FIA、V8エンジンの早期復活を望むも、F1マニュファクチャラーからの反対を受け、会合を中止。議論を延長へ
F1にV8エンジンを完全な持続可能燃料を使用のもとで復活させるという計画を持つFIA会長モハメド・ビン・スライエムは、予定より早く新規定に移行することを含めて議論するために、マニュファクチャラーとの会合を予定していたが、これを中止することを決めた。一部のマニュファクチャラーが早期移行に否定的な考えを持っているため、より多くの準備と協議が必要であると判断したためだ。
ビン・スライエム会長は、ターボ・ハイブリッドパワーユニットを、簡素化した電動化システムを備え、完全な持続可能燃料で、20、000rpmを超える回転数で走らせるV8に置き換える構想について協議するため、9月11日、ロンドンにエンジンマニュファクチャラーおよびチーム代表を招集する予定だった。議題には、新たなエンジン規定を早ければ2028年に前倒しする可能性も含まれていた。2026年に導入される新たな技術規則は、2030年末まで有効となっている。
しかし、FIAは、この件について建設的な議論を行うためには、すべてのマニュファクチャラーとのより多くの個別の対話が必要だと感じ、今回の会合を取りやめた。現時点では、ホンダやアウディなどが望むものと、フェラーリやメルセデスが受け入れる用意があるものとの間に、大きな隔たりがあることが分かり、そのため、今、会合を開いても実りはないと判断したのだ。
イタリアGP後にフェラーリF1チーム代表フレデリック・バスールは、決定するまでには多くのことを精査する必要があると語った。
「以前の規則変更のプロセスと比べると、かなり前倒しで進められている。議論はしているが、簡単な選択ではない。早期に共通のプロジェクトを見いだせるかもしれないが、今日明日に決断を急ぐ必要はない」
「ファクトリーでは誰もが2026年に集中している。たとえ明日新しい規則が示されたとしても、我々は来年に向けた準備に注力しているので、それに取り組み始めることはない」
「正しい選択をする必要がある。パワーユニット・マニュファクチャラー全社、FIA、F1の間で合意を見いだせる項目がいくつかある。F1の利益のためにも、合意に向けて議論を進めるのは理にかなっている」
ほぼ同じ頃、メルセデスのホスピタリティでチーム代表トト・ウォルフも同様のテーマについて語り、「我々全員が、ファンの関心を引きつけるための可能な限り魅力的な規則を作るという目標を共有している」と述べた。
「V8は最良のコンセンサスであり、高回転の自然吸気エンジンにエネルギー回生システムを組み合わせることで、依然として性能面での差別化要素となり得る。そしてそれは持続可能な燃料と非常にうまく合致する」
ただし、誰もが2026年規則のパワーユニットに巨額の投資を行っているため、過度に早期での切り替えは望まないとウォルフは述べた。
「ほとんどのOEMは『2年以内に新エンジンを開発する必要があるといった、二重のコスト計画は望まない』と述べている。我々はそれを望んでいないのだ」
「今はモハメド・ビン・スライエムや(F1 CEOの)ステファノ(・ドメニカリ)との対話が重要だ。彼らの期待は何なのか、という話だ。そしてすべてのOEM、すべてのエンジンマニュファクチャラーをテーブルにつかせ、『我々は何をすべきか』について議論する必要がある」
「ただ、利益は一致していると言えるだろう。現在の議論は非常に健全でバランスが取れており、理性的なものだ」
一方で、アウディとホンダは早期の変更には否定的であり、おそらくフォードやキャデラックもそうだろう。
2026年からアウディとして参戦するキック・ザウバーの代表ジョナサン・ウィートリーは、こう説明した。
「アウディがF1参入を決めた根本には三つの柱があった。高効率エンジン、先進的なハイブリッド技術、そして持続可能な燃料である」
「この点に関して、我々の立場は変わっていないと思う。私の知る限り、我々はこの立場を今後も長い間、維持し続けるだろう」