ペレスのキャリア初優勝で、レッドブル加入のチャンスが遠のいたヒュルケンベルグ。かつてのやり取りをマルコが振り返る
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、ニコ・ヒュルケンベルグが2020年のF1シーズンの終わりに、レッドブル加入にどれだけ近づいていたかを明かした。
2019年末にルノーのシートを失ったヒュルケンベルグは、2021年のマックス・フェルスタッペンのチームメイトとして本格的に検討されていたが、シートを得ることはできなかった。2020年シーズンに入ると、セルジオ・ペレス(当時はアストンマーティンの前身であるレーシングポイントに所属)がサクヒールGPで画期的な勝利を飾り、2021年に向けた状況はペレスにとって有利になった。
それでもマルコが説明したように、ヒュルケンベルグとレッドブルの関係は2020年にすでに芽生えていた。
「当時、彼は(レッドブル所有の)『Servus TV』の共同コメンテーターだったと思う。そこですでに関係があったため、話し合いが始まっていた」と、マルコは『F1-Insider』に語った。
「だがその後、ペレスがバーレーンで優勝したと思う。そのおかげですべてのことがペレスの方に向いた」
マルコは、当時の決断は決して簡単なものではなかったと認め、ヒュルケンベルグがチームにとって大きな財産となり得たことを示唆した。
「とても仲が良いので、非常に楽しい時間になったと思う。確かにヒュルケンベルグはポイントを確実に獲得できるし、我々のマシンなら上位に食い込めただろう」
ペレスはその後4シーズンをフェルスタッペンとともに過ごし、レッドブルがF1を席巻するなかで重要なサポート役を務め、2025年にルーキーのリアム・ローソンと交代した。
マルコは自身の選択を後悔していないと主張し、レッドブルのドライバー育成システムの幅広い成功を強調した。
「実際、私はその決定を支持している。我々のプログラムに残らなかったドライバーの95%以上がフォーミュラE、WEC世界耐久選手権、DTMドイツ・ツーリングカー選手権などのレースに参戦することを、念頭に置かなければならない」
「彼らは民間の職業で得られるよりもはるかに多くの収入を得ているうえに、モータースポーツで競うという、彼らの好きなことをしているのだ。そして、それは主に我々が関与したことで可能になった」
「また、F1は最高峰だ。才能だけでなく、特別な特性と、精神的にも全体的な体質の面でもある種の強さが必要だ」
ヒュルケンベルグにとって、レッドブルとのニアミスはF1への道のりを阻むものではなかった。ベテランドイツ人ドライバーのヒュルケンベルグは、2022年にアストンマーティンのリザーブドライバーとして2レースに出場した後、2023年にハースに加入し、今年初めにザウバーに移籍した。
マルコの告白は、たった1回のレースでキャリアやチーム戦略が一変する可能性があるF1の予測不可能な性質を強調している。レッドブルがタイトル獲得を目指し続けるなか、ヒュルケンベルグが彼らのラインアップに加わっていたら、という「もしも」の仮定は、興味を引かれるささやかな脚注としてF1の歴史に残り続けるだろう。