【F1ドライバーを支える人々】オコンのF1キャリアに寄り添うマネージャー。アルピーヌからハースへの移籍を実現
過酷なシーズンを送りつつ、キャリアを切り開いていかなければならないF1ドライバーたちには、それぞれすぐそばで支える仕事上のパートナーがいる。この連載では、ドライバーの心身をサポートするマネージャー、フィジオ、アドバイザーといった人々に焦点を当てる。今回紹介するのは、ハースのエステバン・オコンのマネージャーを長年務めるミシェル・ベルテルモだ。
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2025年に向けて多くのドライバーが他チームへと移籍した。つまり、昨年、彼らのマネージャーたちは、複数のチームとの間で交渉を行う必要があり、忙しい年を過ごしたということになる。
マネージャーたちは、自分のドライバーに最善の提案をするために、さまざまな選択肢を把握しなければならない。チーム側は複数のドライバーたちと交渉しているため、マネージャーは優れた人脈を生かしつつ、話し合いを有利に進めることが重要だ。
ドライバーのキャリアにとって重要な役割を果たすマネージャー。両者が一緒に仕事をすることになるきっかけはさまざまだが、エステバン・オコンの場合は、ほとんど偶然によってそれが起こった。
オコンのマネージャーは、ミシェル・ベルテルモという人物で、彼はオコンがF1に昇格して以来、ほぼ全キャリアにわたってサポートを行っている。
ベルテルモは、高校を卒業してからアメリカでフリージャーナリストとして活動、その後、ビジネスの分野に焦点を当てるようになり、モントリオールの大学に進学した。その後、コミュニケーション分野に移行したことが、ドライバーマネジメントへの道につながった。
2013年に著名な企業ローレウスにコミュニケーションコーディネーターとして入社したベルトレモは、すぐに責任ある立場に就いた。そして、既存のコネクションを通じて、メルセデスからオファーを受けた。メルセデスは、ジュニアドライバーのひとりであるオコンの傍で働いてほしいと、ベルテルモに依頼した。オコンは2016年後半にF1初出場を果たしたが、2018年末でレギュラーシートを失った。ベルテルモは、2019年の初め、オコンがレーシングポイントのシートを失った後に、正式にメルセデスチームの一員になった。
そうしてベルテルモは、フルタイムでF1の世界で働くようになった。2020年にオコンがルノーと契約してレースに復帰した時には、メルセデスとオコンとの間の橋渡し役として働き、オコンとの関係を維持した。
オコンは過去にトト・ウォルフの傘下にいたにもかかわらず、メルセデスに復帰する機会は得られなかった。そのため、ベルテルモの役割は変化していった。ルノーがアルピーヌにリブランドされると、ベルテルモはオコンの公式プレスオフィサー兼コマーシャルマネージャーとなり、彼のスケジュールとビジネス関連業務を管理するようになったのだ。
オコンがエンストンのチームで5シーズンを過ごしている間に、ベルテルモは自分の会社を設立した。昨年は、年末に多くのドライバー契約が終了する予定で、ドライバーマーケットが活発化する年だった。そしてオコンも移籍の可能性に直面していた。
2024年初め、ベルテルモはMB1マネジメント社を設立。オコンのために複数のチームと交渉を行った。最終的に、政治的な要素が少なく、ドライバーがトラック上の結果という核心部分に集中できる環境が提供されるハースが、最も魅力的な選択肢ということになった。
2024年の最後の1戦を残してオコンがアルピーヌを離れることになったのは残念な出来事だったが、翌年に新しいプロジェクトに移ることが決まっていたので、その意味ではオコンもベルテルモも安心して過ごすことができた。
現在、オコンにはハースチーム内に専属のプレスオフィサーがいるものの、ベルテルモは今も彼の広報アドバイザーの役割を担っている。
ベルテルモは自身の会社を立ち上げたにもかかわらず、可能な限りドライバーのそばでトラックサイドにいることの重要性を認識している。2025年シーズンの開幕時には、オコンのトレーナーであるトム・クラークが食中毒で体調を崩し、土曜日と日曜日にサーキットに来られなかったことがあった。その際にベルテルモは代理としてドライバーコーチの役割も果たした。
F1界における移籍交渉の経験を積んだベルテルモは、今後はオコン以外のドライバーたちとも仕事をすることになるかもしれない。