新人アントネッリが3番手を守り抜き初表彰台「ずっと欲しかった。みんなありがとう」【F1第10戦無線レビュー(2)】
2025年F1第10戦カナダGP。ドライバーズ選手権を争うマクラーレンのオスカー・ピアストリとランド・ノリスは、直近のライバルであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に後れをとっていた。ひとつでも順位を上げたいところだったが、ピアストリとノリスは接触。一方、そのピアストリをスタート直後に交わしたアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)は、キャリア初表彰台を獲得した。カナダGP後半を無線とともに振り返る。
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37周目、2番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2度目のピットに向かった。3番手アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)は、ほぼ1秒後方まで迫っていた。
ピーター・ボニントン(→アントネッリ):フェルスタッペンがピットに入った。プッシュし続けろ。
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):アントネッリがピットインした。出口で交錯する。オーバーテイクボタンを押せ。
フェルスタッペンはからくもアントネッリに先行した。
ランビアーゼ:第2スティントは25周だった。次は33周を予定している。
ピットスタートのピエール・ガスリー(アルピーヌ)は、ハードタイヤで超ロングスティントに挑んでいた。39周目の時点で、15番手。背後からはずっとフレッシュなタイヤのライバルたちが迫っていた。
カレル・ルース:後ろからストロールとアルボンが来ている。タイヤは20周若い。
ガスリー:ストレートで全員に追いつかれている。まるで3Dゲームみたいだ。
16周目にハードタイヤに履き替えたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、そろそろタイヤが限界に来ていた。
トム・スタラード:左フロントにグレイニングなしで最後まで行けるか?
ピアストリ:細い幅が出てるね。
45周目
ピアストリ:運転が辛くなっている。グレイニングというよりデグラデーションの感じだ。
フェルナンド・アロンソ:2ラップごとに、ターゲットをアップデートしてくれ。
ブラッドリー・ジョイス(→ランス・ストロールに):前はガスリーだ。あのタイヤで44周走ってる。
ヘアピンでインを刺し、ガスリーを抜き去っていくストロール。しかし長いストレートでガスリーが抜き返しにかかった。するとストロールはアウト側に寄せ、ガスリーは芝生に押し出された。
47周目
ガスリー:あれはペナルティだよ。押し出された。
ルース:見ていたよ。
ガスリー:草の上に押し出された。
これでストロールには10秒のタイムペナルティが科された。
50周目
アロンソ:2周ごとにターゲットをアップデートしてくれって言ったのに、何も答えてくれてないじゃないか。
クローニン:15周、15周プラスで行こう。
アロンソ:ちょっと難しいかも。だから(頻繁な)ターゲットが必要だったのに。フロントにグレイニングが出まくっている。全体の絵が見えない。(ターゲット)ラップタイムももらっていないし、何もない。何もわからない。闇のなかを走っている感じだ。
常にレース全体を見渡して戦いを進めてきた、いかにもアロンソらしい不満だった。
上位勢では、スティントを伸ばして暫定首位を走るシャルル・ルクレール(フェラーリ)のタイヤが、限界に来ていた。
52周目
スタラード(→ピアストリ):ルクレールのペースが落ちている。フェルスタッペンとアントネッリとの戦いになる。
ルクレール:ピットしないでなにを待ってるんだ?
ボッツィ:(次の)ミディアムで長く走りたくない。
ルクレール:ミディアムは悪くないってば。
ルクレール:ファステストラップは何秒だ?
ボッツィ:(1分)14秒1だ。でも関係ないからね。もうポイントつかないから。
ルクレール:そっか。そうだった。
つい、うっかりといったところか。ファステストポイントが廃止されたのは開幕戦からだが、ドライバーとしてはいまだに血が騒ぐのかもしれない。
レース終盤は首位ジョージ・ラッセル(メルセデス)から2秒前後後方にフェルスタッペン、3番手にアントネッリ、それをピアストリが追う展開。そして後方からはノリスが猛追し、59周目にはピアストリの1秒以内に入っていた。何周にもわたって攻防が続く。そして67周目、メインストレートでノリスとピアストリが接触。ノリスはコース脇にマシンを止めた。
ジョゼフ:大丈夫か。
ノリス:僕のせいだ。みんな僕が悪かった。僕のせいだ。バカだった。
スタラード(→ピアストリ):タイヤの内圧はOKだ。
マーカス・ダドリー:マクラーレン2台が接触した。ノリスはコース上に止まって、セーフティカー導入だ。あと3周。ピットレーンを通過していく。
ラッセル:タイヤ交換は?
ダドリー:しない。通過するだけだ。
セーフティカー(SC)ラン中、ラッセルが減速し、フェルスタッペンが思わず前に出た。
68周目
フェルスタッペン:見てるか? すごくゆっくり走っている。何してるんだ。ジョージが突然、ものすごく減速した。
ラッセル:SC中なのにフェルスタッペンが抜いた。
フェルスタッペン:10車身以上離れてるじゃないか。見ろよ。何してるんだ。
ランビアーゼ:ああ、チェックする。
レースはSCランのまま終了。ラッセルが今季初優勝を果たし、SC中の一件はお咎めなしとなった。
トト・ウォルフ代表:ジョージ、よくやった。ワン・スリーフィニッシュだ。最高の1日だ。
ラッセル:最高だ。キミ、3位おめでとう!
ボニントン:キミ、どうだ? 実感は湧いてる?
アントネッリ:なんてこった。ああ〜
ボニントン:どんな気持ちだ?
アントネッリ:最高だよ。ずっとほしかったから。みんなありがとう。
そしてヒュルケンベルグは前戦スペインに続いて、試合巧者ぶりを見せつけた。
ヒュルケンベルグ:ナイスワークだった。2戦連続入賞、最高だ。このまま行こう。