2025.08.22

【F速プレミアム】
マクラーレン、チャンピオンシップ後半戦は駆け引きなしのチーム内バトル/スペイン人ライターのF1コラム


2025年F1第14戦ハンガリーGP ワンツーフィニッシュを飾ったランド・ノリスとオスカー・ピアストリ(マクラーレン)
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 F1第14戦ハンガリーGPを終え、シーズン前半戦はマクラーレンがチャンピオンシップで優勢な状況となっている。他にはザウバーの好走や、ハミルトンの苦戦など予想外な出来事も。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがF1シーズンの前半戦を語る。
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 2025年シーズンがかなり激しいスタートを切ったが、F1は夏休みに入る。数週間の休息があるが、今年最後の10レースが始まったら、多くの興奮がもたらされるはずだ。今年のシーズンの始まりには興味深い要素がたくさんあった。これまで見てきたことすべてを振り返るのに、今はちょうどよい時期だと思う。

■予想されていたこと

 マクラーレンが手ごわいチームにならないと予想した人はいないと思う。昨年の彼らのパフォーマンスの驚異的な飛躍のあと、タイトル争いはランド・ノリスとオスカー・ピアストリの間で争われることになるのは明らかだった。もちろん、レッドブルかフェラーリが彼らを苦しめるかもしれないと誰もが期待していたが、その期待はおそらく非現実的だった。

 さらにこの2年間にわたって、マクラーレンのふたりのドライバーのうち、総合的に見てノリスが最高のドライバーであったことは事実だ。しかし、ピアストリの成長は、F1での2年目において非常に明らかになった。彼はチームメイトと対等な立場でシーズンをゼロからスタートし、世界チャンピオンになるために必要な資質を備えていることを証明し、2025年もこれまでそのことを証明し続けている。

 これまでの最初の14レースを振り返ると、ピアストリが6勝、ノリスが5勝しており、両者の獲得ポイントの差はわずか9ポイントだ。残り10レースで、ノリスが次の数グランプリに好調な勢いを持ち込めば、興味深いタイトル争いが繰り広げられるはずだ。

 予想通りだったもうひとつの要素は、マクラーレンが他のチームに比べて好調だということもあるが、どの時点でも彼らがチームオーダーを一切出していないことだ。言い換えれば、ピアストリがドライバーズランキングで3番手となっているマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に対し97ポイントのアドバンテージを持っていることを考慮すると、今年は両方のタイトルをマクラーレンが獲得すると言っても間違いないだろう。少なくとも、彼らは駆け引きをしないことに決めたので、ファンは古き良きチーム内のバトルを楽しむことができる。

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■ポジティブなサプライズ

 F1ではいつものことだが、どのシーズンにも、小規模チームが全員の予想を上回る成績を収めるなど、興味深くポジティブなサプライズが生まれる。今年は、その点に関して状況がかなりはっきりしているようだ。第一に、ザウバーはニコ・ヒュルケンベルグの待望の初表彰台獲得など、一連の素晴らしい結果でF1界を驚かせた。

2025年F1第12戦イギリスGP ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)
2025年F1第12戦イギリスGP ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)

 しかしそれ以上に、チームのパフォーマンスは非常に良好で、このことは来年以降のアウディにとってもよい兆候だ。ヒュルケンベルグ自身もレースで非常に優れたパフォーマンスを見せているが、ここ数レースで注目を集めているのはガブリエル・ボルトレートの予選結果だ。この若きブラジル人は、フェルナンド・アロンソ自身のマネジメントを受けているが、彼はシーズンを通して飛躍的に成長し、ベテランのチームメイトを上回るまでに至っている。

 それだけでなく、アイザック・ハジャーもF1での最初の数レースで非常によい仕事をした。確かに、レーシングブルズのマシンはルーキードライバーにとって“扱いやすい”マシンという発想で作られているようだが、ハジャーは速さを見せており、そのカリスマ性により、このスポーツでいち早く確固たる地位を築きつつある。

 最近は、リアム・ローソンの復活が彼の影に少し隠れてしまっているが、シーズン序盤にレッドブルから放出されたローソンがそこから立ち直れたことは、今シーズンのもうひとつの明るい話題でもある。

