「マシンは確実に改善された」アップグレードの効果を実感も、我慢のレースで性能を引き出しきれず【角田裕毅F1第10戦分析】
2025年F1第10戦カナダGP土曜日の予選で19番手となったリアム・ローソン(レーシングブルズ)と最下位に終わったピエール・ガスリー(アルピーヌ)が、予選後にパワーユニットを交換してピットレーンスタートを選択したため、10グリッド降格ペナルティを受けていた角田裕毅(レッドブル)のスタートポジションはふたつ繰り上がって18番グリッドとなった。
上位勢の多くがミディアムタイヤを選択したのに対して、後方からスタートする角田は周りの多くのドライバー同様、ハードタイヤを装着してスタートした。
スタート直後の1〜2コーナーでランス・ストロール(アストンマーティン)をかわして17番手となった角田。しかし、その後は前方を走る数台のマシンが数珠繋ぎとなる、いわゆる“DRSトレイン”状態となったため、我慢のレースを強いられる。
「ペース自体は悪くなかったのですが、すごくよかったというわけでもなくて。ダーティエアのなかで走る時間が長くて、パフォーマンスを最大限に引き出すことができませんでした」
16周目にガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)を、21周目にはアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)をオーバーテイクし、上位勢がピットストップしたこともあって、一時10番手を走行した。
後方からのスタートとなった角田の戦略は1ストップ。そのため、前を走るマシンがピットインして一時的にポジションは上がったが、後方へ下がったドライバーたちが新しいタイヤを履いてペースを上げてくるとポジションを奪われ、レース中盤にはポイント圏外へと脱落してしまう。
それでも、1回目のピットストップを56周目まで延ばした角田は、レース終盤にフレッシュなタイヤで逆転を狙う。しかし、66周目にマクラーレン勢がチームメイト同士で接触事故を起こしてセーフティカーが導入され、レースはセーフティカー状態のまま終了。フレッシュタイヤのアドバンテージを発揮することができないまま、角田は12位でフィニッシュした。
100戦目のレースをポイントフィニッシュで飾ることができなかった角田だが、前戦スペインGPでの謎の失速からは抜け出したようだと語る。
「少なくともポジティブだったのは、クルマのパフォーマンスが、ここ最近のレースに比べると少し改善されて普通に戻ったことです」
その要因となったのは、土曜日から投入された新しいフロアだ。
「投入されたアップグレードによって、クルマは確実に改善されています」(角田)
ただ、そのポテンシャルをフリー走行3回目で起きたマシントラブルと、そのセッションで科せられた10グリッド降格のペナルティによって、最大限発揮できなかった。
レッドブルのガレージで角田の走りを見ていたホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は、カナダGPの角田を次のように評価した。
「FP3(フリー走行3回目)でまともに走ることができなかった不運をうまくリカバリーして、予選は11番手になったので、もしそこからスタートできていれば、もっと違った展開になっていたと思います。でも、後方からのスタートとなって、トラフィックのなかでかなりタイムを失っていたためにポジションを上げきれなかったのは残念です。今日のペースを見れば、11番手からスタートしていたら、ポイントフィニッシュは確実だったと思います」
次のオーストリアGPの舞台となるレッドブルリンクは、カナダGPが行われたジル・ビルヌーブ・サーキットよりも、RB21との相性は悪くないはず。クラッシュやペナルティなどがないクリーンな週末を送ることを期待したい。