ボッタスの僚友選びでキャデラックF1上層部の思惑が交錯。代表の理想はドルゴヴィッチも、CEOがペレスを望んだか
キャデラックは近日中に、2026年のF1参戦に向けた最初のドライバーラインアップを発表する見込みだ。バルテリ・ボッタスのチームメイトの名前は、この新規参戦チームの実権を誰が握っているのかを推し量る重要な手掛かりとなるだろう。
ボッタスとキャデラックとの契約は、サマーブレイク前に締結されたようだ。彼の代理人は短期間、アルピーヌとも交渉したが、ベルギーGP直後に話し合いを打ち切った。
現在注目されているのは、2026年にボッタスとコンビを組むドライバーは誰かということだ。
この夏休み期間に、ベテランのセルジオ・ペレスが有力候補として浮上し、彼がふたり目のキャデラックF1ドライバーとなる可能性が高まっている。一時はアストンマーティンのリザーブドライバーであるフェリペ・ドルゴヴィッチが有力とされていたが、キャデラックに近い筋によれば、その可能性はかなり薄れたようだ。
チーム代表のグレアム・ロードンは当初、有望な若手と経験豊富な速いドライバーを組ませることが理想だと語っていた。ベテランふたりを組ませた場合、彼らは成績が互角だったとしても、大きな競争心を抱かない可能性があるからだというのが、ロードンの考えだった。
対照的に、ザウバーやハースの例を見れば分かるように、若手ドライバーとベテランの組み合わせは、双方を限界まで引き上げる。若手は高い評価を得たベテランより自分の方が速いことを証明しようとするし、ベテランは自分が今も全盛期の速さを持っていることを示そうと意気込むからだ。
ボッタスが第一候補であることは明白だったため、ロードンは、若手ドライバーについて検討していた。ただ、完全なルーキーを乗せることには消極的だった。今年F1にデビューしたガブリエル・ボルトレートやアイザック・ハッジャーは、F1マシンでの走行経験が少ないにもかかわらず、非常に良いパフォーマンスを見せている。それでも、FIA F2のドライバーと契約して来年F1で走らせるのは、キャデラックにとってはリスクが大きい。キャデラックは旧型F1マシンを持っていないため、事前にルーキーに経験を積ませることができないのだ。
そのため、セカンドシートの候補には、ミック・シューマッハー、フレデリック・ベスティ、周冠宇らの名前も挙がった。しかし周冠宇については、米中間の貿易摩擦を理由にGMの経営陣が難色を示したとされる。ベスティは経験不足、シューマッハーについては、ボッタスを限界まで追い込むことは期待できないと判断された。そうして、アストンマーティンでF1走行の経験を積み、関係者の評価も高い25歳のドルゴヴィッチが、ロードンにとっての本命となった。
しかし、キャデラックF1活動を運営するTWGモータースポーツのCEO、ダン・タウリスは、これに賛成しなかったようで、若手よりもペレスの起用を望んだといわれる。キャデラックは近いうちに2026年のドライバーラインアップを発表するものと考えられている。ボッタスのチームメイトが明らかになることによって、キャデラックF1チームにおいて最終決定権を誰が持つのかについても示される形になるだろう。