2025.04.03

危機感の残る開幕2戦。ダブル入賞達成も「問題は解決していない」鈴鹿は未知数【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第2回】


2025年F1第1戦オーストラリアGP 小松礼雄代表(ハース)
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 2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。ついに始まった2025年シーズン、ハースは開幕戦オーストラリアGPで入賞を逃すどころかパフォーマンスのレベルは最下位だった。一転して中国GPでは2台揃って入賞を果たし、チームはうまく状況を立て直したかに見えたが、小松代表は入賞を喜びながらも「問題は解決していない」と冷静に現状を分析。オーストラリアGPと中国GPを小松代表が振り返ります。

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2025年F1第1戦オーストラリアGP
No.31 エステバン・オコン 予選19番手/決勝13位
No.87 オリバー・ベアマン 予選DNF/決勝14位

2025年F1第2戦中国GP
No.31 エステバン・オコン スプリント予選18番手/スプリント16位/予選11番手/決勝5位
No.87 オリバー・ベアマン スプリント予選12番手/スプリント15位/予選17番手/決勝7位

 まずは開幕2戦が終わりました。オーストラリアGPでポイントを獲れなかったものの、中国GPで2台揃って入賞したという結果だけを見ると、うまくチームを立て直したように見えますが、実際のところは、立て直したという言葉が正しいかどうかはわかりません。というのも、メルボルンで露呈したエアロの問題(バーレーンでのプレシーズンテストでは出てこなかったものです)は何も解決していないからです。

  どうして上海であのようなパフォーマンスを発揮できたかというと、ただ単にメルボルンのアルバート・パーク・サーキットと上海インターナショナル・サーキットではコースの特性が違うからです。上海はほとんど高速コーナーがなくて(ターン1のエントリーとターン7だけです)、路面も再舗装されているのでバンプもないフラットなコースでした。一方メルボルンは、うちが苦労した高速コーナー(ターン9、10)はすごくバンピーで路面のへこみもあったので、そういうところでVF-25の弱さが出ていました。

エステバン・オコン(ハース)
2025年F1第1戦オーストラリアGP エステバン・オコン(ハース)

 もちろんクルマを走らせるごとに僕たちのクルマに対する理解はよくなっていきましたし、クルマのセットアップなども改善されました。でも、もしこれからもう1回メルボルンを走ることになったとしたら、開幕戦と同じに結果になると思います。

 中国GPではストラテジーをうまく機能させて全力を出しきれたというのはすごく嬉しかったですし、チームのみんなも喜んでいましたけど、問題が解決したわけではないので、早く解決しなきゃ、というそれだけです。このままでは、成績を残せるかどうかはコース特性や路面温度といった外部の要因次第ですし、そんな状態ではレーシングチームとは言えません。どこのサーキットに行っても速いクルマを作らないといけないので、今はそれに取り組んでいるところです。

■問題解決に必要な3ステップ

 オーストラリアGPはああいう結果に終わりましたが、終了後から次の中国GPまでの間にやることは明白でした。まず最初にやらなければいけないのは、本当の問題は何なのかというのを把握し、それをみんなで共有して同意することです。その共通認識がないと次には進めないですからね。この最初のステップ自体は、オーストラリアGPの土曜日までにできていました。

 次にやるのは、その問題がクルマのどこのデザインが原因で起きているのかを把握し、もう一度全員で同意することですが、これも日曜日の夜には終わっていました。そして最後は、どうやって解決策を見つけるのかを話し合うことです。開幕戦の時点でうちは明らかに最下位だったので、悠長に最初のアップグレードを待つわけにはいきません。短期的な目線で考えて次の中国GP、その後の鈴鹿に向けてどうするのか、この先、中期的、長期的にはどうするのかを考え、エアロのセットアップの仕方で改善できるのものはないかと考えて中国GPに向けた実験的なこともやりました。

オリバー・ベアマン(ハース)
2025年F1第1戦オーストラリアGP オリバー・ベアマン(ハース)

