り、ノリスがピアストリの前でフィニッシュすることは明らかだった。
だが、いわゆるマーフィーの法則どおり、ノリスのピットストップで問題が起こってしまった。チームはこの状況に介入し、ノリスがポジションを譲られてピアストリの前でフィニッシュ、ふたりのポイント差を3ポイント縮めることができた。
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選4番手/決勝4位
フェラーリはモンツァでは常に何か特別なことを成し遂げるが、今回は奇跡は起こらなかった。2024年には、ルクレールの卓越したドライビングとマクラーレンの拙い戦略が組み合わさり、ルクレールが歴史的勝利を収めたものの、今回はその再現はかなわなかった。
ルクレールは最初の6周、ピアストリを2度抜き去って、ティフォシに夢を見せた。最初のオーバーテイクは、レズモでのアウト側からの驚異的な動きだった。しかし6周目には敗北を受け入れざるを得ず、それ以降は主にジョージ・ラッセルを背後に抑えることに集中した。
タイヤの温度が安定すると、ルクレールはノリスやピアストリのラップタイムに匹敵するペースを発揮し、ラッセルとの差を拡大するという印象的なパフォーマンスを見せた。こうしてルクレールはライバルに脅かされることなく4位でフィニッシュ、コンストラクターズ選手権においてスクーデリアがメルセデスとの差を拡大することに貢献したのである。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選14番手/決勝7位
ザントフォールトで5位に入った1週間後、アレクサンダー・アルボンはモンツァでも、トップグループ以外の最高位を獲得した。アルボンは直接のライバルから挑まれることなく7位でフィニッシュしたのだ。
この結果により、アルボンはドライバーズ選手権でアンドレア・キミ・アントネッリを上回り、コンストラクターズ選手権においては、ウイリアムズがランキング5位の位置を固めることに貢献した。
アルボンは3戦連続で、予選でタイヤをうまく機能させるのに苦戦し、イタリアでもQ2ではカルロス・サインツの後方に甘んじた。しかしレース序盤にチームメイトの背後に多くの時間を費やした後、25周目に先導権を与えられると、すぐにサインツを引き離していった。
タイミングの良いピットストップでアントネッリに接近し、危うい場面を乗り越えた後、難なくパス。最終的にアルボンは8位に8秒差をつけてフィニッシュした。
ガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー):予選8番手/決勝8位
ガブリエル・ボルトレートは、明らかにチームメイトを速さで凌駕しつつある。イタリアでボルトレートは、再びQ3進出を果たした一方で、ベテランのニコ・ヒュルケンベルグはQ2で敗退した。
日曜日のレースでボルトレートは、素晴らしいオープニングラップを走った後、フェルナンド・アロンソを抑え続けた。ピットストップで順位が入れ替わったものの、アロンソはアスカリ・シケインの縁石をハードに越えた直後、サスペンション故障でリタイアしたため、ボルトレートはそこから比較的落ち着いたレースを展開し、今シーズン後半の印象的な活躍にさらに彩りを加えた。
キック・ザウバーが最小限のウイングレベルで、ストレートでは非常に速いがセクター2ではかなり遅くなるという状況だったが、ボルトレートはベテランのようにタイヤのデグラデーションを管理し、アントネッリのペナルティの恩恵も受けて、最終的に8位を獲得。直近6レースで4度目の入賞を果たした。