V10エンジン復活賛成論に見える2026年PUの開発状況。一方で“取引の道具”との見方も【代表のコメント裏事情】
2025年F1第4戦バーレーンGPではコース上の戦いだけでなく、コース外での戦いも激しく繰り広げられた。それは、2026年以降のパワーユニットに関する会議だ。出席者の多くが口を閉ざすなか、スカイ・スポーツに語ったのがレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表だった。
「我々は次世代エンジンについて話し合った。V10はF1にとって魅力的かもしれないが、それには責任が伴う。2026年は確定している。変更にはスーパーマジョリティが必要だ。コンコルド協定が切れるのは2031年。それまではガバナンスに従う必要があり、すぐに変更することはできない。ただし、我々はみんな、接近したレースを望んでいる」
ホーナーが語るスーパーマジョリティとは、このレギュレーションが承認された際に、各メーカーによって署名された契約の付帯条項だと思われる。重大な変更を行うには、いわゆるスーパーマジョリティ(大多数)が必要になるというものだ。スーパーマジョリティの具体的な数字は契約の内容によって異なるものの、今回の会議に参加したのが6メーカーだったので、6社中4社以上の賛成が必要になると考えていいだろう。
会議に参加した6社のパワーユニットマニュファクチャラーは、アウディ、ゼネラルモーターズ(GM)、レッドブル(RBPTフォード)、メルセデス、フェラーリ、ホンダ・レーシング(HRC)だ。このうち、アウディとホンダ、そしてメルセデスが早期のV10導入に反対の立場をとったと言われている。つまり、レッドブル、フェラーリ、GMは賛成の姿勢だったようだ。
これを意味するものは、2026年の開発の進捗状況だ。なぜなら、2026年の開発が順調あれば、そのレギュレーションで作られる新しいパワーユニットをお蔵入りにするような提案をすることはないからだ。したがって、V10導入に積極的な立場をとっていると言われているレッドブルやフェラーリは、2026年に向けて開発がうまくいっていない可能性が高いのではないか。
もうひとつの見方として、V10エンジン復活の話は本気ではなく、取引の材料に使われているのではないかとも言われている。それは、2026年から導入される次世代パワーユニットに関しては、導入とともに開発凍結(ホモロゲーション)制度にするのではなく、予算上限(バジェットキャップ)内で緩和してもいいのではないかという案だ。
国際自動車連盟(FIA)は会議の後、「今後も各メーカーや関係者との協議を継続し、次世代パワーユニットのレギュレーションの調整や、将来的なエンジン規定の在り方について、建設的な議論を進めていく」と声明を出している。
いずれにしても、このような会議が開かれた背景には、2026年に向けて、早くもマニュファクチャラー間で優勢と劣勢の二極化ができあがりつつあると見ていいだろう。