 問題がエアロに関連したものなのか、それともセットアップによるものなのかは、ちゃんとしたエンジニアならすぐにわかります。メルボルンではFP1でクルマがガレージから出てピットストレートを走っている時点でもうおかしくて、ターン5などでも挙動が変で、クルマが壊れているか大きくセットアップを外しているかのどちらかでした。そこでクルマやパワーユニットを確認しても何も壊れていなかったので、まずは通常の走行で起きている問題だとわかります。その後はクルマのセットアップでこれをどこまで改善できるか、これをFP1からFP3にかけてやりました。土曜日の時点で問題の共有ができたことはよかったですが、FP1で問題の大きさがわかった時は、吐き気に襲われたとしか言いようがない感情でした。その時の気持ちは忘れてはいけないと思います。

 もちろん次の日本GPのことも考えていて、鈴鹿では新しいパーツを投入する予定です。その前にいろいろな工程を省くことになるのでリスクもありますが、でも何もしないで最初の2戦と同じクルマを持っていっても、オーストラリアGPの二の舞になるだけです。鈴鹿は路面が再舗装されたと聞いているので、それも大きく影響する可能性があります。このパーツを投入することで、どれほど効果を発揮してくれるかはわかりませんが、日本GPがどんなレースになるのか、今の時点では正直まったく想像がつかないです。

ハースVF-25
2025年F1第3戦日本GP 桜の花びらがあしらわれた鈴鹿限定カラーリングのハースVF-25

■1ストップ戦略を成功に導いた“適切なタイミングと最新情報”

 ここまでチームの現状や反省点を振り返りましたが、中国GPではチームは本当によくやってくれたと思います。決勝レースは他のチームと同じように2台とも1ストップで走り切ることができましたが、これはレース中の判断によるものでした。当初は2ストップを考えていて(もちろん頭の片隅には1ストップになる可能性もありました)、スタートして8、9周目くらいで1ストップの可能性がどんどん大きくなっていきました。

 ハードタイヤでスタートしたオリー(ベアマンの愛称)の判断は簡単で、最初のスティントを伸ばせばいいだけです。難しいのはセオリー通りミディアムタイヤでスタートしたエステバンの方で、最初のピットストップが早ければ2ストップにしないといけないし、でもまだ1ストップで走り切れるかどうかわからないという状況でした。つまり、1ストップの可能性を意識しながら、コンペティティブな2ストップのタイミングでタイヤを交換しないといけなかったということです。

エステバン・オコン(ハース)
2025年F1第2戦中国GP エステバン・オコン(ハース)

 この時は適切なタイミングで、話さなければいけないことを話すというコミュニケーションもしっかりできていたと思います。ファクトリーで戦略に携わっている人もその時必要な適切な数字やトピックを出してきてくれて、タイヤを見ている人もよくやってくれたので、最新情報を正しいタイミングで得ることができたんです。

 以前から言っているように、結局最後は人が物事を決めるので、だから僕はどうすればその人たちがパフォーマンスを発揮できるのかを考えています。何をやってもダメな人というのはあまりいませんが、反対に何でもできる人というのも少なくて、やりたいこととできることが違う人もいます。だから難しいのです。

 また、中国GPでオリーはうまく開幕戦の状態からリセットできたと思います。中国GPでは「与えられた周回を1周もかかさずに走ること」という目標を立てて、それを実行できましたしね。速さがあることはわかっていますし、あのパフォーマンスにはいい意味で驚いていません。エステバンも自信を取り戻しましたし、ふたりともいい流れで日本GPを迎えられるはずです。

オリバー・ベアマン&エステバン・オコン(ハース)
2025年F1第3戦日本GP ラジコンを操作するオリバー・ベアマンとエステバン・オコン(ハース)
オリバー・ベアマン&エステバン・オコン(ハース)
2025年F1第3戦日本GP ラジコンで遊ぶオリバー・ベアマンとエステバン・オコン(ハース)
小松礼雄代表(ハース)
2025年F1第3戦日本GP ファンと写真を撮る小松礼雄代表(ハース)


(Text : Ayao Komatsu)

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