 最後に、今年ウイリアムズとアレクサンダー・アルボンは、しばしば素晴らしい活躍を見せている。アルボンがアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)にわずか10ポイント差のところまで追っているという事実がそのことを物語っている。元フェラーリのスターであるカルロス・サインツのパフォーマンスは、期待されていたほどではなかったものの、チームの復活はまさに素晴らしいものだった。

2025年F1第14戦ハンガリーGP アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)
2025年F1第14戦ハンガリーGP アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)

 しかし何よりも、我々はこれまでで最もタイトなF1グリッドを楽しんでいるという事実を祝うべきだ。そう、チーム間の差がはっきりしていることが多いのは事実だ。マクラーレンを倒すのは容易なことではないし、上位4チームと残りのチームの間には依然として明らかな差がある。しかし状況はインディカーとよく似ており、マシンの差が小さいため、競争力の低いマシンで意気込みのあるドライバーが走れば、興味深い結果に届く可能性がある。そして、それ自体はよいことしかない。来年のレギュレーション変更によって、この特定の要素が維持されるか、変化するかは誰にもわからないが……。

■ネガティブなサプライズ

 F1に対する見方によって意見は異なるかもしれないが、“今シーズン最大の失望”と容易に呼べる状況はいくつかあると思う。そして、それは興味深いことだと思う。なぜなら、話すべきポイントがいくつかあるからだ。しかし結局のところ、今シーズン最大の話題は、マクラーレンに挑戦できるチームが存在しないことだと私は考えている。

 2024年シーズンの素晴らしい終わりのあと、レッドブル、フェラーリ、メルセデスが昨年のコンストラクターズチャンピオンと戦うことが予想される状況となった。しかしマクラーレンは抜きん出ており、他のどのチームも近づくことができていない。レッドブルはマックス・フェルスタッペンの活躍で好調なシーズンスタートを切ったが、その勢いも衰えつつある。現チャンピオンは過去4回のレースで表彰台に上がれず、チームは明らかに後れを取っている。

 だが問題はどこでも生じており、グリッドの前方にいる他のチームでもそのようになっている。ルイス・ハミルトンは、フェラーリでの新しい人生にうまく適応できていない。公平に言えば、彼はハンガリーを除くすべてのレースでポイントを獲得している。中国では技術的な理由で失格となったが、彼が今もある程度のパフォーマンスを発揮していることが示されている。

2025年F1第14戦ハンガリーGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)
2025年F1第14戦ハンガリーGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)

 しかし、7度の世界チャンピオンは一度も表彰台に上がれず、上海でのスプリントレースでの勝利も楽観的な見通しを生み出すのに十分ではなかった。実際、ハミルトン自身もハンガリーでは落胆しており、フェラーリはドライバーの交代を検討すべきかもしれないとまで語った。自身があるべきパフォーマンスを発揮していないと感じていたからだ。

 また、ハミルトンの古巣メルセデスでも状況は厳しく、アントネッリは芳しくない結果が続いている。彼が表彰台に上がったのはカナダでの1回だけだ。今年はアントネッリにとって最初の年であり、彼は間違いなくそこから立ち直るだろうが、パフォーマンスが上がるどころか下がっているという事実は、おそらくアントネッリに期待されていたことではない。

 それに加えて、ハンガリーGPの結果によって順位は上がったものの、アストンマーティンは期待を下回る成績を収めているチームとして見るべきかもしれない。しかし、アルピーヌほど苦しんでいるチームはない。ジャック・ドゥーハンはわずか数レースしか続かなかったし、フランコ・コラピントはペースでピエール・ガスリーに匹敵できないようだ。マシンに競争力がないことを考えると、エンストンのチームは簡単には抜け出せない状況にあるようだ。

 これから先、2025年シーズンの運命を決めるエキサイティングな4カ月が待っている。一方で、新たな世界チャンピオンが誕生することになるだろうが、それはいつだって大きな出来事だ。特に来年の新レギュレーションを考慮すると、F1の近い将来に多大な影響を与える可能性のある話がたくさんある。そしていつものように、私は同じ気持ちだ。現在は興味深く、集中すべきことがたくさんあるが、私の心はすでに地平線を見ている……。



(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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