海外ライターによる全F1ドライバー中間評価:別格の満点はひとり。F1にはふさわしくないと酷評される者も
ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、全ドライバーのシーズン前半戦でのパフォーマンスを評価、最高の六つ星(素晴らしい!)から一つ星(残念)までの6段階に分け、チームメイト同士の比較も行った。
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■オスカー・ピアストリ:★★★★★
時に弱い週末を送ることがあるが(オーストリアでは完全にチームメイトの陰に隠れた)、総合的に見れば、ピアストリこそがワールドチャンピオンへの道を先頭で進んでいる男といえるだろう。
■ランド・ノリス:★★★★
レースクラフトが常に強力なわけではなく、依然としてミスが多すぎる。非常に浮き沈みの激しいシーズンを送り、カナダでの低迷からオーストリアとハンガリーでの見事なパフォーマンスまで、振れ幅が大きい。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
オスカー・ピアストリ 11勝/ランド・ノリス 6勝
●第14戦までの獲得ポイント
オスカー・ピアストリ 284点/ランド・ノリス 275点
■シャルル・ルクレール:★★★★
新しいチームメイトから大きなプレッシャーを受けることはほとんどなく、ミスの数もそれほど多くない。だが、2025年前半バージョンのルイス・ハミルトンを上回ることは、難しいことといえるだろうか。
■ルイス・ハミルトン:★★
フェラーリへの移籍は明らかに、サー・ルイスが期待していた流れにはなっていない。昨年ジョージ・ラッセルに敗れたのに続き、今年はルクレールに負けている。最近ではいら立ちを示し、ミスも出てきた。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
シャルル・ルクレール 12勝/ルイス・ハミルトン 5勝
●第14戦までの獲得ポイント
シャルル・ルクレール 151点/ルイス・ハミルトン 109点
■マックス・フェルスタッペン:★★★★★★
ひとり、他とはかけ離れたレベルにいる存在。レッドブルRB21の本来の能力では不可能なリザルトを達成している。しかしスペインでのジョージ・ラッセルとの接触はいただけなかった。あれにより評価をひとつ下げることも考えた。
■角田裕毅:★
かつては有望だったキャリアが今年台無しになるかもしれない。おそらく日本人としては史上最も優れたF1ドライバーであるが、フェルスタッペンには全く追いつくことができず、時に混乱しているように見える。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
マックス・フェルスタッペン 3勝/リアム・ローソン 0勝
マックス・フェルスタッペン 14勝/角田裕毅 0勝
●第14戦までの獲得ポイント
マックス・フェルスタッペン 36点/リアム・ローソン 0点(第2戦まで)
マックス・フェルスタッペン 151点/角田裕毅 7点(第3戦〜第14戦)
■ジョージ・ラッセル:★★★★
ラッセルの好調さは今季のポジティブなサプライズのひとつ。メルセデスのチームリーダーの座を引き継ぎ、常にマシンから最大限の力を引き出している。若き新チームメイトが自信を失った理由のひとつがラッセルにある。
■アンドレア・キミ・アントネッリ:★★★
メルセデスのシートに値することを証明した。ミスは何度かあったが、それは学習プロセスの一部である。将来のスーパースターだが、現時点では少し自信を失っているようだ。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
ジョージ・ラッセル 15勝/アンドレア・キミ・アントネッリ 2勝
●第14戦までの獲得ポイント
ジョージ・ラッセル 172点/アンドレア・キミ・アントネッリ 64点
■アレクサンダー・アルボン:★★★
サインツが加入したことで、アルボンはチームメイトからプレッシャーを受けるようになった。それにより、チームメイトが弱かったころより、アルボンはさらに向上したようだ。残念なのは、ウイリアムズが今季、不本意なパフォーマンスにとどまっていることだ。
■カルロス・サインツ:★★
“世界一運の悪いレーシングドライバー”の称号を同胞アロンソと争っているサインツ。ウイリアムズにはすぐに馴染んだが、依然として結果が伴っていない。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
