「アレックスに譲って、ついて行け」一度は拒否したチームオーダーを受け入れたサインツ【F1第16戦無線レビュー(1)】
2025年F1第16戦イタリアGP。スタート直後、最前列からスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)、2列目スタートのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)との間でポジションを巡るバトルが繰り広げられた。後方でも接触を伴う争いがあったが、そんななかウイリアムズはチームプレーで入賞を目指した。イタリアGP前半を無線とともに振り返る。
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イタリアGP決勝レースは、フォーメーションラップから波乱の展開となった。12番グリッドのニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)が、突然のトラブルに見舞われたのだ。
スティーブン・ぺトリック:油圧計のトラブルが出ている。ピットに戻ってリタイアだ。
ヒュルケンベルグ:マジか。
ぺトリック:残念だが、深刻なトラブルだ。ゆっくり戻ってきてくれ。
ヒュルケンベルグ:信じられないよ。
19台で迎えた決勝レース。ポールシッターのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がフロントロウのランド・ノリス(マクラーレン)を警戒し、イン側に寄せていく。ノリスは草地にはみ出しながらも、サイドバイサイドで1コーナーへ。フェルスタッペンはシケインをショートカットしていった。
ノリス:あれは何なんだ、あのバカ。僕を草地に押し出した。フェルスタッペン:(ノリスは)ブレーキングを遅らせて、そのまま真っ直ぐ行った。
ノリス:順位を戻すべきなのは明らかだよ。コーナーに最初に入っていったのは、僕だったんだから。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:マックス、順位を譲るんだ。
フェルスタッペン:その判断、間違いない?
ランビアーゼ:ああ。
フェルスタッペンは2周目のメインストレートで首位を譲った。
背後ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が熾烈な3番手争いを繰り広げていた。
2周目
ピアストリ:ルクレールはブレーキングで動きまくっている。おかげで減速しないといけなかった。
ルクレールがターン1のブレーキングでタイヤをロックさせ、直進していった。
ピアストリ:ルクレールは順位を戻すべきだ。
スタラード:ああ、見ていたよ。
ピアストリは6周目に自力で抜き返し、3番手に復帰した。
背後では、エステバン・オコン(ハース)とランス・ストロール(アストンマーティン)が15番手争いを演じていた。
ストロール:押し出された。
ゲイリー・ギャノン:了解。
ラウラ・ミュラー:ターン2でストロールを押し出して5秒ペナルティを科された。
オコン:あそこはコースが狭くて、スペースがなかったんだ。
ミュラー:私たちにはどうしようもできないわ。
8番手スタートのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、エネルギー回生に問題を抱えていた。
5周目
アロンソ:デプロイが遅い。
クリス・クローニン:今、調整中だ。もう2周ほど待ってくれ。
その影響か、アロンソはルイス・ハミルトン(フェラーリ)にかわされ、7番手に後退した。
アロンソ:君たちがモタモタしている間に、もっと順位を失うぞ。
対照的に10番手スタートのハミルトンは順調に順位を上げ、7周目には6番手につけていた。
リカルド・アダミ:次はラッセルだ。うまくタイヤを持たせているぞ。
ハミルトン:ノーズがうまく入らなくなってきたけどね。
5番手ラッセルとの差も、2秒前後まで縮めた。しかしそこからは、こう着状態が続く。
10周目
ハミルトン:僕はどこで遅い?
アダミ:ペースは悪くない。前が空いていれば(1分)24秒1で周回してるからね。ラッセルより速い。
ハミルトン:でもどこでタイムロスしたのか知りたい。
アダミ:わかった。確認中だが、ターン8、9、10の出口だろう。
高速のアスカリシケインでロスしているという指摘だった。
11周目
スタラード:タイヤはどうだ。
ピアストリ:悪くないよ。リヤがちょっと苦しいけど、まあ安定している。
スタラード:ターン8の進入速度を少し落としたほうがいい。
抜きにくいモンツァのコース特性もあって、そこからはタイヤを持たせながらの様子見状態が続いた。
13番グリッドから8番手まで順位を上げていたカルロス・サインツ(ウイリアムズ)に、僚友アレクサンダー・アルボンとの入れ替えの指示が飛んだ。
24周目
ガエタン・イエゴ:ターン4でアレックス(アルボン)に譲れ。走行ラインはそのままでいい。そのあとはアレックスのDRSについていけ。
サインツ:それより、この周でピットインしたほうがいいんじゃないか? そのほうがタイムロスしないで済む。
イエゴ:いや、ターン4で順位交換だ。まだペースは伸びている。もう少し引っ張りたい。
サインツ:もっと他のやり方があるはずだ。同意できない。
イエゴ:もし今ピットインしたら、5台連なってるDRSトレインの後ろにハマってしまう。ステイアウトしたほうがいい。指示に従うんだ。アレックスの方がペースがいいし、キミを引っ張ってくれるはずだ。
サインツ:わかった。
サインツは25周目にアルボンに8番手を譲り、ピットインしたのは30周目だった。
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F1第16戦無線レビュー(2)に続く