2025.04.05

鈴鹿で見えたフェルスタッペンと角田裕毅の差。衝撃を受けた平川亮の走り【中野信治のF1分析/日本GP特別編1】


2025年F1第3戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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 鈴鹿サーキットで開催されている2025年F1第3戦日本GP。4月5日(土)に行われた予選ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季初、自身通算41回目のポールポジションを獲得しました。

 今回はフェルスタッペンの突出した能力、予選15番手となった角田裕毅(レッドブル)、そしてフリー走行1回目(FP1)でレギュラードライバーを上回るタイムを記録した平川亮(アルピーヌ・リザーブドライバー)について、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で予選を振り返ります。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 フェルスタッペンのQ3での走りは見事でした。フェルスタッペンはすごいドライバーだと私もDAZNの中継でお話ししましたが、何が凄いのかをご説明すると『1周をまとめ上げる力』と『路面の変化に対応する能力の高さ』です。

 路面の変化とは、走れば走るほど路面にタイヤのラバーが乗り、よりグリップしやすくなることです。クルマが走れば走るほどグリップの限界が上がり、コーナリングスピードの限界も高くなるので、必然的にラップタイムは上がります。ただ、限界が高くなった分をどこまでラップタイムに反映できるかどうかはドライバーそれぞれです。

 数字でたとえますと、最初の路面の限界が100で、セッションが進むにつれて限界値が110まで高まっても、上がった10をそのままラップタイムに反映できるドライバーは少ないです。だいたいは、多くのドライバーは上がった10まで出し切らず、9や8という感じでマージンを残します。

 ただ、フェルスタッペンは路面の限界が10上がれば、ラップタイムもそのまま10上げることができるドライバーです。そこが彼の凄さであり、今回の予選結果につながったのだと感じています。

2025年F1第3戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 裕毅に関してもQ1まではいい走りをしていました。ただ、Q2を迎えてタイヤの温め方の部分でうまくいかなかったように見えました。最後のアタックに入る手前、シケインの立ち上がりでテールがスライドしてリミッターに当ててしまい、ターン1までのストレートスピードでタイムを失ってしまった。

 さらには温まり切っていないタイヤでターン1を迎え、続くターン2で姿勢を乱してしまいました。ターン2以降のS字からデグナーカーブまではリズムが重要ですので、ターン2でリズムを崩してしまうとタイムを取り戻すことができないのは鈴鹿サーキットの特徴でもあります。

 結果的に1分28秒000で15番手/Q2敗退となりましたが、裕毅のアタックで何が悪かったのか、何が問題だったのかは本人のコメントを聞かなければ分かりません。ただ、もしQ3まで進出することができていれば、1分27秒3くらいまでは行っただろうと思います(参考:予選5番手のジョージ・ラッセルが1分27秒318)。

 今回の予選はフェルスタッペンがいい走りすぎたこともあり、チームメイトとの差が大きく際立ってしまう結果となりましたが、私はふたりの走りに見た目(PPと15番手)ほどの大きな差はないと思います。Q2に至るまでのセッションでは、裕毅もうまくまとめていたこともあり、フェルスタッペンが裕毅の存在をプレッシャーに感じていたのではないかと思うほどです。

 裕毅にとって15番手は厳しい順位ではありますが、明日の決勝も含めて今後に向けてポジティブな部分がたくさんあった予選でした。

 決勝ではひとつでも上に行ってほしいですね。今季これまでの2戦はレーシングブルズからの参戦でしたが、今回からはレッドブルとなります。レーシングブルズにあった戦略面でのネガティブはレッドブルでは起きないと思います。

 また、もしかしたら決勝で雨が降る可能性があり、雨が降れば追い上げのチャンスにも繋がります。レッドブルというチャンピオン経験も豊富なチームの力を借りながら、順位をひとつでも上げてほしいと願っています。

2025年F1第3戦日本GP 角田裕毅(レッドブル)

■衝撃を受けた平川亮の好走と、感じた心臓の強さ

 そして、今回の日本GPでは4日(金曜日)のFP1に平川選手がジャック・ドゥーハンのクルマで出走しました。初めて乗ったクルマにも関わらず、レギュラードライバーであり、アルピーヌのエースであるピエール・ガスリーを上回ったことは、落ち着いたセッションの進め方、最後のタイムの出し方を含め、個人的に衝撃的でした。

 本人的にはまだまだ100パーセントを出し切れたわけではないと感じているかもしれませんが、初めての母国GP出走で初めて走らせるクルマという状況でしっかりと結果に繋げるのは、実に心臓の強いドライバーだと感じますね。

 おそらく、このグランプリパドックの住人たちも『この日本人はなかなかやるじゃないか』と感じたのではないかと思います。とはいえ、鈴鹿サーキットはスーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権で活躍した平川選手にとって何百周、何千周も走り込んでいるコースですから、コースへの理解度という面で大きなアドバンテージがあったのは確かです。

 それでも、平川選手の結果が素晴らしいことには変わりはありません。チームへのフィードバックといった、FP1出走ドライバーにとって大切な仕事の部分でどのような評価だったのかはチームにしかわからない部分ですけど、私には十分に衝撃的でした。

2025年F1第3戦日本GP 平川亮(アルピーヌ)

 裕毅、平川選手と、日本人ドライバーがF1パドックから視線を集める機会増えていることは嬉しいですね。これは今後F1を目指す若手ドライバーにとっても励みになります。『日本人ドライバーもF1で戦えるよね』と。

 ただ、F1で見えている部分は氷山の一角でしかなく、簡単なことではありません。ですが、氷山の一角とはいえ、しっかりと自分をアピールできるドライバーがまた出てきたことは本当に嬉しいことですし、日本人ドライバーに対する評価が上がるきっかけに繋がるかもしれませんね。

【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。



(Shinji Nakano まとめ:autosport web)

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2025-04-06更新

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