2025.09.08

【決勝日レポート】
【F1第16戦決勝の要点】チームオーダーを受け入れたピアストリの大人な態度。確執と無縁のマクラーレン


2025年F1第16戦イタリアGP ランド・ノリスとオスカー・ピアストリ(マクラーレン)
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 2025年F1第16戦イタリアGPの決勝終盤。首位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を2番手のランド・ノリス(マクラーレン)、3番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が追う。しかし、チェッカーが近づくにつれてフェルスタッペンのポール・トゥ・ウィンは、ほぼ確実な情勢だった。

 マクラーレンはまず、46周目に3番手のピアストリからピットに入れた。通常なら順位が前のノリスを先にピットインさせるのが定石だ。しかし4番手のシャルル・ルクレール(フェラーリ)が自己ベストを更新し続けるペースで迫っており、ルクレールの後ろでコース復帰するのを嫌っての予防措置だった。

 ピアストリのタイヤ交換がスムーズに終わり、続く47周目にノリスがピットイン。しかし左フロントタイヤの交換に手間取り、停車時間はピアストリより4秒も長くなってしまう。これで両者の順位は、逆転してしまった。このままチェッカーを受けた場合、ドライバーズランキング首位のピアストリと2位ノリスの差は37ポイント差まで広がる。

 するとチームはピアストリに「チーム側のミスで順位が入れ替わってしまった。悪いが順位を戻してくれ」と、指示を出した。いつも冷静、なおかつフェアな戦いを信条とするピアストリも、これにはさすがに異議を申し立てた。「ピット作業で遅れるのも、レースの一部だよね」と。しかしすぐに「それがランドの助けになるのなら」と、ターン1のブレーキングでノリスに順位を譲った。

 前日予選でのピアストリは、フェルスタッペン、ノリスに次ぐ3番手にとどまった。4番手ルクレールとの差は、わずか0.025秒。そして決勝レースでは2周目にそのルクレールにかわされて4番手に後退。なんとか抜き返したものの、この週末のマクラーレンに前戦までの圧倒的な強さがないことは明らかだった。

 それでもピアストリはレース終盤、7秒近くあったノリスとの差を、ピットイン直前の45周目には3.7秒まで縮めていた。ほぼ独走体制の首位フェルスタッペンには届かないにしても、ノリスから2位をもぎ取る気力はみなぎっていた。それだけに「順位を入れ替えろ」というチームオーダーには、納得いかなかったはずだ。それでもピアストリは、その指示に従った。

 表彰台に上がる前の控え室で、ノリスとピアストリは決勝レースのダイジェスト映像を見ながら何事もなかったかのように雑談を交わしていた。その姿からは、レース終盤の出来事が影を落としているようにはまったく見えなかった。

 今季のタイトル争いは、マクラーレンふたりのチームメイトバトルにほぼ絞られたと言っていい(フェルスタッペンが絡んでくる余地が、まだあるとはいえ)。それでもふたりが戦うのはコース上だけで、それ以外の場で相手を口汚く罵ったりすることは決してない。

 かつてのアイルトン・セナとアラン・プロスト、最近ではルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグのチームメイトバトルを見てきたファンからすれば、ノリスたちの仲の良さを少し物足りなく感じたり、偽善的だと思ったりするかもしれない。しかしこういう和やかなタイトル争いも、悪くないんじゃないだろうか。

ランド・ノリス(マクラーレン)のタイヤ交換シーン
2025年F1第16戦イタリアGP ランド・ノリス(マクラーレン)のタイヤ交換
2025年F1第16戦イタリアGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
2025年F1第16戦イタリアGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)


(Text:Kunio Shibata)

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