アレクサンダー・アルボン 10勝/カルロス・サインツ 7勝
●第14戦までの獲得ポイント
アレクサンダー・アルボン 54点/カルロス・サインツ 16点
■フェルナンド・アロンソ:★★★
アロンソには今もF1で戦う力がある。予選の統計を見ればそれは明らかだ。本来であれば、チームメイトよりもずっと多くのポイントを獲得していたはずだった。しかし彼は(彼自身の言葉を借りれば)“世界一運の悪いレーシングドライバー”であるため、多くのポイントを失った。
■ランス・ストロール:★
シルバーストンでの短く予期せぬ活躍を除けば、2025年はストロールがF1にふさわしくない、あるいはF1を心からは楽しんでいないことを強調するシーズンとなっている。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
フェルナンド・アロンソ 16勝/ランス・ストロール 1勝
●第14戦までの獲得ポイント
フェルナンド・アロンソ 26点/ランス・ストロール 26点
■ニコ・ヒュルケンベルグ:★★★
ついに表彰台フィニッシュを達成! ベテランのヒュルケンベルグは、ザウバーで再生し、チームをアウディ時代に導くドライバーとして適任であることを証明した。
■ガブリエル・ボルトレート:★★★
ボルトレートは、1ラップで稲妻のように速いヒュルケンベルグを予選リザルトで上回っている。ルーキーイヤーのスタートは目立たないものだったが、このところは毎戦、非常に印象的なパフォーマンスを見せている。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
ニコ・ヒュルケンベルグ 7勝/ガブリエル・ボルトレート 10勝
●第14戦までの獲得ポイント
ニコ・ヒュルケンベルグ 37点/ガブリエル・ボルトレート 14点
■アイザック・ハジャー:★★★
F1デビュー戦のウォームアップラップでコースアウトしたが、それ以降は素晴らしい速さを示している。今年のポジティブなサプライズのひとりで、適切なチームにいれば大きく飛躍できる可能性があるドライバーだ。
■リアム・ローソン:★★
レッドブルでは、フェルスタッペンのチームメイトというプレッシャーに耐えられなかった。2戦でレーシングブルズへ戻されたが、ここでローソンは自信とキャリアの両方を立て直しつつある。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
アイザック・ハジャー 1勝/角田裕毅 2勝
アイザック・ハジャー 11勝/リアム・ローソン 3勝
●第14戦までの獲得ポイント
アイザック・ハジャー 0点/角田裕毅 3点(第2戦まで)
アイザック・ハジャー 22点/リアム・ローソン 20点(第3戦〜第14戦)
■エステバン・オコン:★★
アルピーヌ(そしてガスリー!)から離れたことはオコンにとって良いことだったし、ハースにとっても、オコンは良い選択だった。予想外に多くのポイントを獲得。しかしすでにベアマンからのプレッシャーを受けている。
■オリバー・ベアマン:★★
まだルーキーらしいミスをしているが、ここまでのところ、経験豊富なオコンと予選対決でほぼ互角というのは印象的である。将来のスーパースター候補だ。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
エステバン・オコン 9勝/オリバー・ベアマン 8勝
●第14戦までの獲得ポイント
エステバン・オコン 27点/オリバー・ベアマン: 8点
■ピエール・ガスリー:★★★★
ガスリーはチームメイトのルーキーふたりを予選で上回り、チームの全ポイントを獲得。常にマシンから最大限を引き出すドライバーという評判を確立した。限りなく5つ星に近いパフォーマンスだった。
■フランコ・コラピント:★
昨年、ウイリアムズで驚異的な速さを見せた後、限界を超えて走り始め、頻繁にクラッシュするようになった。アルピーヌに入ってからは、速さを失った上に、相変わらずクラッシュしている。
■ジャック・ドゥーハン:★
シーズンが始まる前から交代をうわさされ、強烈なプレッシャーの下で走らなければならなかった。F1では公平さは決して約束されない。
●第14戦までの予選対決(スプリント予選含む)
ピエール・ガスリー 7勝/ジャック・ドゥーハン 1勝
ピエール・ガスリー 7勝/フランコ・コラピント 2勝
●第14戦までの獲得ポイント
ピエール・ガスリー 7点/ジャック・ドゥーハン 0点(第6戦まで)
ピエール・ガスリー 13点/フランコ・コラピント 0点(第7戦〜第14戦)