追い抜きを許したタイヤ交換戦略の改善を誓う「入賞を狙えるペースはあった」接触が大きな痛手に【角田裕毅F1第16戦分析】
2025年F1第13戦ベルギーGP以来、予選でQ3に進出し、10番手を獲得した角田裕毅(レッドブル)。第16戦イタリアGPでは、予選5番手のルイス・ハミルトン(フェラーリ)が、前戦オランダGPで次戦での5グリッド降格ペナルティを受けていたため10番手からスタートすることになり、角田はひとつポジションを上げて9番グリッドに着いた。
スタートで出遅れた6番手のアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)をかわして8番手となった角田だが、1コーナーで行き場を失い、シケインをショートカット。直後の第2シケインでハミルトンにポジションを明け渡して、再び9番手となった。
その後、18周目にアントネッリに先行を許した角田。チームはその周までふたつ後ろの11番手を走っていたオリバー・ベアマン(ハース)がピットインしたのに反応して、19周目にピットインさせる決断を下す。
ミディアムタイヤでスタートした場合のピレリの推奨ピットストップは22周目から28周目。やや早すぎると思えるピットストップについて、角田はこう振り返った。
「最高のタイミングかと言われると、どうかなと思います。今後に向けて改善していきたいです」
ミディアムタイヤからハードタイヤに履き替えた角田は、ピットアウト直後にベアマンの前でコースに復帰することに成功したものの、温まりにくいハードタイヤで思うようにペースアップすることができず、直後の第2シケインでベアマンにオーバーテイクされてしまう。つまり、結果的にベアマンのアンダーカットを阻止できなかった。
このピットストップが、次なる悲劇を招いてしまう。ベアマンに先行された角田は最後尾に後退。前にはピットインしないで使い古したタイヤで走行するドライバーたちがいた。そのひとりがリアム・ローソン(レーシングブルズ)だった。
27周目の1コーナーでローソンをオーバーテイクした角田だったが、1コーナーを立ち上がった後、角田のスリップストリームを利用して第2シケインでサイド・バイ・サイドとなる。ブレーキングで2台は接触。2台ともコースに復帰して、レースを続行したものの、角田は接触した右側のフロアにダメージを負ってしまう。
「もし、ポイント争いをしていたのなら、彼の行動は理解できますが、彼は最後尾からのスタートで、入賞争いすらしていないのに、なんであんな行動に出たのか理解できません。コース上ではライバルでも、絶対に越えてはいけないラインがあるはず」
そう言って、角田は怒りをあらわにした。ローソンとの接触によって負ったダメージについて、角田はこう説明した。
「どこにどれくらいのダメージがあったかは、まだ詳しく聞いていないですが、結構大きなダメージだったと聞いています。だから、全体的にグリップがなく、特にダメージを受けた(右)側のグリップがない状態でした」
その接触がなければ、ポイント争いをするペースは維持できたのか? 角田はこう答えた。
「(序盤からペースが)すごくよかったというわけではありませんでしたが、ポイントを狙えるだけのペースはありました」
結果が求められる後半戦の角田にとって、ローソンとの接触はフロアのダメージ以上に大きな痛手となってしまった。