剛性強化のみで新たなウイング規制をパスしたマクラーレン。フラップ形状も変えたライバル勢との差は拡大【トップチーム密着】
2025年F1第9戦スペインGPから新たな前後のウイングの検査方法が導入された。いわゆるフレキシブルウイング規制だ。これまでフロントウイング全体に対する100kgの荷重に対して、たわみは15mm以下であることが義務づけられたが、新しい技術指令ではそれが10mm以下へと厳しくなった。さらに片側だけの荷重に対しても従来の20mmから15mm以下へと変更とされた。同時に、任意の1点に6kgの荷重をかけるというフラップの個別テストも変更された。これまでは後端部のたわみが5mmを超えてはならないと定められていたが、それも3mmと厳しくなった。
この変更により、トップチームの勢力図が変わる可能性が指摘されていた。影響を最も大きく受けると見られていたのがマクラーレンだったが、蓋を開けてみれば、マクラーレンは予選でフロントロウを独占し、レースでもワン・ツーフィニッシュを飾った。
なぜ、マクラーレンは規制が強化されたにも関わらず、スペインGPで失速しなかったのか。
考えられる要因は、ふたつある。ひとつはマクラーレンが新しい規制に適応したウイングを2戦前の第7戦エミリア・ロマーニャGPから投入していたのではないかということだ。マクラーレンはスペインGPにアップデートパーツを持ち込んでいなかった。
もうひとつの理由は、この規制はマクラーレンだけに適用されたものではなく、全チームが対象となっているということだ。そのことは、スペインGPではマクラーレン以外のチームも規制をクリアするために新しいフロントウイングを持ち込んできたことでもわかる。
しかも、マクラーレンはこの新規制に対応するために、剛性を強化したものの、ウイングのフラップの形状には手を加えなかったのに対して、マクラーレンとチャンピオンシップを争っているライバルであるレッドブル、メルセデス、フェラーリはフラップ形状を変更している。
このフレキシブルウイングの新しい技術指令の影響を大きく受けたのは、マクラーレンではなくレッドブルとなってしまった。そのことは、この3連戦の初戦と3戦目のパフォーマンスを見ればわかる。
エミリア・ロマーニャGPの舞台であるイモラでの予選のマクラーレン(ポールポジションのオスカー・ピアストリ)と2番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)との差は0.034秒差だった。それがスペインGPの予選では、3番手のフェルスタッペンはポールポジションのピアストリからコンマ3秒以上遅れた。
エミリア・ロマーニャGPで近づいたかに思えたマクラーレンとレッドブルの差は縮まっていたわけではなく、結果的に広がってしまった。したがって、この差を縮めるにはレッドブルがマクラーレンを上回るアップデートを行わなければならない。ただし、開発のリソースはそろそろ来年へ移行しなければならない時期となるだけに、そのアップデートを短期間でどこまでレッドブルが行うのかどうかは、非常に疑問でもある。