2025.06.12

【F速プレミアム】
王者フェルスタッペンの戦い:才能だけでは覆せないクルマの性能差に悲観ムード


2025年F1第9戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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 F1第9戦スペインGPでは冷静さを失い10秒のタイムペナルティを課され10位に終わったマックス・フェルスタッペン。タイトル防衛も悲観的なムードが漂いだしてきた。F1スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーが3連戦について語る。
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 マックス・フェルスタッペンが、インスタグラムの投稿でファンに何かを伝えるというのは、めったにないことだ。レッドブル・レーシングのエースは、基本的にソーシャルメディアにはあまり熱心ではないのである。

 だが、波乱のスペインGPの翌日には、やはり何らかの発信が必要だった。レース終盤にシャルル・ルクレールのフェラーリと一度、ジョージ・ラッセルのメルセデスと二度接触したマックスは、完全に冷静さを失っていた。そして、最後のインシデントに対し、スチュワードから10秒のタイムペナルティを言い渡され、結果としては10位に終わった。現F1世界王者としては、過ちを認める勇気を示すべき時だったのだ。

 フェルスタッペンは次のような投稿をした。「バルセロナではエキサイティングな戦略を採り、いいレースをしていた。だが、セーフティカーの出動ですべてが一変した。そこからフィニッシュまでのタイヤ選択と、セーフティーカー後のリスタートに続いて起きたいくつかの出来事によって、僕のフラストレーションに拍車がかかり、それが正しくないこと、やるべきではなかった行為につながった。コース上ではチームのためにいつも全力を尽くしていて、時には感情が高ぶってしまうことがある。勝つときも一緒なら、負けるときも一緒だ。モントリオールで会おう」

 レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは言う。「マックスは今回のレースを3位で終えるはずだった。だが、あの終盤のセーフティカーによって、あらゆることが悪い方へ向かった。手元に残っていたのは1セットのハードタイヤだけで、その温度を上げるのには時間がかかった。マックスはフラストレーションをつのらせ、それがあのようなドライビングにあらわれた」

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 FIAがスペインで導入したフロントウイングの新たな荷重試験は、一部の人々が予想したような変化をもたらさなかった。マクラーレンが最速のクルマであることに変わりはなかったのだ。レッドブル・レーシングとしては、コースの特性がクルマに合っていることもあり、最新のアップデートの効果も併せれば、フェルスタッペンはオスカー・ピアストリやランド・ノリスと互角に戦えるかもしれないと期待していたが、その願いは通じなかった。

 マルコはこう語っている。「選手権でのマクラーレンとの差は、もはや目を背けたくなるほどに広がっている。現状では1周あたりコンマ2〜3秒遅い。いかにマックスがズバ抜けた才能に恵まれていても、タイム差をカバーするには限界がある」

 イモラでは、確かに彼の才能がクルマのパフォーマンスの違いを埋め合わせた。マックスはポールシッターのピアストリに大胆なオーバーテイクを仕掛けて先行すると、その後も見事なドライブを披露して優勝を飾った。その時点では、着実にクルマの改良を続けていけば、フェルスタッペンは選手権争いにとどまれるかと思われた。しかし、次のモナコは例年レッドブル・レーシングがやや苦手とするコースでもあり、ノリス、ルクレール、ピアストリに次ぐ4位フィニッシュが精一杯だった。

 そして迎えたスペインGPでは、彼らにとって悲惨な結果が待っていた。フェルスタッペンが示した今後の見通しは、かつてなく悲観的なものだった。「他のすべてのチームに対して、マクラーレンが一歩リードしていることは誰の目にも明らかだ。何か予想外のことが起きない限り、僕らが狙えるのは表彰台の一角だけだろう。何らかの理由でマクラーレンが苦戦してくれれば、僕らにとっては絶好のチャンスとなり、一度か二度は勝てる可能性があるかもしれない。とにかくベストを尽くすよ。だけど、タイトルを防衛するのは難しそうだ」

 また、マルコは次のように述べている。「現代のグランプリカーでは、あらゆることが相互に関連している。必要とされるのは、さらなる速さとより良いバランスだ。バランスが良くなれば、おのずとタイヤマネージメントも楽になる。そして、より速く、タイヤにも優しいクルマになればレースで勝てる。私たちも進歩はしてきたが、まだマクラーレンと肩を並べるには到っていない。そうなると彼らに近づくにはリスクを冒すしかなく、そうした戦い方で臨むレースは、まさにスペインでのように、手痛い失敗に終わる可能性を伴うということだ」

2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第8戦モナコGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)

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