【全ドライバー独自採点&ベスト5/F1第20戦】完璧だったサインツ。ライバルに妨害されつつ、接触を回避したノリス
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価し、ベスト5のドライバーを選出した。今回はメキシコシティGPの週末を振り返る。
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アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは、一見簡単そうに見えるが、高い標高によるダウンフォースの低さと、非常に低い路面グリップが相まって、ドライバーがミスを犯すことなく最大限の力を発揮するのが非常に難しいサーキットだ。
そのため、完璧な週末を過ごしたのはただひとりだけだった。それ以外のドライバーたちは、それぞれがさまざまなミスをしたり、フェアでないドライビングをしたりと、何らかのマイナス点があった。ある意味、前戦アメリカGPと似た状況だったといえるだろう。
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選1番手/決勝1位
今回傑出していたのは、圧倒的強さでポールポジションを獲得し、レースを完全にコントロールしたカルロス・サインツ(フェラーリ)だ。レースではスタートでマックス・フェルスタッペンに出遅れ、ターン1でブレーキングを遅らせて対抗しようとしたが、全くスペースを与えられなかった。しかしサインツは冷静さを保ち、態勢を立て直し、セーフティカーが戻った次の周に、決定的なアクションでリードを取り戻した。その後は特にシャルル・ルクレールが2番手を走行していたことも考慮し、ペースをコントロールして走り、タイヤと燃料をセーブし、ランド・ノリスが浮上してきた時に、ペースを上げる余裕を残していた。彼のここまでのF1キャリア10年のなかで、最も印象的な週末だったかもしれない。
ランド・ノリス(マクラーレン):予選3番手/決勝2位
ランド・ノリス(マクラーレン)は、フェルスタッペンのばかげた行為のせいでレースを失ったと思っているかもしれない。それでも少なくともタイトル争いのライバルより10ポイント多く獲得できたのは、悪くない結果だった。ノリスはポールポジションを獲得するかに見えたが、Q3で進展がなく3番手からのスタートに。1ラップのうちにフェルスタッペンに2回押し出されたものの、なんとか接触は回避した。しかしノリスはフェルスタッペンの後ろで時間を失ったことにより、最終的にサインツをとらえることができなかった。フェルスタッペンに抑えられている間にタイヤと燃料を温存していたが、素晴らしいペースを発揮し、終盤にはルクレールのミスを誘い、タイトル争い上で重要となる2位をつかんだ。
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選7番手/決勝7位
F1キャリア最後となるだろうシーズンを送っているケビン・マグヌッセン(ハース)にとって、今回は最高の週末になった。オースティンでハースが導入したアップグレードに慣れ、予選でもレースでもチームメイトより良い結果を出した。決勝ではファーストスティントを通して、メルセデス2台についていけたが、タイヤ交換後にポジションを落とし、ピットストップを済ませていないグループを追い越さなければならず、時間をロスした。しかし、レース終盤、フェルスタッペンに匹敵するペースを発揮、最後の数周でギャップを約半分に縮めてみせたのは印象的だった。
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選4番手/決勝3位
週末を通してシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、チームメイトのペースに追いつくことができず、低グリップの路面では攻撃的なドライビングスタイルが不利に働くと説明していた。4番グリッドからスタート、フェルスタッペンがコース外に出てノリスを押し出している間に2番手に浮上、その後はフェルスタッペンを余裕で引き離した。レース終盤、トップを行くサインツを捕まえようとしたが、リヤタイヤを使いすぎたことでミスが発生、ノリスにポジションを奪われた。ただ、コントロールを失った際にクラッシュを回避した後、最後にファステストラップを狙う機会を得て、コンストラクターズ選手権で首位のマクラーレンを追うフェラーリのために追加ポイントを獲得した。
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選5番手/決勝5位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、プラクティスで、再び回避可能なクラッシュを喫し、チームのコストキャップ対策プランに打撃を与えた。予選ではうまく立て直して5番手を獲得、チームメイトには0.3秒近い差をつけた。決勝では4位を獲得するかに思えたが、メインストレートで大きなバンプにヒット、左フロントウイングの上部フラップにダメージを負い、それがエアロ効率に影響した。ハミルトンの前を維持するために懸命に戦った後、最終的にはバトルに敗れて5位となった。
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選6番手/決勝4位
=評価 7/10:新しい空力パッケージでレースに臨んだものの、その一貫性のなさに困惑していた。予選でラッセルに敗れた後、決勝ではコース上の戦いで前のポジションをつかんだ。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選17番手/決勝8位
=評価 7/10:自身のミスでQ1敗退となったが、オーバーテイクが難しいコースでうまく挽回し、マクラーレンのために貴重なポイントを獲得した。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選10番手/決勝9位
=評価 7/10:今回はチームメイトにおよばなかったが、2ポイント獲得という堅実な仕事をした。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選8番手/決勝10位
=評価 7/10:オースティンと同様、アップグレードを最大限活用して予選Q3に進出。決勝ではポイントを獲得し、コンストラクターズ選手権でウイリアムズと戦うチームに貢献した。
バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー):予選15番手/決勝14位
=評価 7/10:全チーム中、最も遅いマシンで予選Q2に進出。レースでも懸命に戦ったが、タイヤのデグラデーションに苦しめられた。彼は今、自身のF1キャリアで最も競争力のないマシンでの戦いを強いられている。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選2番手/決勝6位
=評価 6/10:予選では素晴らしい仕事をしたが、決勝では再び、不必要で、物議を醸す走りですべてを台無しにした。10秒ペナルティ2回というのは当然の裁定といえるだろう。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選13番手/決勝リタイア
=評価 6/10:グランプリ400回目の節目だったため、その祝賀としてもっと良い結果が得られればよかったのにと思う。しかし予選ではQ2で赤旗が振られるという不運に見舞われ、決勝ではブレーキの問題により早々にリタイアした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選9番手/決勝リタイア
=評価 6/10:FP1で軽率なクラッシュをした後、うまく立て直して予選でQ3に進出。しかし、決勝では、自分に全く責任のないインシデントによってリタイアした。
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選14番手/決勝11位
=評価 5/10:予選では久しぶりにアロンソにかなり近づいた。しかし決勝でポイント争いに加わることはできなかった。
リアム・ローソン(RB):予選12番手/決勝16位
=評価 5/10:予選ではQ2終盤の赤旗の影響を受けた。決勝では多くのインシデントに関わり、ポイント獲得のチャンスをつかむことができなかった。
フランコ・コラピント(ウイリアムズ):予選16番手/決勝12位
=評価 5/10:厳しい週末だった。予選はQ1で敗退。決勝では、うまく挽回していたが、終盤にローソンとの間で回避可能なクラッシュが起きた。
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選19番手/決勝13位
=評価 4/10:週末序盤には速さがありそうに見えたが、新しいアップグレードにうまく対応できず、予選Q1で敗退した。
周冠宇(キック・ザウバー):予選20番手/決勝15位
=評価 4/10:予選では僅差ながら最下位。決勝で挽回を狙ったが、ブレーキトラブルが発生した。
角田裕毅(RB):予選11番手/決勝リタイア
=評価 3/10:24時間の間に2回クラッシュ。プレッシャーの表れかもしれない。
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選18番手/決勝17位
=評価 1/10:今回も悲惨な週末を過ごした。ホームグランプリだっただけに、痛みは大きいだろう。